魔王は魔王だが母の話しもするし色々と我慢するときもある
おはようございます。
魔王城は、今日も静かに明るい空の下そびえ立っており、庭では、いつものように悪魔騎士が樹を整え、小さなクーフラが、弓矢の練習をしたりと、魔王城の名には、似つかわしくない穏やかな一日が始まっている。
ベッドの上で静かに寝そべ息を立て、ルーが何やら笑っている。
「フフッ、ハイン、ヘンなの」
(ん? 俺がヘンとは)
傍らに座るハインは、ルーの寝言に驚き、顔を覗くとほくそ笑む。
「フッ、そんなにヘンか? 俺は」
穏やかに寝転ぶルーに、口付けようとハインが唇を近づけると横で大きな咳払いが聞こえる。
「ハイン、そういうことは人目を忍んでやりなさい。まったく」
「止めるな。自由にさせろ」
アデルが、ハインの髪を引っ張り止めようとすると、アデルの顔をわしづかみ睨むハインがいる。
お互いが押し合い、引っ張り合うという小競り合いが起きているにも関わらず、ルーは寝息を立てている。
「二人とも、止めてよ。アデルお爺ちゃん、僕の気を使ってくれているなら大丈夫。もう、慣れてるから、それに僕も、眠いよ」
あくびをし、ベッドの上に乗るとしっかりとルーの胸に顔をうずめ、ラスクは寝始める。
アデルとハインは、ラスクのあまりにも自然な動きに唖然として固まった。
「おいっ、それは俺のだぞ」
「はい、はい。だって眠いンだもの。ハインのケチってそもそもルーの・・・」
(温かいな、ルーは。気持ちいい・・・・でも、今いるこの場の雰囲気が温かい。もしかすると、二人が気持ち良いのかも)
文句を言い終える前に寝つくラスクがいた。
本人が、思っていたより魔力の消耗が激しかったらしく、寝息を立てるのに一秒も、かからなかった。
「フフッ、可愛いね。しっかりしていてもまだ子供だな。寝顔のあどけないことだね」
「そうだ、まだ子供。その子供に俺は期待している」
「やれやれ・・・この部屋。まだ、取っておくのか? もういいだろう」
部屋を見渡し眺めるアデルの溜息は深く、本棚、机、その他の置いてあるモノに一通り手を触れた後、悲しいそうにハインを見つめる。
「・・・・爺。許せ、まだ置いておきたい。それに、この部屋はまだ使える。良い隠れ蓑になる」
「そうか・・・」
指を鳴らし、アデルを見るハインの手に、ワインが二本召喚され、その内の一本をアデルが受け取る。
「カノン・・・か。お前の母、私の娘と同じ名のワイン・・・」
「グラスは要らないだろ。母と同じ名というだけで気に入っている。もっと良いワインが欲しいならそちらを出すが」
「いや、これで良い。我が娘の部屋でいつもコレを飲んでいるのか? マザコンだと思われるよ。ルーちゃん達に知れると」
「いいさ、部屋をそのまま、書斎に使ってる時点でもう思われてるかもな」
瓶に口をつけ、飲み始めると同時に部屋を見渡すハインの瞳は憂いでおり、どこか昔を偲んでいるように見え、アデルも黙って瓶に口をつけワインを楽しみ始めた。
「母は、俺を身篭もった時のことを楽しく話していた。そして、俺のクソ親父のことも」
「あの子は、心底お前の父に惚れとったからね。まぁ、その男の手によって死してしまったが・・・」
「三界同盟が無ければ殺したい」
「また、物騒なことを。だが、それは私も同意だね。ハイン、よくここに残り魔王を継いでくれた。ありがとう」
「よせ、爺は俺にとって良き父も同然。それに、あの腹黒天使が父だと思いたくない! あのエセ天使!!!」
床に座り、ワイン瓶を叩きつけているハインの周りには、無数の瓶がカラコロと音を立て転がり、驚くアデルがいた。
「ハイン、いつの間にそんなに? 身体壊すよ?」
「そんなヤワじゃ無い。それよりも、爺。最近、人間を襲う魔物が多過ぎる。後ろで糸を引いているヤツがいるのだが。わかっているな」
「ああ、そのことだが。それは」
言葉に、躊躇するアデルにハインは鼻で笑うと、ベッドの上に寝転がる二人を見て、確信しているかのように話す。
「俺のクソ親父だ・・・ そして、俺の子を知ったらあいつは」
母が、死した原因を考えるハインは、気落ちするしかなく、その原因を知るアデルも、暗くなるしかなかった。
(フンッ、クソ親父。また«野望»に満ちているのか? 天使なのにクソ親父の方が余程、魔王に向いているな)
ワインを飲み干すと、次のワインを出し飲むのだが、怒るハインの波動を受け割れ、床にある瓶も次々と割れていく。
「ハイン」
「クッ、本当にクソほどしか価値の無い天使だ。あのような者をなぜ神は生かすのか?」
ワインがこぼれ、浴びるハインの身体はまるで血が滴り落ちているかのように見え、心情を表していた。
(フッ、まぁいい。いつか弔ってやるさ。俺は魔王だ。誰の指図も受けんが・・・今は)
立ち上がリ、ベッドのルーに口付けを交わすと、ハインはバルコニーに出て外を眺めた。
風景を楽しんでいるかに見えた矢先、山一つ吹き飛ばし笑っている。
(ああそうだ、今は我慢も必要だ。そうだろう?)
自分に問いかけると、何かが吹っ切れた笑顔で壊した山を見つめ、何かに思い馳せるハインがいた。
陽の光りがハインに当たると清々しい顔がそこに在り、アデルもまた横に立つと一緒に陽を浴びている。
「もう一本いくか」
「ああ、貰おう」
二人は静かにワインを飲むといきなり手に持つワインの瓶を互いに打つけ割り合った。
砕ける散る瓶の向こうでは夕日が沈む。
笑い合い、互いに思うことを言葉にせず睨み合う二人の顔に陽が当たると暗く陰リ、夜を迎えよとする空があった。
ありがとうございます。本当にすみませんでした。たびたびご迷惑をすみません。




