ワインとチーズとエプロンと魔王
おはようございます。こんばんは。こんにちは。
久々に訪れた魔王城を、ハインの腕の中でキョロキョロと見渡すノアがいた。
(相変わらず、大きくキレイな大理石の床に柱。こんなに広いとこだと掃除のし甲斐がありそうです)
「ノア。今、掃除してる自分想像したろ?」
「えっ、あっ、はい」
「頼むからするなよ。おまえのことだ、目を離すとやりかねん。大人しくしてろ。いいな」
「はい」
ハインに考えていることを指摘され落ち込むノアがいた。
(ったく。ただでさえ悪魔を中心とする人外の巣窟。披露してないからノアをまだ知らない者にとってはただの人間。さて、どう皆に知らせるかだな)
腕にノアを抱え螺線階段を上がるハインが静かな口調で注意しているとともに思案にもくれていた。
「ノア。この部屋は、もとは母殿が使っていた部屋だ。中にはルーもいる。三人で飯を食べよう。いいかな」
「はい」
扉に手をかざすと、重い音とともに開かれたその場所には、広い部屋があり、あふれんばかりの本と壮大な山の景色が広がるバルコニーに驚くノアがいた。
「ハイン様のお母様の部屋。いいんですか? 私が入っても」
「ああ、今はまだ俺しか入れんがその内、ノアが使うかも知れないし、子が使うか、考えないとな」
床に足を着け部屋の全貌を見渡すノアがベッドの上に座るルーを見つける。
「ルー様、まぁ。すてき♪」
「ノア?」
ベッドの上に座るルーはノースリーブで、赤いワンピースを着ており、白い肌に赤色がよく映え似合っている。
ドレス映えするルーの姿に見とれるノアの瞳は潤み、感動していた。
「ハイン様、目が眩みます。ルー様は何を召されても似合うのですね。うらやましい」
「ああ、そうだな。ノアも着るか?」
(ノアがいなければ、理性が保てなかった。あぶない。あぶない)
目の前にいるルーを見て同じことを考えると同時に喉をうならせるハインがいた。
「フフ、ノアありがとう。あっ、ごめん。勝手に着ちゃった。お母様のかな? 赤が好きな人だったんだね」
「ああ、母殿は赤が好きって。ほぼ全部出したのか? すまん退屈だったか」
「まぁね。ノアも着る? 今のエプロンドレスもかわいいけど、この赤なんてどう」
「すてきな色ですが、私はそこまで大人びてないですからこの色はちょっと」
「着てみればいい。たんに食わず嫌いかも知れん。二人で楽しんでろ、その間に飯の用意をする」
一部の書斎棚を開けるとなぜか小さいがキッチンルームがあり、エプロンを着けるハインがいた。
「! ここすごいね。そんなところにキッチンが・・・・だってこっち開けるとワインセラーがあるし」
反対の棚をルーが開けると、そこにはワインとチーズがずらりと並んでいた。
「なぜ、ルーがそのこと────」
言葉に詰まるハインがよくよく床を見るとワインの瓶がいたるところに転がり床にいるスライムは酔っぱらい寝ていた。
「ワァ!! なんてステキなチーズ棚に、美味しそうなキレイなチーズ」
「あっ。ノアはそこに目が行くのか」
チーズに瞳を輝かすノアの前でルーは、ワインを手に取り頬ずりうっとりする。
「ぼくはこれ♪」
ワインを手に取るルーがいた。
「ダメ。おあずけ」
ハインは指を鳴らし、ルーのワインを取り上げると次に、指をスイッと指揮するように動かし、床に転がるワイン瓶を部屋の隅に並べ片した。
「何本飲むつもりだ、ルー。いくら酒が強くてもおあずけだ。ファッションショーでもして遊んでなさい。ノア、食べたいチーズがあるなら言え。調理するから」
「はい、でも調理なら」
「動くな。そうでなくとも先ほど俺のせいで腹の子が動いてたのだから。たまのサービスぐらいはする。遊んでいろ」
慣れた手つきで動くハインに、二人はドレスよりも興味があるらしくキッチンに釘付けである。
「魔王が調理している」
「すごい。ハイン様の調理姿。貴重です」
「まぁ、俺だからな」
さも自然に動くハインに、チーズを恐る恐る出すノアがおり、瞳が合うとほほ笑み、昔の話しをしだす。
「ここはドレスルームだったが改造した。爺に叱られるとよく閉じこもったものでな、すると腹が減る。指で鳴らせば出せんこともないが、せっかくチーズがあることだし」
手を止めることなく話し続け、調理するハインに感心するノアがいた。
「? ハイン様、チーズは元からあったのですか?」
「ああ。よく分からんが、セラーとチーズはあった。まぁ、好きだから深く考えなんだが母殿も好きだったんだろう」
鍋から立つ、湯気の向こうで動くハインの腕と指に食い入るように見るノアの頭を撫でハインがやさしく笑う。
「ノア、ルー。出来たぞ」
〖コトットン〗
出された皿には、温かい湯気を立てるチーズリゾットが盛られていた。
ハインから、初めて振る舞われたひと皿に感動し涙するノアに、横にいる二人は驚き、声をかける。
「どうした。口に合わなかった? 火傷でもしたか?」
「もう、ハインが珍しいことするから。ノア大丈夫?」
「普段のハイン様からは、想像が・・・すみません。うれしいです」
「魔王で悪魔でスケベな俺がノアに料理を振る舞っている。それは驚くよな」
「もう、自分で言わないで下さい」
二人の前で笑いとともに涙するノアがいる。
ハインは、指でノアの涙をぬぐうとその手で頭をぽんっと軽くたたき尋ねる。
「美味いか。ノア」
満面の笑みで尋ねるハインにノアは照れながら答える。
「はい。ものすごく」
笑い合い会話する二人を、横でひそかにほほ笑み、ノアと同じ皿を食すルーがいる。
たちこもる湯気に包まれ緩やかな時を過ごす三人がいた。
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