俺抜きで歓迎会……そうですか②
おはようございます。今晩は、こんにちは。
レインが遅れてやって来た。
「はーい。ごめんなさっい。これ、お土産♪ で今日の主役はどこかな?」
レインが持って来た土産は、鶏が三羽、しかも脚が紐に縛られ、羽ばたき動いている。
「ちょっ、レイン! 普通こういう時は、調理済みとか、お菓子、飲み物。その場で食べられる物だと思うの」
ルーがレインの大雑把を指摘している。
「大丈夫、ルー様。これは」
「これは?」
「飼いましょう!」
ノアが真顔でルーに話している。
「だって、料理は揃ってますから、敢えて殺す必要もありません。朝、卵を頂きましょう」
ノアの頭には、朝の採れたて卵が想像されていた。ルーは、ノアの頭の中を読み取り少し吹き笑う。
「お? ノアちゃんがいいなら僕は良いよ。ただし、今度からはきちんと考えてよね。レイン」
「は~い♪ で、主役は? エロガキはどこですか。あんの、エロガキ。この間もお尻にブスっとされたんだよね」
レインが探す中、誰もラスクについて答える者がいなかった。
「あれっ? グレイがいる。ってことはエロガキも一緒でしょ」
レインが、グレイを見つけ歩き出そうとすると足下に何かが絡み転けてしまう。
「プッギー☆!」
「いたーい」
レインの言葉に合わさり、可笑しな鳴き声がする。
「プッギー? って何。それに、下が柔らかい。何の感触」
レインが下にあるものを見るとピンクの子豚が轢かれていた。
「わっ、可愛いね。何なに、ノア、ピンクの子豚飼い始めたの?」
「プギ。ピギッ」
ノアとルーは、顔を合わせ黙り込む。
すると、グレイがふらふらとレインに近づくが、様子がおかしく、手にはワインボトルを二本持っている。
「嘆かわしい。私の指導不足です。どうして、そんな……」
グレイは、ぐずりながらワインを口にする。
「ええとね、グレイ。椅子に座ろうね。ごめんなさい。まさかあんな立て続けに起こすとは思いもしなくて」
グレイはルーに、椅子を宛がわれ座るとワインを飲み出した。
「えー、グレイどうしたのかな? もう出来上がってる上に泣き上戸だよ」
ノアとルーが声を合わせレインに話す。
「そのピンクちゃんがラスクです」
「そのピンクちゃんがラスクなの」
子豚を抱きしめるレインが、驚きのあまり放り投げる。放り投げられた子豚はグレイの膝に落ちるとグレイが泣き出した。
「不甲斐ない。幾ら事故とはいえノア様とルー様のお尻と胸を鷲ずかむとは。ラスクはまったく」
「ごめんなさい。グレイ、まさか一日で三回の限界を越すなんて思いもしなかった」
落ち込むグレイをルーが慰めている。
「えーと、これは呪いなの? 触っていても何も感じなかったんだけど」
「僕が、かけました」
ルーが、申し訳なく話していると、レインが大声で笑い子豚を抱き上げる。
「ハッハー、もうなになに、そんな面白いことしたの~。でこれはいつ解けるの?」
「プギプギ☆」
「明日なの」
ルーが、困り顔で話すと、レインは子豚を胸の谷間に挟み突いている。
「ふうん♪ さすが天使の呪い。匂いも感触も何も無し。色が可愛いだけの豚だよ。凄い」
「あっ、うん。褒めていただいてうれしいけど、一応今日の主役なんだよね」
黙り込む三人と、隣で泣き止まずにいるグレイがいる。
そこに、ハインがやって来た。
グレイの有様を見て驚いている。
「どうしてこうなった? グレイは飲みすぎると泣き止まない」
「うん。僕は知ってたんだけど、原因は僕にもあるんだよね」
ルーとノアの困り顔を見た後、ハインはレインの胸の子豚を見やる。
「おお、ラスク。愉しそうだな。俺も用事がなければ参加したいが……」
「あれっ、ハインよく見ただけで解ったね。私、分かんなかったのに」
「俺を誰だと思っている。どうせ、ルーの呪いだろ? レインもまだまだだな」
レインの胸の谷間に挟まる子豚の鼻を、指で突いているハインがいる。
「呪いが解けるのは、明日のこの時間だろ」
「よく分かるね。ハイン」
レインがハインを感心している。
「レイン~。俺もそこまで馬鹿ではないよっと、本題、本題」
ハインは、グレイに用事があって来たのだが肝心のグレイは酒乱である。
「グレイの捺印で俺の仕事は終わるんだが、この有様か……困った。多数決案で、どうしてもグレイの捺い……いっか。勝手に押しちゃえ」
「ええ。それって、魔おおおお」
ハインが、すかさずレインを睨み言葉の腰を折ったので語韻が伸びた。
「後はこっちか」
ハインは指を鳴らし、ラスクを子豚から人に戻しニヒルに笑う。
「はわぁ。豚はキツいよ」
「おおっ、ハイン、さっすがッ」
声を高らかと上げ、ハインを感心するとレインは、抱きかかえるラスクを見た。
安心するラスクは顔を緩ますとレインの胸に頭を乗せ身をやすめる。
次にハインが取った行動はグレイを酒乱から、戻すことだった。グレイを戻さないと自分が城に戻れない。
「グレイを酒乱から戻すのには、この方法しかないのがちょっと」
ハインは、グレイを戻すため、水を手に取った。
「普通に魔法で治せないの?」
ルーがハインに尋ねた。
「魔力の質の所為か解らんが、俺が外から施す治癒がこいつには効かん。だから」
ハインは水を含むとグレイに口移しで水を飲まし、治癒魔法を注入している。
見ているノアは顔を赤らめ、ルーは苦笑いをし、レインは口笛を吹いている。
ラスクはレインに首を持たれ、ぶら下がって様子を窺い照れている。
「ん……オイッ、グレイ、起きろ。ほら」
グレイの口端から水が垂れ、ハインは仕切りにグレイの頬を叩く。
「ん、ハッ!」
目を覚ますとグレイは口を拭い、辺りを確認している。
「目付けがハメを外すとは、折檻だな」
ニタァと笑うハインがグレイの目の前におり、慌てるグレイが椅子から落ちた。
「ハハッ、いいもん見られた。ラスクのお陰か、この間の「お尻、プスッ」は赦そう」
「ありがとう、お姉さん、僕も今回は気を付ける」
レインは高々に笑い、レインに首を持たれ、ぶら下がるラスクは、今回は懲りたらしく反省している。
「ラスク、「今回は」か。らしいな。だが、お前も俺に貸し一つと言いたいが、利子を付けて貸し、十倍にしとくからな。返せよ」
ハインは、満面の笑みで二人を見ると、指を鳴らし魔王城へと戻って行った。
「まっ、ともあれ歓迎会を再開しましょう。ラスクもお腹空いたでしょ? たくさんあるから食べましょう」
ノアの一言で、皆が気を取り戻し歓迎会の続きが始まった。
足元の鶏が、声を上げていると傍らの雌鶏が卵を産んでいる。
「ノア、僕。目玉焼き食べたい。半生で」
ある意味、懲りてない様子のラスクに、一同は笑いあった。
ハイン抜きで、歓迎会は楽しく弾み一日が終わる。
だが、ハインの折檻のことを考える悪魔大神官グレイは少し暗くなるのであった。
お疲れ様、ありがとうございます。




