儀式は終わった、だがまだやることはある
ベッドに横たわるノアとルーの周りに、円陣が現れるとハインが両手を広げ何かを待っている。
「爺、すまん。サポートを」
「ああ」
円陣が光り、ハインの両腕に施された呪印が脈打ち放たれると輝いていた光熱はさらに増し中央にいる二人は取り込まれていく。
その光景の凄まじさに、ハインを支えるアデルと見ているオリバーは戦いている。
横たわる二人の周りに織り成された円陣の仕組みに、ハインの呪印が吸いこまれていく魔法の目まぐるしさに圧倒されるオリバーがいた。
渦巻く円陣に、ハインが手のひらを合わせ鳴らすと寝転がる二人をさらに光球が包み、渦巻いていた円陣が潮を引くように落ち着くと儀式は終わった。
力なく、倒れそうになるハインをすぐ傍にいたアデルが両肩を支え立たす。
「俺の魔力、凄すぎる。負かされそうになった」
「ハハハ。ルーちゃんにどれだけ注ぎ込んだのよ。我が孫よ」
「思いの丈・・・」
「そうか。そうか」
頷くアデルにハインは身体を預け、寄りかかると深く息を吸う。
「俺、休む。が、オリバー話しがある。下で爺と待て」
「「ああ、ゆっくりと休みなさい」」
身体を預けるハインをベッドに導くアデルが声を掛けると同時に、オリバーの声が重なり合う。
驚くハインだが、アデルが気づかないようほほ笑むと腕を握った。
ベッドに上がると、寝転がるノアとルーの間にもそもそと入り、同じように横で一息つくと仰向けになるハインがいる。。
自分の両の手のひらを眺めるハインは、刻紋に焼かれた痕をまじまじと見つめ、息を吹きかけ満足気にほほ笑む。
「ハイン、お前を魔王にしておくには、持ったいないな」
先ほどのハインの魔力量と仕事ぶりを見て、感服し褒めるオリバーがいる。
「ああ、どうも」
(当たり前のことを───。だが俺は甘んじて魔王に居座る。ここがいい)
オリバーに言葉を言い捨てるとハインは寝転び、手でアデル達を追い払いルーの身体を弄っている。
「では、我が孫よ。二人に無理をさせてはダメだよ」
アデル達が部屋から出て行くのを確認するとモソッと動くハインがいる。
開けられたルーのドレスを剥ぎ取り腰元の魔刻紋の有無を確認するとゆっくりと息をつき鋭く瞳を突き立てる。
「フッ。無事白い肌だ。ルー」
何も考えずにハインはルーの腰元の魔刻紋があった所に歯を立て抱きしめていた。
(まぁ、爺に出来る術だ。俺も出来て当たり前だが、自分の魔力に相殺されそうになるとは危なかった)
「ん──。終わったの」
「ああ、あとはノアを確認する」
抱きしめられたハインの腕に気がつき、起きたルーが眠そうに瞼をこするとその手は握られそこにキスをするハインがいた。
「おはよう。ルー、気分は」
改めて挨拶するハインがいる。
「大丈夫だよ。ハインは」
「大丈夫ではない。自分の魔力に競り負けそうになった。俺が消えたらどうする? ルーは泣くか」
「泣くよ。悲しいよ。でもぼくは・・・わがままだ。こんなぼくでも、まだ好き?」
「ああ、天使のお前が存在することで俺の意義が確認させられる。その身体をこれからも俺に弄らせろ。肌を重ねろ。俺のためだけに存在しろ。いいな」
「ものすごい言いぐさだね」
「ハハハハ」
まっすぐに瞳を合わせてくるハインに、照れるルーがごもごもと何かを言いごもり口を尖らせる。
「何だ? どうした」
「ぼく・・・のこと本当に好き?」
「何だそれ、フフ」
ルーの口を尖らす表情に笑うハインが胸に顔をうずめ、ますます高笑いをしたのでくすぐったがるルーがいる。
「プッ、アハハハハハ。俺は、ルーもノアも気に入ってる。平等に愛してる」
「・・・・・・腑に落ちない告白だが、まぁいいかなぁ。ぼくもハイン好きだしぃ」
「おまえの方がはっきりしない」
戯れる二人の横で吐息を漏らし魘されるノアがおり、薄らと瞳を開き始めた。
いつものノアの寝起きとは違い様子がおかしく、泣きそうに赤らめる顔でハインを見つめる瞳は潤み可愛らしい唇は艶っぽく濡れている。
薄らと開く唇から吐かれる甘美な息に、ハインは蹌踉めき惹かれると唾を飲む。
「ノアが起きそうだが、色っぽい」
「いつもより───なの?」
「ああ、いつもより・・・・凄く、ソソられる。ルー以上に」
「ムッ、ムカつくけど。ぼくも・・・何かにって、コレ淫霧だ。淫霧に当てられている。ここから離れたいよ。ハイン、気がおかしくなる。コレはヤダッ!」
ノアの気に当てられ、身体を強張らせるルーにハインは肩をさすり抱くと、すぐアデルを呼びつけた。
「どうした、ハイン」
呼ばれたアデルは不思議がるが、すぐ傍のノアの異変に気がつくとルーを抱き部屋を出た。
「まぁ、淫らなルーも見たかったが、そうも言ってられん。困った・・・俺の魔気を受けノアが変化しつつある」
(俺の気を取り除けばいいのだが、まずは紋の確認だ)
困るハインがノアの服を剥ぎ、まず身体に魔刻紋があるか確認するがどこにもなく、膨大な魔力の膨らみは懐妊腹から流れていることに気づく。
「うむっ、胎児に尋ねるか」
(さて胎児は、起きてるかな)
ノアを抱きしめるハインが子と会話を始めようとしたとき、ノアが小さい声でつぶやき身体をよがらせる。
「ハイン・・・・ッマ。からだが、火照ル」
先ほど以上に艶っぽく、誘惑するように身悶えさすノアをハインは優しく受け止めた。
「苦しいか。我慢しろ」
唇を合わせ、魔気を吸い取るハインに語り掛ける声がある。
《「チチ、めのまえにふたりいるが、ナニコレ?」》
「ふたり?? ひとりではないのか」
《「うん。ふたりだよ。かわいいね、コレ。ほしい」》
腹の中に入ってきたルーの子を欲しがるノアの子がいる。
「守り可愛がるならいいぞ」
《「ふふ、まもる。ははも、まもる」》
「フッ、それは、それは」
胎児に人数を聞かされ、驚きほほ笑むハインだが、会話が終わるとノアの魔気を吸い取ることに集中している。
「ンンッ。コレでは埓があかん」
ノアの口を激しく吸うと組み伏せるハインがノアに尋ねる。
「身体を合わせないと魔気がうまいように吸えん。俺の魔力量が深すぎる。ノア、抱くが耐えれるな」
返事は返さないが、深く吐息を漏らしハインに抱きつき頬をすりよせるノアがいた。
翌日、ノアは普通に戻るのだが、ただ一つ変わったことは目立たなかった腹が大きく膨れたことだった。
魔刻紋は、ハインのよく口が立つ胎児が両肩に携え生まれてくるが、これはまだ少し先の話しである。




