初めて俺は負けを認める
おはようございます。こんばんは。こんにちは。
白い屋敷の姿を湖畔はうっすらと捉え揺れ、映している。木々から漏れる朝の日差しはまだ優しく、小鳥達が軽やかに鳴き涼んでいた。
ベッドの上にたくさんの小鳥達がノアを囲い、さえずっている。
《ピチュッ、ピチュ》《ピチュ》
「ん……」
綺麗な鳴き声に囲まれる中、ノアの胎動が大きく動き何かを告げた。気付いたノアは驚き跳び起きると、隣にはハインが寝ていた。
「あらっ、いつお見えになったのかしら」
《コポコポッ・トクン・トクン》
嬉しいのか、少しふくらみつつある腹の胎動もいつもより、波打っている。
隣で寝るハインの髪を、優しく撫でノアが見ていると、撫でられる手に反応したのかハインはいきなり薄目を開け起きた。
そして背から翼を、広げた。
「ハイン様、翼……」
「ん……」
訊ねるノアの音よりハインは、ノアの腹音の方が心地よいらしい。
《コポコポ・トクン・とくん・トン》
お腹で柔らかく波打つ音に、返事をしてみせるハイン。
「はは、そうか……ん……」
ハインは一瞬だけ笑い、ノアの胎動に自分の良い気分を伝え、そのまま翼を終うことなくまた眠りにつき起きなかった。
「!! ……キレイ」
顔を赤らめ、両手で口を塞ぎ驚いたノアは、ハインの寝息を聞き、翼に触れ始めた。
(クスッ、気が緩んでるのかしらこんなハイン様初めて。それに翼……フフ、当たり前よね? 悪魔で魔王様ですものね)
初めて見る翼に驚きが隠せず、翼の輪郭を手でなぞり、次に羽根を触り、光に艶めく、折り重なる部位を指でなぞるとなめらかに滑る。
「ふわわぁ、ルー様の羽根の感触と違い、なんてきめ細かく、指通りがいいのかしら」
(その上、一、二、三……んん? 十三枚も生えています。重くないのかしら。色も変わってますし……不思議)
ひたすらハインの翼に感心するとノアは朝食をこしらえるため離れようとする……が。ハインはノアの腰を抱き、引き留め顔をうずめた。
ノアは驚きを隠せずにいる。
(いつもなら、起きて上に乗るように躰を求めるのに、今日は普通に寝てます。しかも、髪の色も黒か茶髪でショートなのに、銀色の長髪。この髪型が本来のハイン様なのかしら。あっ、そうだわ。記念に……)
《ジョリッ》
「ん……」
(ジョリッて、なんの音?)
何かに、刃入れしたような音の違和感でハインは目覚めた。するとノアが手にするモノに、驚き固まっている。
「ノアそれ俺のか──み……、だなん? ンン、なっ……」
はさみと、少しの髪の毛束を手に持つノアに驚くが寝転んだまま起きないハインと、自分の仕出かしたことに驚いたノア。
二人が顔を合わせ、固まっている。
「おっ、おはようございます。ハイン様、これはその……記念?」
「……記念? なるほど……これか」
(よくみると、背のコレもいつ出したのか)
いつもより長い髪を指でネジ巻いているハインを見つめ、固まるノア。そこへゆっくり、顔を引き寄せ口付け笑うハインがいた。
「フフッ、気が緩み過ぎたな。まさか背のコレも見せることになるとは。まぁ、コイツの音は、今の俺を和らいでくれる」
《コポッ……トクン》
「少し、ふくらんだな」
(油断していたとはいえ、翼まで見せてしまった。いい機会だ。切っ掛けが出来た)
微笑むノアをベッドの端に座らすせ、ハインは突然ひざまずきノアの手を取り手甲にキスをした。
そしてノアの瞳を見つめ、深呼吸をしている。
「ハイン様?」
紫の瞳を真っ直ぐノアに向け、顔を覗き込むハインがいる。
手を引かれベッドの端に真っ直ぐに座るノアがハインの顔を同じように覗き込んでいた。
「人間の娘、ノアよ。我は魔王だ。それでも一緒にいてくれるか」
唐突のハインの申し出にノアは、柔らかく微笑むと頷き喜んだ。
「はい!! ハイン様」
ノアの腕を更に引き寄せ、身体を抱えるとハインはノアを膝の上に乗せた。ゆっくり息を吐き、落ち着き髪をわしづかみ強く抱きしめた。
「ハハッ、改めて口にするとアレだな。ルーとは違う何かが込み上がる」
ノアを離すことなく、膝に乗せたまま身体を揺らすハインがいた。照れる自分を隠すようにノアの髪に顔をうずめ、背中の翼は照れるように小さく羽ばたいていた。
(心内をさらすとやはり、スッキリするが……)
「ノア。それから、お前には子供をもっと作って欲しい」
「ええ。良いですよ」
「あとついでに、ルーの子を預けて良いか」
「はい?」
「ルーに子供が出来た。今の腹とは別に兄弟姉妹が出来た。俺の子だ」
「!!!」
「お前の腹に、ルーの赤子を預けたい」
「……はぁ、お腹……」
先ほどまで気分が良かったノアだがハインの言葉にふと、不満を覚える。
「すまん。無礼なのは心得てるが」
「……」
翼を終うことなく羽ばたかせ、ノアを見るハインの笑顔は子供のように無邪気である。
そんなハインを見せられ、ノアは溜息をつくしかできなかった。
「もうっ、ずるい! 私がハイン様にベタ惚れなのを逆手に取られた気分って言うか、逆手に取ってますよね」
「いや、そんなつもりは」
「フウッ。良いですよ! ただし、今まで以上にあしげく通うこと。これが条件と、もう隠し事は無し!! 良いですね」
「ああ、わかった。ノアは恐いな」
「フンッ、魔王の妻です。何か文句お有りかしら」
開き直ったかのように、威張りちらすノアの仕草にハインはおかしく大声で笑った。
「ハハッ。娘、ノアよ。やはり貴様を嫁にしてよかった。嬉しいことこの上なし」
「あっ、貴様とは何ですか。これでも私、怒っているのですよ。あと、今さらですが、コホン。『魔王』というのは気づいてました」
「ほう、そうか。それは俺にとって利点が良い。理解ある娘で助かった」
高笑いするハインの腕に抱かれ、顔を膨らますノアは、呆れるしかないのだが、今は顔を膨らまして気分をそらしておこうと頑張っていた。
「すまん、ノア。だが俺を自由にさしてくれ。いや、自由にさせろ。不便かけるが諦めろ」
「まっ、本性を表し始めましたわ。良いですとも、受けて立ちましょ! いつか私を本命にして見せます」
強気発言のノアに、ますます喜ぶハインがおり、ノアを押し倒すと額を合わせ真っ直ぐ瞳を合わす。
「いいだろう、ではその気にさせろ。待ってるぞ。ノア」
強い口調で、ノアに物申すとハインは、今まで以上に唇を重ね口付けている。
(あっ、コレは今回、俺の負けだ)
子供のようにあどけなく笑うノアが横にいるだけでハインはいつもの苛立ちが止まるのを自覚し、自分が思う以上にノアに惚れていることを確信させられた。
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