大人のわがままに子供を振り回すなんて困るなぁ
おはようございます。こんばんは。こんにちは。
白い屋敷で、ラスクはノアと共に食事を済ませ魔王城に帰ろうしていた。
ノアのことが、気になるラスクは帰る前に、グレイを呼びつけあることを頼んでいる。
「ラスク。珍しいですね。あなたがこの私に頼み事とは」
「うん、ごめんよ。おじさんの所に行こうと思うんだけど、今のノアを一人にしたくないなと思って……お願い出来る?」
「いいですよ。ノア様の相手。私で良ければ……ただ、ハイン様の場所をご存知なのですか」
「うん、悪魔の瞳で確認したよ。城から出てないよ」
「えっ? では、どちらに」
「それは内緒」
ラスクは、自分の唇に指を押し当て、グレイにウィンクをしている。
「内緒っ……」
どもるグレイがラスクにハインの居場所を知りたそうにしているが、気付いたラスクが黙って首を振る。
「ダメだよ。グレイに知られて良い場所に居るなら、そもそも隠れないよ。でも、言わずに隠れていると言うことは知られたくないんだ。たぶん、もう僕のことは気付いてるよ」
とても、子供とは思えない、落ち着きを見せるラスクがいた。
この落ち着きと、行動にグレイは喜ぶ。
「ラスクは本当に成長してます。魔法も私以上に、私の悪魔の目を持ってしてもわからなかったのに」
「いやぁ、悪魔の目はもしかしたら僕が、人間だからじゃない? ハインがわざと見せているのかも。同族には隠したいことがあるとかは?」
「!!!」
「ほらね。思い当たることがある」
少し、溜息をつくと聖槍を手に召喚し、床に突き鳴らした。
「じゃっ、頼むね。グレイ」
床に、突き鳴らした聖槍により足下に円陣が出来るとラスクは姿を消した。
行き先は魔王城である。
見送るグレイの後ろに、ノアが息を切らしながら走ってきた。
「ノア様、走っては駄目です。お腹の御子が」
グレイはノアを叱るが、物怖じせずに微笑むと手に持つ菓子箱を差し出しゆっくりと話しだした。
「ハイン様の所に行くなら、はぁ……お願いしようと思い。ンゥ……走ってきたのですが間に合いませんでした」
「それは?」
両手で大事そうに抱えると、満面の笑みで答えノアが箱のふたを開ける。
グレイの鼻にはほのかに、甘い匂いがただよう。
「マフィンを焼いてました。ハイン様もルー様も大好きなお菓子。お渡ししたかったのに、遅かったです」
「ほほう。マフィンを……」
(確かに、あの二人の大好きな菓子です。ノア様、あなたは本当に優しいです)
「ハイン様には、本当に勿体ない………」
「あら? では二人で食べますか。スクリュームも手伝ってくれたのでたくさんあります」
中のマフィンを見せ、グレイをお茶に誘うノアが微笑む。
「フフ。いや、そういう意味で話したのではなく……」
「ん? なぁに」
「私のところへ嫁に───きませんか?」
「まぁ、ご冗談を……面白いことを言うのね、グレイ。ふふふ」
真顔で話すグレイが、驚くことを口走るがノアには相手にされずにいた。
(ポロッと出てしまいましたが、本心です。そしてふられましたか──早い失恋ですね)
笑顔で答えるノアには、冗談としか伝わっておらず、本心だと気付かれずにフラれるグレイの姿があった。
「ささ、ではいただきましょう。あと何か羽織ってください」
着ていた上着をグレイは脱ぐと、優しくノアに羽織り、肩を抱き寄せ奥へと歩いて行く。
「ラスクの成長はすごいのね。この子も、あんな風に成長するかしら」
「ハイン様の御子ですから、グレるかも知れませんよ?」
「あら? ありえますわ。困ったわ。ふふ」
ふくらみがまだ目立たない、薄い腹をさするノアが微笑んでいる傍らでは、まるでノアを祝福するかのように蝶々が飛んでいた。
(魔王の子を宿すのに、白妖精の祝福を受けるとは、不思議な娘よ)
「良き御子でありますように」
ノアの耳元で囁くグレイがいた。
魔王城に着いたラスクは、ある一室の前で佇むと、髪をかきむしり溜息を深くつき、ぼやいている。
「ったく、おじさんしっかりしてよ」
扉を開けるとそこは、空間が歪み行き先が視えず、風の渦が練り上がり吹いていた。
「ほんと、大人の我が儘に子供を振り回さないでよね」
目の前の空間の歪みに、ラスクが足を踏み入れると姿が吸い込まれ消える。
歪みに身を任せるラスクが足先に床を感じると聖槍の軸先を床に二回打ち鳴らした。
「ほんと、おじさん。大丈夫?」
自分の足場を確認したラスクは聖槍を持ち構えると、槍先をハインに向け、口調強くぼやくと睨んでいる。
「フッ、来たのか。早かったな」
「おじさん、僕が“目”を使っているの解ってたでしょ。あえて僕を呼んだよね」
「お前の成長がうれしいな」
ハインは眼鏡をかけ、本を片手に持ち何かを調べているようだった。
「ああ、そうかも。呼んだかもしれんな。気が付かずに」
本を落とし、両手で髪をかきあげ、机に腰かけるハインの姿は気落ちしているように見え、いつもの覇気が感じられず、不思議に思いラスクは心配そうに尋ねる。
「おじさん?」
返事はなく、やはりハインは気落ちしているらしく、姿勢もそのままでラスクを見ようともしない。
ハインに怒られ、攻撃を仕掛けられるかもと、気構えていたラスクがベッドの上に横たわる影を見つける。
影は、もそもそと動き、起き上がろうと身体を踏ん張るがすぐ倒れ、無造作にその上に転がり、ラスクに微笑み、名を呼ぶとそのままベッドに崩れ落ちた。
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