臣下をクッションに着地する
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
多種多様の人でにぎやかな魔王城は今日も平和である。
床を掃くガシャ髑髏に、ゴミを融かすスライム。そして木を伐採する悪魔騎士。
そんな中、グレイの部屋に占いババアが勝手に入り、ベッドで寝ているグレイの上に浮くとツエの先で頭をたたき起こす。
「んん、誰ですか。部屋に勝手にってワッ」
「キエェエエエ」
占いババアとグレイは、目が合うと驚きの声を上げる。
「ババアさん、あなたが勝手に入ったのになんです。その悲鳴は」
「カッカッ。すまない。お告げじゃあ」
「ハッ?」
「今すぐそこから起きんと、怖いモノが降って来るゾォォオ。では」
ひと言、言い捨てるとふよふよと去って行き、部屋に残されたグレイは呆気にとられまた布団をかぶり寝なおした。
(怖いも何もこんな部屋に何が降るんですかね。まったく)
《ドサッドカッ。ポスッポサッポト》
「ッ、痛、ワワワ」
寝ているグレイの上に、占いババアの言う通りにモノが落ちてきた。
「なんです。イタタタ、何が」
「よっ、グレイ。おはよ」
起きたてのグレイとハインがはち合わせしている、ベッドの上で・・・・
占いババアの落ちてくるモノとは、ハインとノアだった。
「はぁ? ハイン様。それにノア様」
「ハハハ、グレイ。邪魔をする」
「ええと。おはようございます」
ベッドの上でハインとノア、グレイが顔を合わせ、ノアは申し訳なさそうに頭を下げ、呆気に取られ硬直するグレイをよそに、シレッとするハインがいた。
「ノア、どこも──痛くはないな。ベッドの上だから」
「はい、でも、その」
あたふたするノアとは別にグレイは硬直し、頭の中を整理し出すが、ハインがますます困惑させる。
「フフーン、グレイ。面ろ可愛いな。ノア、ちょっと来い」
「?」
言われるがままにハインの横に座るとノアの前にはグレイが座っている。
「グレイの頬に詫びのキスをしろ。命令だ」
「えっ」
「コイツの困った顔はオモシロイ。俺の代わりだと思い、一時だけ」
ニヤつくハインの命令通りにノアはグレイの頬にキスをした。
驚き飛び跳ねるグレイがおり、それを見た瞬間、立ち上がるハインはノアを肩まで抱き上げると腹にキスをして語りかけた。
「胎児よ、聞きえるか?」
《コポコポ。コポ》
《(チチ、ひどい。ハハ、ドウグではない)》
「ハハ、許せ、子よ。俺はグレイの困り顔が好きでな」
《コポコ。ココポポ・・・・》
《(そのようなリユウで・・・・)》
「だが、オモシロイだろう?」
《コポポポ。コッ・・・・》
《(たしかに。クッ・・・)》
「ンナッ、ナッ、ハイン様。留守を預かる者にねぎらう言葉の前に、こ、このよう───って、ハイン様。誰と会話をされてるのですか」
ハインの様子がおかしいことに気づいたグレイは思わず尋ねた。
(先ほどからノア様の懐妊腹に話しかけているような気がするが)
「誰だと思う?」
ひと言、言い捨てるとハインは顔をニヤけさし、グレイを見下ろす。
「何ですか、もう会話をされるのですか」
ニヤけ顔が止まらないハインはそのままグレイを見つめるが、何も言わず、グレイはグレイでツバを飲み返事を待った。
「言ッワナ─イ」
子どものようにちゃかし返事を返すハインにグレイは顔をさらに赤め布団を強く握った。
「怒った? はは、すまん。気持ちが思いのほか昂ぶっているらしい。そうだ、会話をしている。我が子と」
「素晴らしい。ですが、ハイン様もしていたのですよ!」
「俺? も」
「はい。じつは私まだ胎児のハイン様にけなされまして」
「えっ、俺はなんて」
「ハゲとひと言。うれしかったぁ」
「うわぁ、俺も俺だが。グレイ、引くわ~。ハゲと言われ喜ぶとは」
「えっ、だって。小さいながらもうれしかったのです。うれしー・・ハイン様、その顔をやめてください」
眉間にシワをよせ、けげんな面もちをするとグレイに粘りつくような視線を送るハインがいる。
二人のあいだに沈黙が続く。
「ハハ、まあいいか。そういうグレイも好きだし。我が子よ。我が家臣は少しヘンなのだが紹介しておく。グレイだ」
ノアをグレイの前に座らせると二人が温かい何かに包まれる。
《コポポポ。トクン、コポ》
《(はじめまして)》
「えっ? 今のは───」
「おお、初めまして、グレイです」
驚くノアと三つ指をつくグレイがいる。
「遅くなったが────」
ハインはグレイの前で屈むと自分が不在だった留守を代わり見ていた礼を述べる。
「留守、ご苦労であった」
「いえ。ハイン様、お帰りなさいませ」
「あと、すまんが、早う着替えて爺とラスクを至急迎えに行け。二人とあるおっさんを塔に置いてきた。頼む」
「────ハイン様!」
先ほどまでの余韻が消え、残念がるグレイを残し手を振るハインは、ノアを片腕で抱きかかえ腹にキスすると足早に部屋の扉へと向かった。
グレイを冷やかすように扉から、チラッと顔をのぞかせ去っていく。
歩いている最中、腹の子が尋ねる。
《コポッポ・・・・コポ》
《(チチはいつもあのモノを)》
「ああ、グレイはオモシロイ。そして、忠実な俺の臣下だ。頼りにしている」
「でも、からかいが過ぎるとダメですよ」
「そうだな。ノア、気をつけないと」
上機嫌なハインがいる。
部屋に残されたグレイは、少しだけ苛立つがハインの明るさに胸をなで下ろす。
(三界のあと、いつも暗く落ち込むハイン様だが、今日は違う。空元気だとしても、落ち込まれるよりは)
ハインが出て行った扉を見てほほ笑むと、服を着替え、命令通り動くグレイは静かに部屋を出て行った。
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