常に◯◯。無責任も健在だ!
おはようございます。いつもありがとうございます。今回で最後です。魔王ハインの無責任ぶり、作者の無責任にお付き合いありがとうございます。
たまに月日開きましたがやっとの完結です。おつき合いの程よろしくお願いします。
ノアを連れ、久々に人間界に来てみたが……。
(よくよく考えると……)
住む世界が違うだけでこうも違うのかと俺はなぜか、悲嘆してしまった。いや、それは感覚が違う世界にいるから当然か?
隣で並ぶノアと目を合わせた。くすりと微笑むノアがいる。
(かわいい……)
「ハイン様、今日はありがとうございます」
「ノア……。様がついてる」
「えっ、あらあら。まだ癖が」
照れ隠しで笑うノアも、かわいい。俺はこの人間に何を……、してあげられるかなんておこがましい考えだが何故か今さら思い募る。
でも……なんだろう。煮え切らない俺がいた。
「今日はキャノンがいないと父殿は喚いていたが」
「ふふ、でもハイン様とお酒が飲めると喜んでいたわ」
「ノア」
「あら」
俺は酒瓶を二本抱えたままノアに口付けた。
街行く人から冷やかしや、痛々しい誹謗を受けるが俺もノアも気にならない。
俺達はそれほどに、魔界の空気に馴染んでいた。
「人間はなぜこうも五月蝿いんだ」
「ふふ、だって皆が皆魔界のような振る舞いはしませんわ。魔王さま」
「ノア!」
呼び捨てに慣れないノアの口に覚えさそうとしつけに掛かると拒否られた。
「もう! ハインここに来てからキスばかり!」
「おっ、初めての名指しだ」
俺はうれしくなり、持っていた瓶を浮かせまた唇を重ねた。そして二人で破顔していた。
「ルー様は最近忙しいのかしら?」
「ああ、この間書記補佐が居ないから勝手に推薦を受けたと喚いていた」
「まぁ、昇進?」
「本人は嬉しくないと言っていた」
「そうですか、最近お風呂リフォームしたのに」
キャノンが生まれた時に大破した風呂は修繕したんだが……あれからキャノンは赤ちゃんに戻らず五歳児のままである。
遊ぶのは好きだ。
子であれなんであれ、一緒に遊んでいると楽しい。
「水鉄砲がキャノン砲だぞ?」
「あら、あなたもそれに対抗して豪龍を出すからお風呂を直すことになったのでしょう?」
「……」
「もうパパなんですから落ち着いてくださいね?」
実はそこなんだ、俺が悩んでいるのは……。この間から落ち着かん。
方々の魔国の領主が子どもの祝いと称し度々我の元を訪れる。ここぞとばかりに父親とだと……。
俺は父という存在を知らず育ったし、今までもいや今も好き放題だ。俺自身子どもだ。ノアは、一緒にいるだけで良いのではという。爺は爺で、何かを示せと五月蝿いんだ。
(爺が玉座に戻ってからうるさい)
魔王が城に居らんはNGだとか、威厳がどうとか小言つく。
隠居から戻ったんだ。お前が魔王の椅子にきちんと鎮座しろよと、説教食らうたびに思う。
(俺は外をうろうろだな?)
「なぁ、ノア俺さ」
「ふふ、なぁあに?」
あっ珍しく浮かれてる。帰ってからでいいかと思ったけど気がつくと言葉が漏れていた。
「俺、旅に出て良いかな?」
「え?」
ノアの表情から笑顔は消え、目を見開きまるで……。
「えっと」
「あっ、すまん突然過ぎた。今の無し。買い物を済まそう」
考えが矛盾していた。
ノアのことを思うなら、あんな場所に人間一人は寂しいだろう。いくら気が休まる友が増えたとはいえそんなことを、なぜ考えたのだろう。
とりあえずノアの両親たちと一家団欒を終え、帰城した。
城に戻り部屋に黙した。ノアとの間に辛く気まずい空気が流れたから独り部屋に隠った。
ここ最近一緒が当たり前だった部屋には……。
いつもなら横に居て笑ってくれている。
(ノアが横に居るのがあたり前になっていた。なのにいきなり旅宣言)
自分勝手さが身に染まっていると反省しても、外を考えるとうずうずしてしまう。
よく考えると魔王になってからそんなに城を開けたことあったか?
いや……ん? あるわ
自身で押し問答しているとノアが、外に行きましょうと微笑みながら誘いに来た。
「おお、ピクニックか」
「そう、双子ちゃんはお爺さまが見てくれているから」
満天の星の下、広げられたお弁当を見て浮かれた。ノアのお手製はどれも旨い。
「うん、やはり外は楽しい」
「ふふ、ハイン様、子どものようね」
「……」
癖だと分かっていても、呼び捨ててくれないノアに腹立った。
「痛っ」
ノアの太股に思いっきり犬歯を入れてやった。歯型からワインに似た美しい朱色がぷつりと、吹き出す。
美しいと舌でゆっくり舐め取ると、頬を赤らめるノアがいた。
「ノア……旅に出たいと言ったがおまえが呼べば直ぐ戻るし、危険があれば跳んでくる」
「……ハイン……」
「おっ、ノアも拗ねてたのか?」
「……もぅ!」
「様」が外された呼び名に喜ぶ俺に、彼女から接吻を与えられた。
「子ども達を頼めるか?」
「はい」
「ついでに爺も」
「まぁ、お爺さまも? 私の方がご迷惑掛けているのに?」
「いや、爺は喜んでいる。俺より出来た孫だと」
「嘘でもうれしい」
頬に手を宛て綻ぶノアに口付けようとする俺の腹上に、ダルマに似た物体が降ってきた。
「ぐっ!! はっ」
腹が痛い。
「父殿ひどい。母殿も。二人だけでピクニック!」
「キャノン!」
ぷんすかと怒り、俺の腹で胡坐かく我が息子を見てなぜか鍛えていて良かったと思った。子どもは突拍子ない行動をするというがこいつは、はつらつ過ぎる。
俺の幼少期は大人しかったと振り返る。以前ノアに、その話をしたら今の魔王様からはあり得ないと言われ笑われた。
(子は親の鑑? 親は? どっちでも良いか)
キャノンを退かそうと憤慨するノアが可愛く、面白い。
意固地になり、キャノンを持ち上げようとしているが持ち上がらず、鼻の穴が広がるばかり。
「キャノン、石の魔法を解け。ノアが困っている」
「え~~、僕動きたくない」
「母がぎっくり腰になっても良いのか?」
「それはやだよ」
ノアが地面に生えている蕪を抜こうという感じで体を動かしたものだから全体重が背中に行き渡り、後ろへ倒れそうになった。
「あわわわ」
「ノア!」
倒れそうなノアの肩を支えた。ノアの後頭部が俺の鼻頭に、ゴチンと鈍い音を立てた。
「ハイン、大丈夫」
「大丈夫、呼び捨てが定着して来たな」
「そんなに呼び方大事?」
「うん、俺には」
俺はノアの気が置ける、一人の人になりたいんだ。
旅は気まぐれに、今以上に城を開けることが多くなった。ノアはいつも通りですよ。と笑うが爺の怒り顔が増えた。
たまにラスクも、キャノンも同行しては一緒に羽目を外している。ただキャノンが同行すると何故かグレイも付いてくる。
監視されているようで好かん!
俺は結局のところ、無責任に、自由奔放に、わがままが大好きだ。
(あっ、それは誰もが思うことだな)
だけどただ一つだけ、俺の心境に変化が芽生えた。
以前のように女遊びに人間を選ぶのはやめた上に、きちんと避妊をするようになった。偉いだろうと、ラスクに自慢すると「性欲旺盛の方が間違ってるよ」と呆れられた。
あいつはシフォン一途な男なんでんね、つまんない。
グレイは相変わらず、どこに行っても「落ち着いてください」との一点張りだ。
あーつまんない、つまんない。
その点、ノアは何も言わない。怒らない、甘えさせてくれる、黙って見護っていてくれるいい女だ。キャノンもいつもノアのような女性を見つけるんだと俺に言う。そしていつもグレイに「キャノン様に女性は早いです」と叱られている。
グレイは、悪魔大神官なのに頭が硬いなぁ。
斯くして、俺の好き放題に拍車がますます掛かってしまった。
今の野望は人間であるノアをいつ、俺の眷族に変えてやろうかと隙を狙っている。
そんなところだ。
あとがき
お疲れ様です。ほんとうに今までご拝読ありがとうございました。
このハインの物語は思えばほんとうに気まぐれで書き、試しに投稿したらいきなり30人の方が読んでくれたのが始まりです。嬉しかったです。
まだまだ作品を上げてますのでそちらもお付き合い願えれば嬉しいです。
カクヨムでも活躍してます。
『龍に喰われる前に喰ってやる』
『鍵-俺の力は冀求か絶望か誰か教えてよ?-』
はカクヨム先行です。
「真紅夜綺譚」はおやすみさせて頂いてます。ごめんなさい。
では、他作品でまた遭いましょう!
ハインにお付き合いいただきありがとうございました。
ちなみに、誤字脱字などの報告大歓迎です。感想もお待ちしてます。




