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異世界で妖精になったのだけど、前世がちゃんと思い出せない  作者: 白波


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第2話

 魔女さんの家に案内された次の日。私は魔女さんの家のベッドで目を覚ます。これは何かしらの夢で一晩寝たら元に戻っていたりしないだろうかと思っていたのだが、どうやらそういうことはないらしい。

 隣にあるベッドの方へと視線を移すと、魔女さんはすでに起きているらしくベッドの上に魔女さんの姿はなかった。元の世界……というより前世というべきだろうか? そのあたりの記憶については何かを新しく思い出すといったことはなく、相変わらずぼんやりとしたままだ。


 そういったことを考えてから、私はベッドから起き上がり魔女さんがいるであろうリビングへと向かう。


 リビングに行くと、ちょうど魔女さんが食卓に朝食であろうパンを二人分用意していた。


「おはよう。()()()


 私の気配に気づいたらしい魔女さんがこちらに声をかける。


「おはようございます。あの、ナノンというのは?」


 あいさつを返しつつ、私は疑問に思ったことを口に出す。


「あなたの名前よ。名前がないと呼びづらいでしょ。この森には魔女は私だけだけど妖精はたくさんいるから。気に入らない?」

「あぁいえ。ありがとうございます」


 確かに今の私はもともとの名前さえ思い出せない状況だ。そうなると、仮の名前というのは必要なモノだというのはもっともなことだ。そうなると、私も魔女さんのことを魔女さんではなく、何か別の名前で呼んだ方がいいのだろうか?


「一応言っておくけれど、私は名前はいらないわ。魔女でも魔女さんでも好きに呼びなさい」


 しかし、そのあたりについては先手を打たれてしまった。どうして、魔女さんが名前で呼ばれるのを嫌がっているのかわからないが、彼女がそう言っている以上はそれに従った方がいいだろう。


 そういった会話の後、私たちは食卓についてパンを食べ始める。


 それにしてもだ。魔女さんの生活にはいろいろと疑問がある。この家の近くには小さな池があるから水はそこから得られるとして、その他の食事……例えば、今食べているパンなどはどこから調達しているのだろうか? もしかしたら、森を出たら町でもあるのかもしれない。


「魔女さん。このパンって町に行って買ってくるんですか?」


 私は頭で思った疑問をそのまま魔女さんにぶつけてみる。


「えぇそうよ。この森で得た薬草をもとに作った薬を売って、そのお金で買っているの。町にはたくさんの人間が住んでいるわよ」


 私の小さな疑問に対して魔女さんは収入源などこの先疑問として口に出そうとしているところまで含めて教えてくれた。


「そうなんですね。私も町に行ったり……」

「それは出来ないわ」


 町に行ってみたいという私の言葉を魔女さんが遮る。


「どうしてですか?」

「妖精には森から出てはならないという決まりがあるのよ」


 どうやら、詳しいことはわからないが私は妖精である以上森からは出られないらしい。最も、この森がどれだけ深いものがわからないが、行動範囲が限られてしまったというのは確かなことだろう。


「どうして妖精は森から出たらいけないんですか?」


 しかし、この世界の町がどういったものなのか見てみたい。そういった思いから私は魔女さんから事情を聞き出そうと質問を重ねる。


「……私も詳しいことは知らないけれど、妖精は自然の権化だからその存在のもととなっている森から離れると消滅するとかしないとか……私も別の妖精から聞いた話だから実際に森を離れたらどうなるかとかはわからないけれど……」


 魔女さんも詳しいことはわかってはいないみたいだが、私のような妖精は森の外に出ることはかなわないらしい。私としてはこの森の中についても、森の外についても興味はあるのだが、興味を持っているからと言って外に出て消滅してしまっては元も子もない。なので、そのあたりについては魔女さんに従うことにする。


「……そうそう。今日の予定だけどとりあえずこのあたりに住んでいる妖精にあなたのことを紹介するわ。私が事情を説明していけば、彼女たちも納得するでしょうし、何よりもこの家の周辺を縄張りにしている妖精に顔を合わせておかないといけないでしょうから」

「妖精には縄張りとかそう言う概念があるんですか?」


 私も質問に魔女さんは真剣な表情でうなづく。


「えぇ。妖精というのは二つの階級があって、一つはあなたのような普通の妖精。これは森の中にたくさん住んでいるわ。もう一つは大妖精。妖精の中でも強力な力を持っていて、この森に住んでいる妖精たちをまとめている存在よ。だから、この家の周辺を縄張りとしている大妖精に挨拶をしておかないといけないの」

「……そうなんですね」


 妖精というのは思っていたほど単純なモノではないらしい。おそらく、大妖精という存在はこのあたりの妖精をまとめているとだけあって威厳あるような人……いや、妖精なのだろうか? そのような疑問を抱くころには私も魔女さんもすっかりとパンを食べ終えていた。


「さてと、食事も終わったことだし、さっそく大妖精のもとへと向かいましょうか」


 魔女さんはそう言って私へ向けて手を伸ばす。


「はい。わかりました」


 私はその手を取って席を立ち、私と魔女さんは家の出口の方へと向かった。

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