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雑記録  作者: 鱈井 元衡
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命が重すぎる

 人間の命が重すぎて、苦しい。

 そりゃ確かに人間の命は何かに比べたばあい、あまりに軽すぎる。泰山に比べれば、羽毛のようなもの、というたとえもあったか。人間の命は簡単に失われる。簡単に奪われる。奪う奴がこの世に多すぎる。

 ところが一度人間の命は大切に扱おうとすると……これが重すぎる。人間の関係、これは非常に得難いものだ。家族とか友人とか、どう付き合えばいいか、どう距離を保てば、僕には昔からよく分からずにいる。

 ああ、薄いな。そう感じることが二度や三度ではない。これほど薄い関係しか持てない僕は罪深いなと、自ら嘆いてしまう。


 多分、常人なら違うんだと思う。精神構造から違う以上、彼らのようにはなれないのは仕方ない。けれど、状態が死ぬまで続くと考えると、やはり恐怖を感じる。

 命は重い。決して軽く扱っていいものじゃない。それなのに、僕が誰かと向き合う時、僕は知らず知らず『軽い』感じで接している。どうせ、すぐに別れる運命だから。どうせ、忘れ去られるから。無意識におもっているのかも。

 けど、本当なら相手にどれほど深くぬかずいてもおかしくないのだ。相手を心から大切にしたいのなら、もはや僕にはそのために何をすればいいかわからない。わからないせいで、もう頭を下げ、


「好きなようにしてください!」


 と叫ぶほか手段がないような気がする。人間は他者に対しては『我』を捨てねばならない。

 他者は常に丁重に扱わなきゃ。自分に対する行為は全て甘受しなくちゃ。

 そうしてこそ、人間なんだ――と、自分を追いつめ、苦しむ。

 やってられっか? ああ、糞が。


 いっそ、そんな高潔そうな気風とは一切無縁な破廉恥漢でいたかったよ、僕は!

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