魔王は穏やかにノアの告白を聞き入れる
おはようございます。
また遅くなりました。ごめんなさい。
でもあと少しで区切ろうかと悶々と進めております。今回もおつき合いの程よろしくお願いします。
ノアの部屋に、ラスクとシフォンが遊びに来ていた。
バルコニーに降り立つ陽射しは優しく、そこから窺う景観の素晴らしさにラスクは叫んだ。
「ヤッホー」
ラスクの叫びに三人の赤児はピクリと反応を示すと、キャッキャッと手を動かせ笑った。
三人の稚児の無邪気さに、ラスクは微笑んだ。
「コイツらかわいいね。でも可愛くない奴がここに」
小さい手をひらひら泳がす無垢な子を相手にしたラスクは部屋に戻り、高らかといびきを上げる者を見据えていた。
口角を上げ、ラスクはベッドの上に立ち、寝ている者にいきなり拳を振り上げた。
ベッドでもぞもぞと動く者はラスクの気配、拳に気づき、素早く降り下ろされた技を受け止め、相手を睨んだ。
「ラスク?」
ラスクのこぶしを受け止め、伸ばされた腕の先を眇たのはハインだった。
「なあ、寝ていい?」
ハインは目尻に力を入れ、さらに目細めラスクを見据えた。
ラスクは寝ているハインを、俯瞰した。
「魔王が甘えてる……。なんて体たらく、おじいちゃん泣くよ?」
「泣かせておけ。俺は珍しく子守で疲れた、それに爺は今また魔王に戻って楽しんでる。俺はヒラ魔王」
小言を漏らしハインは腕を組み、膝を折り、身体を縮めゴロンと寝転び直した。
「僕が遊びに来てるのに……」
「ん─……、ノアは?」
目を閉じ、清々しい秀麗顔のハインはラスクに問う。
ラスクはハインの気持ち良さげな顔を眺め、あることに気づいた。
(この前と顔色が違う。なんか吹っ切れたのかな?)
タンクトップにジーパンとラフな装いのハインをラスクは、眺めた。
今なら……。
厚手の皮服に身をやつし、ラフでもあからさまに自身を晒さないハインの隙を今か今かと伺うラスクがいた。
今のハインはどこでも突ける。
ベッドに身を預け、ハインは攻撃を仕掛けられても可笑しくないぐらいに無防備な姿だった。
このおじさんになら勝てる!?
ラスクは短刀を左手に、もう片方の手には雷を準備し、ハインを狙った。
「……!」
ガガッと、壁に激突するラスクがある。
「残念。これで俺の千勝一引き分けだっ!」
短刀を振るうもラスクはハインに顎を蹴られ、放った雷は壁に叩きつけられると同時に返された。
「ゲッ……フ」
「ラスク、詰めが甘い。いつも言ってるだろう? 狙ったら考えるな、直ぐ行動しろ……と」
壁にぶつかる轟音はバルコニーに居る者の耳を劈いた。双子の赤ん坊はゴウッウンと唸る音に泣き出すが、ハインの子、キャノンだけは高らかに声を上げ笑っていた。
「キャッキャッ、キャッ」
「「ワァア、ギャアアン」」
笑う赤ん坊と泣く赤ん坊。
「もう、コレだから男の子は……」
橙色の綺麗な巻き髪を手で払い、ハインの前に立つシフォンがいた。
「ねぇ、ハインさま」
膨よかな胸を擦りつけ、色目を使うシフォンの片手にはナイフが握られていた。
だがハインに気付かれ、腕を背に回し捕られた。首を擡げ、胸を晒け出すよう強調する格好をハインにさせられる。
「シフォンも残念。見ない内にいい胸に仕上がってるじゃないかシフォン」
「ううん、ハインさま腕離しっ、アゥ」
シフォンの肌理細かな首筋をハインの舌がなぞる。
「ヤッ、ダメだよ。ハインさま」
「フフン、ラスクはおまえの体が気に入ってるようだ。あんなに初心だったラスクがなぁ」
人前を弁えず、ハインはシフォンの躰を弄り始めた。
「やぁ─ヤダ、ラスク!!」
「ラスクの気を引くため、俺をだしに遣ったことの礼がまだだぞ? シフォン」
「おじさん、ストップ! もう。僕を挑発させないの!」
「ばれたか」
「でも、行き過ぎたね。怒っていい?」
「勿論だとも!!」
ハインとラスクはバルコニーから外へ飛び出た。
「ノア」
ハインはノアの横を過ぎる瞬間、名を呼び、頬にキスを交わしていた。
「もう。ハイン様はラスクのことになると父親のように喜ぶ。気が付いてるかしら?」
「まったく、男って勝負事とエッチが好きね! どういう頭の構造してるのかしら」
ノアの小言の後に、ぼやくシフォンがいた。鼻をぷくっと膨らますシフォンにノアはくすりと笑み、「中でお茶しましょう」と誘う。
シフォンは喜び、ベビーカーを押しバルコニーから離れた。
「魔王様、私は暫く人間でいたいわ。良いかしら?」
澄み切った空を眺め、ノアがポツリと呟くと傍らにハインがいた。
「良いさノア、今だけ赦す。だが忘れるな、おまえはあの草原で契りを結んだんだ」
ハインはノアの瞳を食い入るように見つめ、頬を撫でた。
「魔王と知らなかったとはいえ、お前の全ては俺のものだ」
「ハイン様」
「様は取れ。ハインだ。俺はおまえの前でいるときはただの人でありたい」
「ハイン……」
「そうだ、ノア」
ハインはいつもの如くノアに口付けるが熱く舌を搦め、いつも以上に長く接吻を交わす。
その最中、バルコニーを這う者がいた。
「おじさん、いきなり雷落として……消えるなんて!!」
煤にまみれたラスクがやっとの思いでバルコニーに上がり、文句を零した。上半身を起こし見つめた先には、口付けを交わすハインとノアがいた。
「(何でキスしてるんだよ)……!」
「ノア様、お茶は何にしま─!」
ラスクに続き、シフォンも驚いていた。シフォンは手にしていた茶器をコロンと床に落とすが、ハインが魔法で空で受け止めた。
「あら、まぁ!」
「二人とも、見物料は高いぞ?」
唖然とする二人にハインは自信満々に、惚気た。
「おじさん、勝手にキスして何粋ってんだよ、迷惑だよ」
本音を漏らすラスクにハインは高笑いを決め、ノアを抱きかかえた。
「なぁ、おまえたちに子の面倒を頼んで良いか?」
ハインはひと言述べ、いきなり消えた。
「あっ、おじさんちょっと」
ラスクが喚き、ハインを止めようと手を伸ばしたが届かず。ハインは二人と子ども三人を残し、気分の趣くままに好きな場所へと、飛んでいった。
「チッ、しょうがないなぁ」
「ハイン様、二人きりになりたければなりたいと言えば良いのに」
「おじさんはいつも気まぐれだから余程がない限り言わないよ、基本は自由気ままさ」
当たり前のように答えるラスクにシフォンは笑い、床に転がる陶器を拾う。
「じゃぁ、二人でお茶しよう?」
明るく微笑むシフォンにラスクはうんと明るく返事した。カーテンは優しい陽射しを受け、繊細な布の白さ輝かせ揺れる。
「おじさん、何処へ出掛けたんだろう」
「ふふふ、私が思うにショッピングだよ」
「買い物? 珍しい」
「ノア様、欲しい物があるって言ってたのね。ハイン様に告げちゃた」
「へぇ、なんだろう、良いデートになるといいね」
「それまで二人であの子たちの面倒みようね」
シフォンとラスク、二人が囲うテーブルにはノアの焼いたロールケーキやストロベリーケーキにチーズケーキと多種なお菓子が並べられていた。
両親不在に拘わらず、隣にいる三人の赤児はスヤスヤと心地よさそうに眠っていた。二人はそれを眺め、顔を見合わせ、ふふふと微笑む。
ほのぼのとした昼下がり、ハインはノアを連れ久々に人間の町に繰り出していた。
お疲れ様です。ご拝読ありがとうございます。
この魔王も書き続けてもう一年半ぐらいですかね?
改稿版を先カクヨムで上げてからこちらも改稿します。
よろしければ感想、ポイントなどお付けいただけると嬉しいです!勉強に励みになります。




