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無責任な魔王は常に◯◯する。  作者: 珀武真由
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魔王、一世一代のプロポーズ?

おはようございます。いつもありがとうございます。今回もやっと投稿できました。

あと数話で終わる予定しております。

おつき合いの程よろしくお願いします。


「ノア、人間を捨てて一緒に生きくれないか?」


 俺は……、ノアに思いをと云うよりプロポーズをした。


「?!」


 泣き喚く子どもの声でかき消されたのかと思うぐらい長い、沈黙が続いた。


 暖炉の脇にある柱時計の秒針がタクタクと音を響かす上に、支柱に飾られるの砂時計はサラサラと綺麗な音をさす。

 部屋にある、音をさせる物が至る所で響いているんだ。

 

 俺とノアだけを取り残して。


 ノアは終始抱く子をあやし、静かにソファ―に坐っているだけだ。

 暖炉の火は俺とノアを優しく包み、煌々とオレンジに。

 時折青白く。

 揺れる炎が照らす橙色の影も、ノアの綺麗な微笑みの輪郭を捉えるだけだった。

 なぜか俺は恥ずかしくなり始めてる。

 なぜ魔王の俺が恥ずかしがる。

 俺が初めて告白をしているのに、この人間の娘はなぜ……反応しない?


 ノア?


 ノアに対し考えたことがない三文字が頭に浮かんだ。今までこんなことは考えたことがない……。


 ノアは俺が()()()なのか?

 いや、それはないだろう。と自負している俺だが果たして。


「ノア……もう一回言うぞ?」


 そうっとノアの顔を伺う俺に、柔らかい唇が触れた。

 まるで慈しむように鼻先に、頬にそして。

 いつものキスではなく、長い─。

 ……舌も入れず、ノアから重ねられた花唇に俺の脳芯は蕩けた。唇が離れ、俺を見るノアは妙に色っぽい。

 そうなんだ、だからここで抱きたくなって、いつも押し倒すんだ。


「ふふふ、なぁに? 新しい魔王ジョーク」

「ふざけてない!」


 声を立てすぎるとキャノンが起きてしまう。胸を手で押さえ俺は気を抑えつつ声を殺し、ノアを一喝した。

 確かに、俺は魔王で優柔不段。やることなすことが滅茶苦茶であって。


 ん? 普段から破茶滅茶だ。


 魔王だから何のしがらみも要らない筈だ、なのに……。

 何だ? 今の考えは。

 ノアは出会った時からそうだ、俺を狂わす。俺がノアの前で魔王で在り続けられたのは必ず、ノアが人前にいる時だ。

 二人で居るときは普通に安らぎ、俺は魔王でいる必要はない。……最初はたかだか人間の小娘だったのが今では。

 心の支えになっていた。


「ノア、俺は」

「ふふ、ごめんなさい。たまには困らせていいでしょう?」

「!」

「魔王ハイン様」


 いきなり真顔のノアがいた。

 俺は唾を飲んだ。

 こんなに真剣な眼差しはパニシャの時、そうあれ以来だ。あの時はすごく心配を掛けた。


 ノアは本音を言わない!


 ラスクにノアに気にかけるようにと注意され、怒られたことがある。

 が、ヘラヘラしていた。


 俺は……気がつかない内に、ノアに負担を与えていたのか。


 こんなことを思うのもノアだけだ、爺にもルーにも1ミリも気を遣うことも、ここまで心配したこともない。


 ノアの口からなにが出てくる?


 無反応なノアが厭で俺が問い掛けを急かしたのに。

 せっかく何か言いかけてけてくれたのにいきなり、訊くのがいやになってしまった。


 怖くなってしまった。


「ノア、すまん!」

「あっ!」


 情けない。


 逃げ出すなんて。

 俺はどうかしてしまった。

 

 なぜか俺は古い書斎に入り込んでしまった。鍵を掛け、こじんまりと身体を折り、立てた膝に頭を乗せ溜息をついていた。


(なんか子どもみたいだ。情けない)


 暗く落ち込み、膝を抱え小さくなる俺。

 ……部屋の開く音はしなかった。

 薄らと差し込む扉の光に俺は反応し、眼を床に斜視した。すると俺の足先にノアの足があった。


「見つけましたわ」

「ぎゃっあ!」

「なんて悲鳴を上げますの?」

「そりゃあ驚くよ」


 部屋に鍵かけ閉じ籠もっていたのにすんなり、入られた。


「戸が開く音はしてない……」

「鍵が開いた原因はこの子ですわ」

「へ?」

「もう、本当にハイン様はダメダメです。この子の素質は見抜いてるくせに」


 がっかり顔で溜息をつくノアの腕には、キャッキャッと笑うキャノンが抱かれていた。


「もう、何に怯え私の前から立ち去ったのです」

(おまえだよ、ノア)

「もう、ここ最近のハイン様は少年のよう」

(少年? 子どもではなく?)


 ノアの小言に合わせ、自問自答する俺がいた。

 笑いながら話すノアの口をジッと眺め、俺はキスをして塞いだ。


 柔らかいノア──……。


 俺とノアの間でキャノンは手を叩き気持ち良さげに笑い、しばらくすると音が止んだ。ノアと俺でも眺めているのか「あぅ〜」と呻く声が胸あたりから、訊こえていた。

 

 ゆっくり開かれるノアの瞳のなんと美しいことか。


 黙って俺を見つめるノアにまた口づけた。今度は先ほどのキスとは違い舌をからめ、激しく長く。

 静かな書斎に響くのはキャノンの初心な笑い声だけ。


「なぁ、ノアおまえは俺の所有物だよな?」

「あなたがそう言うのなら私はそうかも」


 ふふふと可愛く、はにかむノアの笑顔はやはり俺にはまぶしい。


「これから俺はおまえに命令したい。いいか?」

「私が許せる範囲でしたら、何なりと」

「ノア、俺が『リバース』を手に入れたのはおまえが傍にいたから」

「はい」

「福音は時に奇蹟を起こす」

「はい」

「俺はそんなの信じないが人間のおまえは」

「信じるでしょう」

「だよな」


 俺は頭を搔き、持て余していた両手をノアの肩に置いた。

 

(クソッ、俺はどうかしたみたいだ。子を持ったからか? それとも天使とのハーフだからか、慈愛が溢れてるのか!?)


 俺は自分自身に流れる天使(パニシャ)の血を否定する。


 憎悪する。


 本当の俺はどこにある?


 ノアはこんな俺をどう思っているだろう。自身が困惑し、己が視えていない今の俺を。

 ルーは多分、貶しながら受け止めるも淡々としているだろう。

 でもノアは?


「もう一度、今度は命令だ」

「はい」

「俺と生きろ。俺の横で人の寿命を捨て、魔の者として横に」

「……」


 はいはいと返事をしていたノアだったが、急に黙り込んだ。


「俺はおまえを必要としている」


 ノアはこちらを窺うも、黙ったままだった。


「……」

「……」


 長い沈黙を感じているが実際は違ったらしい。

 キャノンがミルクを強請り泣き出したことにより、二人の沈黙は解かれた。

 腕に抱かれる赤子がミルクを要求するということはお腹が空いていると、いうことだ。コイツの順番は他の子の最後に上げているから時間にすると三十分ぐらいしか、経っていない。


「三十分ぐらいの追いかけっこ?」


 俺はボソッと呟いた。

 クスクスと笑うノアにより、俺も笑うが腹の音も鳴ってしまう。


「フフ、親子だわ」

「……ノア、俺は弱い!」

「……ハイン様……」


 ノアは大きな瞳を更に大きく、そして喉を唸らせると、もうぅと頬を膨らませた。


「知ってますよ。今さら気付いたのハイン様は……。困ったお人」


 キャノンに触れる俺にノアが可愛く睨み効かせ……、俯瞰していた。

 今までとは逆だなと俺は思った。

 更に珍しく文句が続く。


(ああ、さっき言っていた困らすとはこのこと?)


 俺は黙ってノアの言葉に訊き耳立てているといきなり、キャノンの放電が始まった。俺は雷を顔面に貰い、前髪が焦げた。様子を眺めていたノアが珍しく笑い転げた。

 キャノンと一緒に笑うノアはとても楽しそうで、俺はなぜかほころんだ。


「クスクス、キャノンはお虫の居所が悪かったのね。よしよし」

「こんなに放電というかこれ電雷矢だよな?」

「さぁ、魔法の知識は乏しくて……でもこれだけは分かりますわ、ハイン様の横に居れば安全だということは」

「ノア……」

「……私も考えたことがない訳ではありません。私は所詮人間、あなたは魔王」


 片腕でキャノンをあやすノアは、空いている手で俺の手を握りそして歩き始めた。俺はノアに見惚れ、自分の不甲斐なさを思わされる。


 ここまで女にのめったことがない。

 

 ノアは横で顔を真っ直ぐ向け、その亜麻色の髪を靡かせ歩く。

 そうか、もう小娘でも、俺の女でもなく、一人の母親か。

 

 少し寂しくなった。

 



 

 

 お疲れ様です。ご拝読ありがとうございます。

よろしければ感想、ポイントなどお付けいただけると嬉しいです!勉強に励みになります。

この魔王の改稿版をカクヨムで上げています。まだ数話ですが、こことは内容も違うものもあります。

興味ある方様はぜひに。お待ちしてます。

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