両者ともに○○を譲るつもりは一歩もない!①
おはようございます。こんにちは。今晩はまたお付き合いください。お願いします。小休止をはさみました。
青き城の周辺は、他の者の侵入を拒むかのように先ほどよりも激しく吹雪始めた。建物の青き色が雪に反射し、地面に落ちていく白い粉の色をほんのり青く染め上げていく。
外の吹雪は、ハインの瞳の奥底に燃える炎を沈めるかのように激しさをましていた。
オリバーも、ハインは何かを言い出すと覚悟を決め、話しを切り出していたので黙ってうなずくと、傍らにいるハインとアデルの様子を見ている。
まっすぐに、アデルを見つめるハインの表情は沈んでいた。
「前から考えていたみたいだな。ハイン」
「・・・爺、すまん。あとで話そうかと思っていたのだが・・・」
黙り込むアデルとハインを、オリバーは気づかうどころか両者の頭を軽くはたき笑った。
「では、会合のあとでまた話し合おう。ハインもアデルもそれでいいな」
二人の表情を読み取り、場を仕切るオリバーがいる。
「ああ。では、俺は先に『集いの間』で待つ。爺はまだ、おーちゃんと話しをするのであろう」
「ああ、いいのかね」
「だって、久々だろ? ごゆっくり」
銀色の長髪を揺らし、手を振り去って行くハインを二人は見届けた。
「おまえの孫は強いな。それか何も考えてないだけなのか」
「まぁ、普段から突拍子で、つかみ所のないヤツだが・・・・ 何かを考えているのはうすうすと分かっていた」
「そうか。まぁ、あとで詳しく話すことを今ここで話し騒いでも仕方ないこと」
「ああ、そうだね」
「なぁ、アデル。ハインには、福音を与える価値はあると思うが。どう思う」
姿は見えないが、ハインが通ったあとの通路にオリバーは顔を向けている。
「上げる、上げないは、本来、神が持つモノだから決めるのはオーちゃんが決めればいい。ただし・・・ハインのおかげで今があるのは確かだ」
同時につぶやき嘆く二人は、肩をたたき合うと何かを反省しており、ためらい顔の表情で付き合わせる。
「おまえはよき孫をもらったな」
「娘のお陰だ。その恋人は愚鈍だったが、仕方ない」
小さく息をもらし、哀しげに瞳を曇らすアデルの様子にオリバーは何も言えずに、横で肩を撫でていた。
そんなおり、二人の前に人影が立つ。
「爺ども、しんみりと何をしている。物思いにふけるのは会合のあとにしろ。オリバー、お付きが壁に隠れて待っているぞ。ったく」
「ハイン」
「皆が集まって「井戸端会議」を始めた。神。おまえが遅いのでな。なぜ、俺が迎えになど・・・」
二人が顔を見つめ、瞳をクリクリにして驚き吹き笑った。
「わわ、なんだ。どうした?」
「おまえはなんだかんだでかわいいな」
気を許し、何も考えずにいるハインの顔をオリバーは覗きこむと口づけた。
「!!」
驚くハインに冷ややかな笑みを返し、瞳を重ねると(ニッ)と口の端を上げ笑う。
めったに見せないハインの表情の可愛さもあって口づけをしてしまったのだ、内心はハインにかけれらた呪い『悪魔の接吻』も返せたらと思うオリバーがいる。
「なんのつもりだ。呪い返しなら無理だぞ。そんなに簡単に返せる呪いならかけん」
「うーむ。さすが魔王と言うべきか」
(そう簡単には、返せないか。ふむむ)
考えるオリバーがいる。
「フン、はよう行くぞ。もうろく寸前のじじいども。ごゆっくりと言うのではなかった」
壁の隅で、様子を窺うオリバーの従者を睨むハインに対し、耳元で囁くアデルがいる。
「私もあとでいいから聞いてほしいことがある。付き合ってもらおう。君に拒否権はない」
いつもの口調ではなく、寒々とする声の響きにハインは寒気を覚え、アデルの姿を確認せざるを得なかった。
ずっしりと重く、耳元で放たれた声色もそうだが、アデルの瞳はいつもの優しい瞳ではなく冷たく威厳を放ちハインが知る紫の瞳ではなかった。
(静かに、獲物を捕らえるような瞳。俺が知る爺の瞳ではない!!!)
優しいアデルの瞳が初めて放つ冷ややかな光に、初めて「恐怖」を感じるハインがいた。
思わず後退り身構えるハインにアデルは笑うが瞳は笑ってはおらず、放たれた声は重くのしかかる。
「ホホ、どうしたハイン。身構えて? そんな暇があるならさっさと足を運ばんか」
「ア、ああ。そうだっ、行こう」
普通に聞こえる声色はやはり重く響きハインの調子を狂わしていくが、オリバーはまったく気付かず一緒に歩いている。
「そうそう、アーちゃん。おめでとう、ひ孫が出来るそうじゃないか。尾頭付きの鯛でいいかな」
「ややっ、さすがは神。存じていたか。いや、魚はヤダ。御祝は«健康»が良い。御子ではなく、ノアに・・・」
「ン? 人間のか。まぁ──、アーちゃんが言うなら授けよう。都合は? いつ、伺おうか」
「追って連絡しよう」
会話をするアデルからは、先ほどの威圧感は消え普通に戻ってはいるが、ハインの警戒は止まずそれどころか初めて向けられた「恐怖」によりますます警戒している。
(このあとの起こりうることを想定しておかねばならん。爺のことだから本当に考えあってのことなのだろう)
『集いの間』で、行われた会合の最中も気がおけずハインはアデルばかりを見ている。
「ハイン、そんなに見つめられるとおじいちゃんは照れちゃう」
「はぁ、面が厚いな。この狸じじい」
「ふふ、何のことかな」
「・・・狸じじい・・・」
「ほめ言葉だな」
(ふむ。警戒してしまったか。しかし、そういう気構えをさすためにあえてしたことだ。その緊張の糸を解くなよ。我が孫よ)
笑い、おどけるアデルに気が休まらないハインをよそに、会合は進んでいく。
交わされた条約は前と同じで
魔族側は
「喰わない・飼わない・侵略しない」
以前と同じ規約が設けられた。
天使側は
「争いがない限り」
干渉し合わないという文言を結ぶ。
人間は
「悪い事象が起きない限り戦に結びつけない」
と契りを交わす。
なにも反論も争いも起きずに、三界の会合は終わったのだがハインは、少し悪態をつきつつ文句を言う。
「いつも思うが、魔族は不条理なものを押し付けられる」
「そうだね。まぁ、今までの所業が所業だからね」
「ンン? おい、爺」
アデルのひと言にハインは考え、訝しげな表情をして見せた。
「って原因は私?」
ハインの横でポソッとつぶやくアデルは驚いている。
驚くアデルの表情に、ハインは子どものように吹き笑いアデルの両肩を三回たたいた。
「ああ、そうだ! 狸め。そうかも知れんが俺は面白い」
三人、各々が胸に何かを思い【集いの間】を出て城の外へ向かっている。
あとは『パニシャ』について話し合いをして帰るのみだが、城の庭に出た三人は目の前の光景に驚いた。
それはまるで、会合に訪れた者たちを癒やすかのごとく眩ゆい光景だった。
お疲れさま。ありがとう。です。またお願いします。




