第60話 守る場所を作る
自衛隊が去った直後から、ホームセンターは慌ただしく動き始めた。
日没までに残された時間は、三時間ほど。
雑木林の巣には、目視できただけで二十体を超えるゴブリンがいる。
自衛隊が翌日に掃討作戦を行う予定だとしても、今夜の安全が保証されたわけではない。
巣にいるすべての個体が、雑木林へ留まっているとも限らなかった。
「完全に侵入を防ぐのは無理だ」
店舗入口の前で、英樹が全員へ告げた。
駐車場の簡単な見取り図が、裏返した段ボールへ描かれている。
「今日一日で要塞を作れるわけじゃない。だから目的を間違えるな」
英樹は外周フェンスを指さした。
「早く見つける」
「時間を稼ぐ」
「中へ入られた場合に、どこで止めるか決めておく」
「それで十分だ」
「十分なんですか?」
木村莉奈が不安そうに尋ねる。
「十分にするんだ」
英樹は迷わず答えた。
「侵入できない壁なんて作れない。壊されることを前提に、その次を用意する」
家の窓や扉とは違い、ホームセンターの敷地は広い。
すべてを同じ強度で守ることはできない。
正面入口。
搬入口。
外売り場。
資材館。
従業員用出入口。
ゴブリンが入り込める場所はいくつもあった。
「まず、守る範囲を狭める」
佐伯が続けた。
「外売り場と駐車場は、夜になったら放棄する」
「放棄するんですか?」
田島明美が驚く。
「ああ。商品を守って人が死んだら意味がない」
佐伯は店内を振り返った。
「夜間は店舗棟と資材館の一部だけを守る。外へ出るのは、火災か避難が必要になった時だけだ」
ホームセンターには、まだ多くの商品が残っている。
苗。
肥料。
工具。
木材。
園芸用品。
それらをすべて守ろうとすれば、人員が分散する。
「入口は一か所に絞りましょう」
誠が段ボールへ線を引く。
「正面自動ドアは使わない。従業員通用口を普段の出入口にする」
「正面は商品棚とパレットで塞ぐ」
英樹が頷いた。
「ただし、完全に固定はしない。火事になった時に、内側から動かせるようにする」
「逃げ道は?」
「資材館側と、屋上へ上がる階段を残す」
閉じ込められてはいけない。
守ることばかり考え、逃げ道を塞げば、火を使われた時に全滅する。
「ゴブリンが火を使えると思いますか?」
大森隆志が尋ねた。
「分からない」
英樹は答えた。
「でも、人間の家からライターや道具を持ち去っている。使えないと決めつける理由はない」
誰も反論しなかった。
ゴブリンは取っ手を動かし、扉を開けようとした。
弓や石器も使う。
人間の道具を見れば、使い方を覚える可能性もある。
「作業を分けよう」
佐伯が声を張る。
「日が落ちるまでに、できるだけ進める」
◇
外周フェンスの補強は、英樹と田島が中心になった。
既存の金網へ、外売り場に残っていた園芸用のワイヤーメッシュを重ねる。
下部には単管パイプを横向きに固定し、持ち上げられないよう重いブロックを置いた。
「登ってくるなら、上に何か付けた方がいいんじゃないか?」
田島がフェンスを見上げる。
「有刺鉄線は残っていますか?」
英樹が佐伯へ尋ねた。
「農業用のものなら少しある。ただ、全部のフェンスへ張れる量はない」
「角だけでいい」
ゴブリンは、人間の子供ほどの大きさだ。
身軽なら、金網をよじ登ることも難しくない。
有刺鉄線が足りない場所には、園芸用支柱を斜めに固定する。
鋭く突き刺すためではない。
手を掛けにくくし、乗り越えるまでの時間を増やすためだった。
「ここ、緩んでます」
悠真がフェンスの継ぎ目を指した。
一見すると問題はない。
だが《鑑定》では、固定金具の一部が腐食し、強い力を受ければ外れる可能性が表示されていた。
「どこだ?」
「この金具です」
英樹が手で揺らす。
僅かに動いた。
「よく気づいたな」
「前に資材を運んだ時、少し曲がってた気がして」
悠真は、ホームセンターで働いていた経験によるものだと説明する。
嘘ではない。
能力がなくても、何度も通っていた場所だからこそ違和感を持てたかもしれない。
ただ、確信できたのは《鑑定》のおかげだった。
「交換する」
英樹はすぐに新しい金具を取りに行った。
悠真は次の場所へ視線を移す。
劣化したロープ。
重さに耐えられない棚。
雨で腐食したパイプ。
使える物と、危険な物。
《鑑定》を使えば、見た目では分からない差が表示される。
「悠真」
後ろから美咲に呼ばれた。
振り返ると、二本のロープを抱えている。
「こっちを使うんでしょ?」
美咲は右手側のロープを差し出した。
「どうして分かったの?」
「左のロープを見た時、すごく難しい顔をしてたから」
「そんなに顔に出てる?」
「私には分かるよ」
左側は、見た目こそ新しい。
だが、長期間直射日光に晒され、内部の繊維が劣化している。
右側の方が安全だった。
「助かる」
「次は何を見ればいい?」
「外売り場のブルーシート。破れてない物を集めたい」
「分かった」
美咲は詳しい理由を聞かなかった。
悠真が《鑑定》を使っていることに気づいている。
それでも、周囲に悟られないよう自然に手伝ってくれる。
秘密を知る人が一人増えた。
それだけで、能力を使う時の負担が少し軽くなっていた。
◇
正面入口では、誠、佐伯、大森たちが商品棚を移動させていた。
空になった重量棚。
木製パレット。
園芸用の土が入った袋。
簡単には動かせない物を組み合わせ、正面自動ドアの前へ二重の障害物を作る。
「詰め過ぎないでください」
英樹が遠くから声を掛ける。
「人が一人通れる隙間は残す」
「塞ぐんじゃないのか?」
元警備員の七十代男性が尋ねる。
「普段は板で閉じます」
英樹が答えた。
「緊急時には外せるようにします」
「そんな隙間を残したら、化け物も入ってくる」
「全部塞いだら、火を付けられた時に逃げられません」
「火を付けるなんて決まってないだろう」
「付けないとも決まっていません」
老人は不満そうに口を閉じた。
以前なら、その態度に苛立つ者もいた。
だが今は、慎重な意見そのものが悪いわけではないと皆が理解し始めている。
「では、脱出用の隙間が簡単に開けられないよう、内側から閂を付けましょう」
誠が間へ入る。
「平時は固定。避難時だけ外す」
「子供が触れない高さにする」
老人も、しばらく考えてから頷いた。
「それならいい」
反対意見を封じるのではなく、安全策へ変える。
それが誠の役割だった。
◇
大森は田島と共に、電源設備を確認していた。
外売り場に残っていた小型太陽光パネル。
防災用品として販売されていたポータブル電源。
自動車用のバッテリー。
発電機。
使える物を一か所へ集める。
「発電機をずっと動かすのは無理です」
大森が説明する。
「燃料を使うし、音も大きい」
「昨日は、その音で魔犬を呼んだ可能性もある」
田島が苦い顔をする。
「必要な時だけだな」
「普段は、この蓄電池から警戒灯へ回しましょう」
大森は小型のLED作業灯を見せる。
「外周全部は無理です。でも、入口と搬入口なら短時間照らせます」
「点けっぱなしにはしないのか?」
「暗い場所に目を慣らした方が、見張りは動きを見つけやすい」
「何かが警報線へ触れた時だけ照らす」
暗闇に潜む相手へ、こちらの位置を教える必要はない。
「照明のスイッチは一か所?」
「二か所にします」
大森は店内事務所と、入口近くの警備場所を示す。
「どちらかが使えなくなっても、もう一方から点けられるようにする」
「電気工事士が来てくれて、本当に助かったな」
田島が率直に言う。
大森は一瞬、驚いた顔をした。
避難者として助けを求めて来たばかり。
まだ、自分が受け入れられたという実感が薄かったのかもしれない。
「役に立てるなら、何でもします」
「無理はするな」
田島が笑う。
「ここじゃ、無理した奴から倒れる」
「それは昨日、嫌というほど分かりました」
二人は工具を持ち、配線作業へ戻った。
避難者が増えれば、食料の消費は増える。
寝る場所も狭くなる。
だが、同時に。
一人ではできなかったことが、できるようになる。
大森が来たことで、電気設備を扱える。
和子が来たことで、集団調理と衛生管理を任せられる。
奈緒が来たことで、高齢者や子供の生活支援を分担できる。
人が増えることは、負担だけではなかった。
◇
店内の一角では、真由美と篠原奈緒が負傷者用の区画を作っていた。
衝立。
簡易ベッド。
救急用品。
清潔な水。
血液や体液が付着した物を入れるための袋。
「ゴブリンに噛まれたり、刺された場合は、まずここです」
真由美が皆へ説明する。
「傷が小さくても隠さないでください」
「怒られると思って黙る子もいます」
奈緒が付け加える。
「特に子供は、自分から言えないことがあります。周りの大人も確認してください」
彩乃が自分の腕を見る。
「魔素が入る可能性もあるんだよね」
「あるかもしれない」
真由美は慎重に答えた。
「ただ、傷を受けた全員に変化が起きるわけではありません」
小野寺の傷からは、微量の魔素反応が確認されている。
それでも、現時点で能力発現や異常な肉体変化は起きていない。
「傷口を洗う水は、飲料水と分けます」
「手袋やマスクにも限りがあります。無駄にはできません」
「それでも、必要な時には使ってください」
道具を節約し過ぎて感染を広げれば、何の意味もない。
「俺も手伝えることはありますか?」
左腕を吊った恒一が尋ねた。
「休んでください」
真由美は即答した。
「そうじゃなくて、片腕でもできることです」
「傷を開かないことが、今できる最大の仕事です」
「さすがに何もしないのは……」
恒一が言いかけた時、恵が近づいてきた。
「力仕事以外にも、できることはあると思います」
恒一が振り返る。
「見張りをする人に、戦う時の動き方を教えてもらえませんか?」
「動き方?」
「皆、武器を持っているだけです」
恵は外で作業する住民たちを見る。
「襲われた時に、どこへ下がるのか。誰と一緒に動くのか。分からない人も多いです」
恒一は少し考える。
自分が前に立つことばかり考えていた。
だが、今の身体では思うように戦えない。
それでも、これまで身につけた経験まで失ったわけではない。
「分かりました」
恒一は頷いた。
「全員を一度に集める時間はないから、作業の交代ごとに教えます」
「お願いします」
「恵さんも参加してください」
「私もですか?」
「子供を守りながら逃げる動きが必要です」
恒一は翔太を見る。
「翔太君と一緒にやりましょう」
「僕も?」
近くにいた翔太が目を輝かせる。
「戦う練習じゃないぞ」
「逃げる練習だ」
「逃げるのも練習するの?」
「一番大事な練習だ」
恒一はしゃがみ、右手で翔太の肩へ触れた。
「怖い時に走ると、転んだり、お母さんとはぐれたりする」
「だから、どこへ行くか先に決めておく」
「分かった」
翔太は真剣に頷いた。
恵は、そんな二人を静かに見ていた。
恒一が顔を上げると、視線が合う。
「何か?」
「いいえ」
恵は小さく笑った。
「戦うことだけが、強いということではないんですね」
恒一は返す言葉を探したが、少し照れたように視線を逸らした。
「今、俺も教えられたところです」
◇
見張り場所は三か所に決まった。
正面入口。
搬入口。
そして屋上。
屋上からは広い範囲を見渡せる。
だが、弓を使う相手へ身体を晒す危険もある。
英樹は合板と商品棚の支柱を使い、腰の高さまで隠れる簡易の防護壁を作った。
「頭を出し続けるな」
恒一が見張り役へ説明する。
「同じ場所から何度も覗くと、弓で狙われる」
「見る位置を変える」
「異常を見つけても、すぐに大声を出さない」
「なぜです?」
木村が尋ねた。
「叫んだ人間の位置が分かるからだ」
「まず、後ろにいる相手へ伝える」
見張りは一人では行わない。
一人が外を見る。
もう一人が店内へ情報を伝える。
「敵が一匹だけ見えても、近づかない」
「ゴブリンは、一匹を囮にする可能性がある」
これは高橋から伝えられた情報だった。
「戦う時も、追い掛けるな」
「逃げたなら逃がす」
「でも、また戻ってきますよね」
彩乃が尋ねる。
「戻ってくるかもしれない」
恒一は答えた。
「それでも、追って待ち伏せへ入るよりはいい」
「今の目的は、倒すことじゃない」
「ここを守ることだ」
彩乃は金属棒を握り直し、頷いた。
戦える者ほど、敵を追いたくなる。
だが、拠点防衛では自分の強さを示す必要はない。
守るべき場所から離れない。
それが最も重要だった。
◇
日が沈む前。
正面入口の障害物が完成した。
フェンスには警報用の空き缶と金属片が吊るされ、細いワイヤーへ触れれば音が鳴る。
店内には、第一防衛線と第二防衛線が作られた。
正面入口を破られた場合は、商品棚を並べた通路で足止めする。
そこも突破された場合は、住民を資材館側の安全区画へ移す。
最終的には、裏側の搬入口から車両で脱出する。
「完成とは言えないな」
英樹が汗を拭う。
「それでも、昨日よりはましです」
悠真が答える。
「昨日どころか、朝よりはずっといい」
英樹は周囲を見回した。
作業を始めた頃は、人が増えただけのホームセンターだった。
今は違う。
誰が見張り。
誰が負傷者を運び。
誰が子供を連れ。
どこへ逃げるのか。
最低限の動きが決まっている。
「一度、全員で確認しよう」
誠の提案で、避難訓練が行われた。
警報が鳴る。
見張りが店内へ知らせる。
子供と高齢者が安全区画へ移動する。
戦える者が防衛線へ入る。
医療担当が救急用品を持つ。
初めての訓練は、散々だった。
通路で人がぶつかる。
荷物が邪魔になる。
誰かが自分の役割を忘れる。
翔太が母親とは別方向へ走りそうになる。
「止めよう!」
恒一が声を上げる。
「今のままでは駄目です」
全員が元の場所へ戻る。
「翔太君は悪くない」
恒一は、俯いた翔太へ言った。
「大人が、行く場所を分かりやすくしていなかった」
床へ色の付いたテープを貼る。
赤は防衛位置。
青は安全区画。
黄色は避難経路。
文字を読めない小さな子供でも、色なら判断できる。
二度目。
今度は、一度目より早く移動できた。
三度目。
通路でぶつかる者はいなかった。
「これなら、いける」
佐伯が言う。
「本番が来ないのが一番ですけどね」
和子の言葉に、誰も笑えなかった。
来ないことを願う。
それでも。
来た時に動けるよう、準備する。
それが今の自分たちにできるすべてだった。
◇
夜。
警報線が鳴ることはなかった。
遠くから時折、何かの鳴き声が聞こえる。
見張りは交代で外を確認したが、ゴブリンの姿は発見されなかった。
巣へ集まっているのか。
自衛隊の偵察を警戒しているのか。
それとも。
人間の知らない場所で、別の獲物を探しているのか。
夜明け前。
ホームセンターの正面道路を、複数の自衛隊車両が通過した。
軽装甲機動車。
高機動車。
人員輸送用のトラック。
昨日の巡回とは、明らかに規模が違う。
「始まるんだ」
屋上で見張りをしていた悠真が呟く。
隣にいる美咲も、車列を見つめている。
「巣の駆除?」
「ああ」
まだ太陽は昇っていない。
薄暗い道を、武装した隊員たちが南町へ向かっていく。
先頭車両がホームセンターの前で一時停止した。
高橋が降り、入口へ近づいてくる。
「朝早くにすみません」
佐伯と誠も外へ出た。
「これから作戦ですか」
「はい」
高橋の装備は、これまでの巡回時より重い。
小銃。
防弾装備。
予備弾倉。
通信機。
その表情にも、普段とは異なる緊張があった。
「巣周辺の住民避難は完了しています」
「部隊を二方向から入れ、逃走経路を限定します」
「全部で何匹いるんですか?」
美咲が尋ねる。
「正確な数は不明です」
高橋は答えた。
「昨夜、無人機で確認できた範囲では、二十七体」
「二十七……」
「ただし、巣穴や資材置き場の建物内にも反応があります」
実際の数は、それ以上。
「それから」
高橋が僅かに言葉を止める。
「通常個体とは違うものが確認されました」
悠真の表情が変わる。
「違うもの?」
「一体だけ、明らかに大きい」
「身長は百五十センチ前後。体格もほかの個体より発達しています」
「ホブゴブリン……」
悠真は小さく呟いた。
高橋が聞き返す。
「何か言ったか?」
「いえ。ゲームなら、そういう上位種がいると思っただけです」
「現場でも似た呼び方をする者はいます」
高橋は気に留めなかった。
「問題は、大きさだけではありません」
「その個体が動くと、ほかのゴブリンが一斉に移動する」
「何らかの指示を出している可能性があります」
「群れのリーダーか」
誠が言う。
「そう考えています」
「言葉は?」
悠真が尋ねる。
「無人機の音声には、通常個体とは違う発声が記録されました」
「人間の言葉に近いものも含まれています」
片言でも。
人間の言葉を理解している可能性がある。
「交渉するんですか?」
美咲の問いに、高橋はすぐには答えなかった。
「武器を捨て、攻撃を止めるなら、可能な限り生け捕りを試みます」
「ただし」
その目が鋭くなる。
「巣には、人間のものと思われる衣服と血痕が確認されています」
「生存者がいる可能性もある」
「隊員と住民の命を危険に晒してまで、捕獲を優先することはありません」
言葉を話す。
だからといって、話し合えるとは限らない。
「無事に戻ってきてください」
佐伯が言った。
高橋は一瞬だけ驚いた顔をした後、静かに頷いた。
「そのつもりです」
「こちらも、留守を守ります」
「警報が鳴っても、外へ出ないでください」
「巣から逃げた個体が、こちらへ来る可能性があります」
「分かりました」
高橋は全員を見回した。
「藤堂君」
「はい」
「念のため、もう一度言っておく」
「確認しに来るなよ」
「行きませんよ」
悠真は答えた。
美咲が隣から、念を押すように悠真の腕をつかむ。
「絶対に行かせません」
「頼みます」
「俺より美咲を信用してません?」
「少なくとも、君を止めることに関してはな」
僅かに笑いが起きる。
高橋も口元を緩めたが、すぐに表情を戻した。
「では、行ってきます」
短く敬礼し、車両へ戻る。
再び車列が動き始めた。
雑木林。
ゴブリンの巣。
二十七体以上の通常個体。
そして。
人間の言葉を覚え、ほかの個体へ指示を出す上位個体。
車両の音が遠ざかっても、悠真たちはその場から動かなかった。
これまで自衛隊は、巨大な熊を倒した。
武装した集団から住民を救った。
今回も、勝つと信じたい。
だが。
相手はただの獣ではない。
武器を使い。
待ち伏せをし。
群れをまとめる存在までいる。
高橋たちは。
まだ知らない。
巣の奥にいる上位個体が。
単なる群れのリーダーではないことを。
そして。
その個体が崇める何かが。
エルフの長い歴史の中でさえ、ほとんど記録されていない存在であることを。
東の空から、朝日が昇り始める。
同時に。
南町の雑木林から。
短く乾いた銃声が、立て続けに響いた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
少しでも「おもしろかった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、
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