深刻な話しも大事だが朝食も大事
おはようございます。こんばんは。こんにちは。
山ひとつ欠けた景色を眺め、朝陽を浴び、落ち着いた表情を見せるハインはアデルに確認を始めた。
「あのあと、エセ天使は本当に神の手によって幽閉されたんだよな。爺」
「ああ、確かに幽閉したのは間違いはないがあの男のことだ。誰かを操っているのか、それとも信者がいるのかもしれん。カリスマ性は充分な男だったから、もしやもあるね」
「困ったエセ天使様だ」
(万が一、俺の前に出てきたら、今度こそ弔ってやろう。だが、なんだろう。この間の夢を見てから何かが引っかかる)
幽閉されているパニシャだが抜け出し、いつか自分の前に現れるのではないか、という考えが頭の隅から離れず気が晴れずにいた。
アデルは、何かある度に、パニシャに気にかけるハインを心配している。
「もうそろそろか? 三界同盟協議会が開かれるのは」
「ああ、近々に・・・従者はラスクを連れて行こうかと思うが、どう思う」
「まだ、早いと思う。もし良ければ私が同行しようと思うが、どうかね」
「爺が? 珍しいな。ふん、爺が良ければ俺は良いぞ」
「では、私が同行を」
「あっ、ちなみに俺、協議会出ても意見したことないから」
「えっ?」
驚くアデルに、満面の笑みで、ニコニコするハインがいた。
「意見が、ない?」
「フン、ただ規約を守っていただけだ。爺も知っている。会に意見したことは、ない!!」
ハインが言う規約とは、人を
喰わない
飼わない
侵略しない
この三つが魔族に架せられた。
この三つは、アデルも周知している。
「おお、分かった」
(まぁ、確かに無難ではあるが。今回初めて顔を出すから、どんなものか知らない上、様子をみさせてもらおうかね)
少し、不安になるアデルがいた。
バルコニーの席で落ち着いて話す、アデルとハインの足下にいきなりだが、床を這っていたスライムが跳ね出てきた。
「やぅほう。魔王様、元気っち? あっ、アデル様、おひさ~。元気っち?」
「おお、スライムは、元気かね?」
「もっちの論でぇッち。ただ昔の古疵がうずんくんでぇッち」
「ああ、ハインがつけた焼き印だね。ハインが初めて刻紋をつけたのは君だから。まぁ、勲章だと思って上げて。ね!」
「うん、思われてここにいるでぇっち。今日も掃除頑張るでぇっち。ヨシヨシ」
不思議なことに、ハインの城、魔王城に住むスライム達は自我が強い上に、目も口もある。
少し、口達者な風変わりなスライムだが、その分よく働き、よく動く、陽気なモノ達であった。
自分で自分を褒めるスライムにハインは苛立つが、この部屋の掃除はこのスライムしか居らず、苛立ちを抑え深く深く溜息をつく。
「コイツは、少し生意気だ。ムカつく」
「まぁ、まぁ」
横で、ハインをなだめるアデルが、ふとハインの目線が気になり、目線を合わせると空にうっすらと浮かぶ月にあった。
「今、考えると月が一つになった原因は俺だったんだ。今は、天界との扉は海氷の上にあるが、考えると咎めも何も受けておらん。良いのか?」
「おやっ、そう言えばそうだ。何も触れられてない。神も忘れられているのかな」
昔、空に浮く天界とを結ぶ扉、『月光城』を壊したハインは、今更だが、神からも咎め無しで平然と暮らしていることをふと思い微笑んでいる。
「まぁ、良いか。深く考えないで」
「へぇ、月光城か。さぞ綺麗な城だったろうになぁ。僕も、見たかったよ」
バルコニーの二人の元に、朝食を運ぶラスクが、自分の耳に入った「月光城」について、話しを聞きたそうにしていた。
《コト。コトトッ》
テーブルの上にスープの鍋と、二種類のスコーンと、ゆで卵の盛り籠が置かれ、スープを振る舞うラスクがいた。
「なんだ? ノアのところまで行ったのか。すまん」
「うん、鍋ごと持ってきたからたくさんあるよ。「どうせ、お酒をしこたま飲んだのでしょう。ほどほどにしてください。」ってノアから伝言だよ。良いな、ハインは。愛されてるよね」
「フフン! アレも俺のだ」
当たり前のように笑い、スープを飲むハインにラスクはムカつき、ハインの髪をくしゃ撫で、頭に噛みついた。
「おいっ、痛いぞ。ラスク」
「フン、これで痛くなければ槍で突いて上げるよ。ほんと、ノアといいルーといい、こんな男が良いんだからムカつくよ」
「はは、ヤッカミか。悔しかったらシフォンとキスしろ。躰を合わせろ」
「ハインっ。僕は、シフォンとはニョモニョモ」
語尾をごもらし、照れるラスクの頭を、アデルが撫でなだめている。
「ハイン、比べるな。お前が早熟過ぎる。今でも忘れんぞ。ルーちゃんと一緒にベッドで泣いてたのを。コトが・・・コホン」
「アレは、ルーが泣くからつられてって何でそんな昔をまだ覚えてる。あーヤダヤダ、俺もだが、昔を懐かしむコトのネタが豊富すぎる。ったく」
照れるハインが、からかおうとするラスクに気が付き話しを「月光城」に戻し、ラスクの気を引いいているのだがまったく効果はなくおちょくられた。
「まぁ、アレだ。城は美しかったぞ! 今度海氷の城に連れて行こう。デザインは一緒だからな」
「わあぁ、行く。行きたい。そして、ルーとはどうしてそうなったのよ。おじさん。ねっ・ねっ」
「聞くな!」
子供のように照れるハインに、ニヤけるラスクがおり、咳払いをしている。
ハインの、そんな仕草に気づくと、微笑むラスクがいた。
腹を満たしたハインが、アデルに先日の、ルーについての話しに踏み出した。
「して、爺。ルーのコトだが、堕天を免れる法とはいかに」
「ああ、腹の子が形を成さんとまだ無理な話しだが、「悪魔が木の股から」の説原理だね」
「ああ、天授懐妊か」
「その原理で腹の子を移動さすのだが、気をつけんといかんのが、ルーちゃんに依存されたハインの魔力も移動せねばならん。ノアちゃんに負担がかかることを危惧せねば」
「ああ、なるほど。確かに」
深刻に話す、アデルとハインの横で、もりもりと口を動かすラスクがいるのだが、頬張りすぎて、口からゆで卵をポンッと出してしまう。
「卵を口から生むとは器用だな。ラスク」
「ケホッ、おじさんっ。違うよう。ゴクン。そんな。グッんん」
どもり続けるラスクが、テーブルに転がるゆで卵を取ろうとすると、手から滑り落ち床へと転がった。
「あっ」
床に転がるゆで卵を、ラスクは目で追うのだが、次の瞬間、スライムの中に入って行くのを見届ける。
「あっ、僕の卵」
瞳を合わし、ゆで卵が溶けていくのを感じたスライムが少し、気まずそうにラスクに言い放っている。
「・・・ごちそうさまっち」
言い終えると素早く、ベッドの下の隙間に、ツッツーと身を隠した。
あまりの素早さに、驚くラスクの顔が青く引き攣っているのを、ハインが見て吹き出していると、アデルまでも笑い出した。
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