両者ともに○○を譲るつもりは一歩もない!③
おはようございます。こんにちは。こんばんは。すみません。前のを改稿してあります。①から読んで頂ければとお願いします。
割れる海に感動したあとに、高々と噴き上がる波を見て声を荒げ笑うオリバーがいる。
「神様、楽しそう」
「楽しいよ。大魔王と魔王の戦いだよ。激しくはならないと思うが力量が見られるのは嬉しいよ。アーちゃんも楽しそうだしね」
二人を見物するオリバーの顔は子どものように笑い、時に手を叩いている。
「本当に楽しそうです」
「お、あと少しで決まるが、酒がほしい」
(こんな美味しいバトルをただ見てるだけはつまらん)
指を鳴らし、ワインが注がれたワイングラスを手に持つと笑いながら飲んでいる。
「おお、決まるぞ! 特大な球体ができると終わりだ。ハインの勝ちっぽいが、さてさて」
陸の上から見物するオリバーが、グラスの中身を飲み干すと同時にまた海が割れた。
「ほう、ハインの勝ちだ。アーちゃんどうするだろう」
指を鳴らし、グラスを片すと大きな拍手を二人に送り海の方を見ている。
「?! ハインが大魔王? それとも」
考えるオリバーの前にアデルを腕にすくい抱き上げているハインが降り立った。
「なんだ、おっさん見てたのか。帰ったかと思うたが」
「派手な戦いではなくても、見るよ。二人が模擬戦以外で闘うところは見ないと」
酒の匂いに気がついたハインはオリバーに舌打ちをする。
「チッ、酒のつまみにされるとは・・・」
「ムフフ、美味しかったよ」
「フン、ますます褒美をもらおうか」
「ヤだね。アーちゃんは大丈夫か」
のぞき込むオリバーはアデルを見た瞬間、安堵と一緒に口を押さえ笑っている。
「なぜ、笑いながら気絶してるの、面白い。アーちゃん、よほど楽しかったんだね」
「・・・・・・そうなのかは分からんが」
地面にアデルを置こうとしたハインだが、その前にオリバーの従者の服を剥ぎ取った。
「なっ、なにをするのです」
驚いている従者にハインは、しれっと言葉を返す。
「ああ、爺の頭にこの布を轢こうと思って剥ぎ取った。すまんな、使わせろ」
「なっ、なっ。なっ」
「ああ悪かった。代わりを与えればいいのだろう」
そっとアデルを置いたあと指を鳴らし、従者に服をあてがえるが、それは蓑の服だった。
従者は、顔を赤らめオリバーを見ると、突然吹き笑われる。
「まぁ、裸よりは、ぷっ。いいのでは」
笑うオリバーに、怒る従者の顔を交互に見るハインは溜息をついた。
「はぁ─────。さすがは爺だ。一発では終わらん上にこんなに魔力を消費するとは思わなんだ」
「ほう、疲れた様子はないみたいだが、疲れたのか」
「ああ、疲れた。おまえ達は呑気そうだな」
「フフ、おかげさまで、呑気に時間を過ごさせていただいてるが」
後ろに手をついて座るハインの横であぐらをかくオリバーが髪を軽くかきむしる。
「ああ、パニシャのことか、アイツがどうした。とうとう逃げ出したか、ん、どうだ」
「!!」
うなずき、悔しそうに髪をかくオリバーの腕を、ハインは止めると真顔で発言すると心配もした。
「オイッ、それ以上いじるとハゲるぞ。おっさん」
発言されたのは、オリバーの髪を心配する暴言だった。
唖然とするオリバーにハインは声を荒げ笑うと腹を抱え寝転んだ。
「おいおい。そんなに心配か、自分の頭が。なんなら髪の毛を分けるか毛根をうめてやろうか? オリバー」
「失敬な。髪ぐらい自由自在だ、ハインと同じで」
「ふうん、そうか。まっ、気を付けることだな。髪ではないぞ、パニシャだ」
いきなり話しを戻されると、オリバーは咳払いをして誤魔化し、気まずそうにハインの様子を探る。
「ハア、母殿の夢は、お告げに近いモノがあったのか」
「母。カノンの夢を見たのか」
「ああ」
哀しそうに笑うハインはアデルを見ると、深い溜息をつき、前髪をかき分け寝転んだままオリバーをじっと見つめた。
「なぁ、おっさんは天使をすべて把握しているのか?」
「全部をか? たとえ千里眼を持ってしても無理だぞ」
「だな。だが、今回の失態をどう問うのか考えている」
「す」
「すまんは無しだ。・・・ここ最近の魔物の変異を裏で操っていたのはパニシャか」
急いで、オリバーの口を紡ぐとハインは仰向けになり空に腕を伸ばし手をかざした。
「おい、おっさん疲れた」
「えっ」
「今は何も考えたくない」
空をつかむように手を広げると、瞼を閉じオリバーにアデルを頼んでいる。
「おっさん、爺をラスクの元に運んでくれるか? 頼む。俺は先に帰る。今、すごく触れたい・・んだ・」
(・・・・・安らぎ。ゆっくりとしたい)
途中で言葉を切ると、指を鳴らしオリバーの見ている前で姿を消した。
困惑するオリバーがアデルを見ると、閉じられた瞼は開き瞳は空の白さを映しこんでいた。
「ハインは跳んだか」
「アーちゃん、体は大丈夫か?」
「痛いよ。決まってるじゃないか、あんな大技をもらったんだよ。タダで済むわけがないよね。オーちゃん」
寝転んだまま、アデルは片手でオリバーの頬を捻じつかみ引っ張る。
「アーちゃん、ごめん。黙ってて」
「ほんとだ。孫の方が気づいて私が気づかないとは、ダメな爺だな」
ゆっくり瞼を閉じ、いろいろと考えるアデルだが、先のやりとりで体が思い通りに動かず寝そべったままである。
(ハイン、お前はすごいな。感知も優れているのか・・・だがそれ故、『大魔王』に腰を据えさせるわけにはいかんな)
「あいつを『大魔王』にはさせん」
「アーちゃん、それは」
「まぁ、戻ってゆっくり話そうではないか。わが孫は?」
「ああ、先に跳んで帰ったがすごいな。ここの結界を破って行くとは」
「力が解放されているんだ。本当はパニシャのことがなければハインを『大魔王』にしてもいいのだが」
「パニシャは追っ手を遣わしているが、どこにいるやら・・・あの時はスキがあったから軽く捕まったがなにぶん狡猾な男ゆえ、いやはやなんとも・・・とにかく帰ろう」
ゆっくりとオリバーの背中にアデルは背負われると身体を預け寝はじめた。
(アーちゃん、ごめんよ。パニシャが幽閉地獄から出るとは思わなかった。私の失態だ)
言われた通りに海氷の通路を使い、ラスクが待つ岸に建つ塔へとオリバーは向かった。
荒れていた海は収まり、雲の透き間から差し込む光りは通路を渡る二人を優しく包みこんでいる。
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