↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナイトメアハザード  作者: せっさ 拓馬
63/68

第63話 死闘始まる

ガーベンは不敵な笑みを浮かべ、俺を頭のてっぺんから足元まで凝視した。


「いいだろう。その身で我の恐ろしさを感じるがいい」


そのとたん、ガーベンの姿が消えた。

俺は慌てて周りを見回した。

いない!

どこにも姿がない!


だが、気配だけは感じる。

右か!

感覚を信じて、とにかく脇へと避ける。

そのときにガーベンが俺のいた場所に現れていた。

そのまま勢いよく右手をスイングする。

丸太のごとく太い腕が俺の顔のすぐ横をかすめた。

髪が千切れて飛び、風圧で頬がへこむ。


「くあっ」


俺はあわてて後ろへ飛び退いた。

それを予期していたガーベンの動きは素早かった。

右足で大地を蹴るとダッシュして俺の方へ一足飛びで駆けた。

目の前にガーベンの顔が大写しになった。

奴の息遣い、飛び散る汗、生臭い息まで感じられる近さだ。

ガーベンの口元が少し上にあがっていた。

余裕の嘲笑だった。


俺がそれを見て取ったとき、頭が割れるかのような衝撃がかかった。

ガーベンが俺の額に頭突きをかましたのだ。

俺はそのまま吹っ飛ばされた。

体ごと地面を擦らせながら、大地を為すすべもなく転がった。

全身を岩に打ちつけられて、俺はその場で惨めに伏した。


「なんとも張り合いのない。これなら勝負にすらならんな」


ガーベンがその場で俺を見下した。


「もう少し楽しましてくれ。そばの女も死なないと本気になれないか?」


都リーダーだけでなく、和泉まで亡き者にする気か!

許せない。

俺は怒りが全身を駆け巡るのを感じた。


「貴様ああああっ!!」


俺は全力でガーベンに向かって走り出した。

拳に力を込める。

地面を蹴り、全身全霊を込めて一撃を繰り出した。


ガーベンはその場を動きもせず、ただ両手を突き出した。

俺の攻撃はガーベンに確かに命中した。

ガーベンの左足をえぐり、そこから赤い肉が見えている。

ガーベンはバランスを崩して、片膝をついた。


今がチャンスだ。

俺はさらなる追い打ちをかけるため、全力でパンチを繰り出した。

頭一つ分低くなったため、攻撃がし易くなっている。

俺は無我夢中でガーベンという的に連続で攻撃を食らわせた。

顔、胸、腹、肩など、目に付いたところすべてを打ち続ける。

現実と違って、おもしろいように自分の手が素早く動き、次々と狙ったところにヒットしていく。

度重なるパンチ攻撃に、さすがのガーベンも苦悶の表情になった。

「ぐべべべっ」とうめき声を漏らす。


自分の手がコマンドで決められた必殺技をなぞるかのようにイメージ通りに動く。

むしろ体がイメージが追いついておらず、後追いになっている動作にもどかしさを覚えるほどだ。

次々と決まる攻撃にガーベンは、目をつぶり体を固めるばかりだった。


勝てる!

俺がそう認識したときだった。

いきなりガーベンの赤い目が見開かれた。

眼球もない、ただの赤いすじ状の目が俺を睨みつけた。

それは目だけで俺に殺気を投げかけた。

思わず俺は飛び退いた。

本気で殺されると動物的本能で感じた。

その瞬間、目から赤い光線が放たれ、俺の左肩を貫いていった。


「ぐあああああああ」


俺は肩を慌てて押さえつけた。

完全に肩の神経が切れていて、動かすことすらできない。

俺は必死に意識を集中させ、肩を治すことに集中した。

その間にガーベンは体勢を整え、今まで俺が与えたダメージもゆっくりと回復していた。


「なかなかに面白い。これほどの攻撃を受けたのは、この世界では初めての体験だったぞ」


ガーベンは口元を上げ、肩をかばう俺を見た。


「やはり能力者同士の戦闘はこうでなければな。あっと言う間に片が付いてしまえば、せっかくの戦いの興奮と緊張感が興ざめだ」

「ずいぶん余裕かましているじゃないか。俺にあれだけ攻撃をくらわされたのにな」


俺も負けじと余裕がある振りをしながら答えた。


「そんな大口を叩けるようなら、まだまだ大丈夫のようだな。では、更なる段階に入るとしよう」

「段階、だと?」


俺は思わず聞き返してしまった。


「この攻撃は本来の俺たちの方法ではない。お前たち種族を参考にして、そのスタイルを真似たものに過ぎない。だから、我々が戦闘態勢に入ったときの戦い方を見せてやる。お前の健闘を称えて、あえて本気の戦い方を見せようというのだ。名誉に思うがよい」


そう言うなり、ガーベンは両手を地面についた。

言わば、ワンワンスタイルになったわけだ。

四つんばいになったガーベンの角が前面につきだされた。

大きく下半身を上げ、後ろ足を伸ばし、いつでも駆け出せる体勢にしていた。


「これが我々種族が戦い合うときに見せる行動だ。この体勢での戦いは互いの生死を賭けた神聖なのものだ。その流儀に従ってもらうぞ」


ガーベンはそう言うと、四つんばいの体勢のまま襲いかかってきた。

早い!

狼が獲物めがけて食らいつくかのようだ。

ガーベンが俺に体当たりをかけてくる。


俺はとっさにジャンプした。

だが、それはうかつな行動だった。

ジャンプするということは、真上にただ飛び上がる行為だった。

当然ジャンプ中は無防備になるのだ。

ガーベンはジャンプした俺めがけて飛び上がってきた。

獣顔のガーベンが俺の肩に噛みついた。

そのまま、肩の肉を食らいつく。

俺は悲鳴を上げた。


リアルじゃないから、血は出ない。

だが、肩は完全に咬み千切られた。

ガーベンは噛みついたまま、顎を左右に動かした。

肩が引き裂かれる激痛が全身に伝わる。

あまりの痛みに俺は絶叫した。

ガーベンはぶちぶちと俺の肩の筋を力ずくで引きちぎった。

そのまま、左肩がもぎ取られ、赤い肉片と化した。

もぎ取られた肩を一考だにせず、ガーベンは地面に投げ捨てた。

俺は絶望の中で思った。

生きたまま食われるってのは、こういう感覚なのだ、と。


「どうだ? これが本当の戦いだ。今までのは遊技に等しい」


獣顔のガーベンが耳まで裂けた口から言葉を発した。

俺は地面に横たわりながら、言葉を聞いていた。


「我は宣言する。これよりお前の四肢を引きちぎる。最後は首を咬みきり勝利の証とするのだ。我が戦いの名誉は、これをもって成し遂げられるであろう」


ガーベンは高らかと勝利宣言を行った。


「そう、うまくいくと、思って、いるのか?」


俺はあえぎながら、片言で言った。


「すばらしい! それでこそ挑戦者だ。この程度で戦意を無くすぐらいなら、我は戦闘態勢など見せはしない。」


ガーベンは満足したようにうなずいた。


「抗(あらが)えよ! それこそ我が勝利を引き立てる香辛料(スパイス)となろう」


ガーベンは再び戦闘態勢になった。

俺はふらつく足で地面に立った。

何とか左手を戻さなければ、このままでは不利だ。


俺は手の落ちている地面を横目で見た。

ほんの数メートル先だ。

行ける。

すぐに手を戻せば、まだ間に合う。


俺はガーベンに向かって駆けた。

右手を突きだし、ガーベンの正面からの角攻撃をあえて受ける。

手が切り裂かれるのをもろともせず、俺はガーベンの角を掴み取った。

そのまま、ガーベンもろとも勢いを利用して投げ飛ばすイメージを浮かべた。


イメージ通りだ。

勢い余ったガーベンは、俺に角を捕まれてバランスを崩している。

もんどりうったところを俺は勢いに逆らわず、ガーベンの角を支点にして、そのまま遠くまで思いっきり投げとばした。

作用点になったガーベンの体は浮き上がり、十数メーター離れた場所まで吹き飛ばされていた。


今だ!

俺は地面に転がされている腕を見た。

今のうちにそこまで行って手を繋ぎ合わせる。

ダッシュでその場を目指した。

全力を出した数歩でたどり着く。


手を取り、正しい位置に付けようと接着面を合わそうとした瞬間だった。

俺の右足に鋭い痛みが走った。

見た俺の目には、俺の右膝に噛みつくガーベンの姿があった。

理解できなかった。

確かに投げ飛ばしたはずだ。

なぜ、ここにいる。

俺の瞬時の邂逅が、運命を分けた。

ガーベンはそのまま俺の右足を噛み潰した。

絶望の叫びとともに俺は、自らの敗北を悟った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。