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『世界が大変だけど、念のため備えていたら家族と生き残れました ~通信障害から始まる終末サバイバル~』  作者: バックドロップ
第四章 地域共同拠点編

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第57話 君に伝える秘密



 大森のワゴン車がホームセンターへ戻ってきたのは、日が傾き始めた頃だった。


 運転席から大森が降り、助手席から真由美が続く。その後ろには木村颯太だけでなく、高橋健吾三等陸曹と二人の自衛官も乗っていた。


「お兄ちゃん!」


 隔離区画で待っていた木村莉奈が、兄の姿を見つけて駆け出す。


「莉奈、待って。まだこっちへ来るな」


 颯太は妹を止めると、少し離れた場所から無事を示すように手を振った。


「小野寺さんは?」


 誠が真由美へ尋ねる。


「小学校の医療区画で診てもらっています。傷口の中に異物が残っている可能性があるので、詳しい検査が必要です」


 大きな血管は傷ついていなかったが、感染はかなり進んでいたらしい。脱水症状もあり、点滴と抗菌薬の投与を受けているという。


「今夜すぐに危険という状態ではありません。ただ、あのまま何もせずにいたら、本当に危なかったと思います」


 真由美の説明を聞き、大森は力が抜けたように肩を落とした。


「助かるんですよね?」


「絶対とは言えません」


 真由美は医療従事者として、安易な断言をしなかった。


「でも、今できる治療は始められました。あとは小野寺さんの体力次第です」


「そうですか……」


 大森は両手で顔を覆い、深く息を吐いた。自分たちを逃がすために戦った青年を、見捨てずに済んだ。その安堵が、震える背中から伝わってきた。


 高橋はその様子を見届けてから、佐伯へ向き直った。


「石で作られた刃物を確認させてください」


「こちらです」


 佐伯が蓋を閉じた収納箱を示す。


 高橋の部下は手袋とマスクを着け、箱ごと車両の荷台へ運んだ。刃物に付着した血液や組織を調べれば、襲撃者の正体に近づけるかもしれない。


「木村君から、襲撃時の状況は聞きました」


 高橋の表情は険しかった。


「同じ特徴を持つ人型生物は、ほかの地域でも目撃されています」


「やっぱり、あの人たちが最初じゃないんですね」


 悠真が尋ねる。


「少なくとも、こちらで把握しているだけで数件あります。ただし、情報が錯綜している。すべてが同じ生物なのかは断定できません」


「緑色の皮膚、尖った耳、子供くらいの背丈」


 大森が確認するように言う。


「それに、槍や弓を使う」


「共通する報告はあります」


 高橋は頷いた。


「集団で行動し、民家へ侵入した形跡も確認されています。食料や日用品を持ち去ったという証言もある」


「物を奪うんですか?」


「その可能性が高い」


 その言葉に、周囲の視線がホームセンターへ向いた。


 ここには食料こそ少ないが、工具や生活用品、資材が大量に残っている。相手が道具の価値を理解できるなら、魔犬とは違う理由で、この場所が狙われるかもしれない。


「ここへ来る可能性もありますか」


 佐伯が尋ねた。


「否定できません」


 高橋は店の入口に置かれた障害物を確認する。


「魔犬対策だけでなく、人間に近い相手を想定してください。扉を開ける、障害物を動かす、火を使う。どこまでできるか分かりませんが、既存の動物と同じとは考えない方がいい」


 壁を高くすれば終わりではない。


 鍵を掛けても、相手が鍵や扉の仕組みを理解すれば突破される。


「夜間の見張りを増やします」


 誠が答えた。


「ただ、今の人数で長期間続けるのは難しい」


「新しく来た人たちにも協力してもらうしかないな」


 佐伯は隔離区画の方へ目を向けた。


 避難者を受け入れることは、食料や水の消費を増やす。


 だが、見張りや作業を交代できる人間も増える。


「大森さんたちは、今夜からここに置くんですか?」


 高橋が尋ねる。


「当面は一時区画で過ごしてもらいます」


 誠が答えた。


「体調に異常がなく、規則にも同意してもらえれば、正式に受け入れるつもりです」


「妥当だと思います」


 高橋は小さく頷いた。


「明日の午前中、希望者を小学校へ連れてきてください。全員を一度に詳しく検査するのは難しいですが、問診と簡単な検体採取はできます」


「分かりました」


「それから、この店の存在を部隊内で共有しました」


 高橋は周辺地図を取り出し、ホームセンターの位置へ印を付けた。


「正式な避難所ではありません。しかし、住民が集まる地域拠点として、巡回時に確認します」


 自衛隊が常駐するわけではない。


 魔獣が現れれば、必ず助けてもらえるわけでもない。


 それでも、地図の上に印が付いたことで、この場所は孤立した店ではなくなった。


「助かります」


 佐伯が深く頭を下げる。


「助け合いです」


 高橋は答えた。


「皆さんから情報が集まれば、こちらも地域の変化を早く把握できる。特に人型生物については、見つけても絶対に追跡しないでください」


 その視線が、悠真へ向く。


「藤堂君もだ」


「俺ですか?」


「君は見つけたら確認しに行きそうだからな」


「行きませんよ」


 即答したものの、周囲から疑わしそうな視線が集まる。


 美咲まで黙って悠真を見ていた。


「……一人では行きません」


「人数がいればいいという話でもない」


 高橋は疲れたように息を吐いた。


「とにかく、戦うより先に知らせてくれ」



 自衛隊が去った後、佐伯たちは新しく来た避難者を今夜だけ一時区画へ受け入れることを正式に決めた。


 大森たちが持ってきた米や缶詰の一部は、本人たちの希望で共有物資へ加えられた。すべてを差し出させることはせず、個人の荷物と共有する物を分けて記録する。


 大森は明日から電気設備の確認を行い、妻の和子は恵や由紀と共に調理を手伝う。


 介護職員だった篠原奈緒は、老夫婦や体調の悪い避難者の生活補助。


 木村兄妹も、無理のない範囲で掃除や物資整理を担当することになった。


 まだ正式な仲間ではない。


 互いに警戒も残っている。


 それでも、追い出されないと分かったことで、避難者たちの表情はわずかに柔らかくなっていた。


「今日はここまでにしよう」


 佐伯が外の明るさを確認する。


「日が沈む前に、家へ戻る人間は出た方がいい」


 夜になれば、魔犬や人型生物が動き出す可能性がある。


 悠真たちは新しい見張りの配置を確認し、ホームセンターを後にした。


 帰り道、美咲は悠真の隣を歩いていた。


 いつもなら自然に交わされる会話が、今日はほとんどない。


 美咲は怒っているわけではなさそうだった。


 それでも、駐車場で尋ねられた言葉が、二人の間に残っている。


 どうして、リュックの中身に気づいたのか。


 なぜ、血に汚れた石刃へ触れる前に止められたのか。


 悠真は何度か話し掛けようとした。


 しかし、家までの道には誠や英樹たちもいる。


 この場で口にするわけにはいかなかった。


 帰宅すると、恒一が玄関まで出てきた。


「遅かったな」


「新しい避難者が来たんです」


 彩乃が今日の出来事を説明する。


 緑色の人型生物。


 石の刃。


 負傷した青年。


 自衛隊が同じような目撃情報を確認していること。


 恒一は黙って聞いていたが、やがて吊った腕を見ながら悔しそうに眉を寄せた。


「動けない時に限って、また厄介なものが出てくるな」


「動けても勝手に行かないでくださいね」


 真由美が釘を刺す。


「分かってます」


「信用できません」


「俺、そんなに信用ないですか?」


 居間に小さな笑いが起きる。


 だが、悠真はうまく笑えなかった。


 美咲へ話すと決めた。


 それでも、実際に秘密を打ち明けるとなると、胸の奥が重くなる。


 能力を気味悪がられたらどうする。


 人の状態を勝手に見る力だと知り、距離を置かれたら。


 そんな不安が、頭から離れなかった。



 夕食を終え、見張りの順番を確認した後。


 悠真は美咲へ声を掛けた。


「少し、外に出ない?」


「うん」


 二人は縁側へ並んで腰を下ろした。


 想いを告げ、恋人になったのも同じ場所だった。


 あの夜より雲が多く、月は時折その姿を隠している。住宅地は暗く、遠くにある自衛隊の拠点から、発電機らしい低い音だけが微かに届いていた。


 しばらく、どちらも話さなかった。


 虫の声を聞きながら、悠真は何度も頭の中で言葉を組み立てる。


「今日の話だよね」


 先に口を開いたのは美咲だった。


「うん」


「バッグの中身が分かった理由」


「それだけじゃない」


 悠真は自分の手を見る。


「俺が今まで、どうして魔獣のことを妙に詳しく分かったのか。恒一さんの体の状態を確認できる理由も」


 美咲の表情が真剣になる。


「恒一兄さんのことも?」


「ああ」


 悠真は深く息を吸った。


「俺には、能力がある」


 言葉にしても、美咲は笑わなかった。


 驚きはしたが、黙って続きを待っている。


「最初に魔犬と接触した時、体の中に何かが入ってきた。それから、物や生き物を見ると情報が分かるようになった」


「情報?」


「名前や種類。体の状態。危険な部分や、何をしようとしているのか」


「何を考えてるか分かるってこと?」


「頭の中の言葉が聞こえるわけじゃない」


 悠真は首を横へ振った。


「でも、敵意があるとか、警戒してるとか、嘘をついている可能性が高いとか。そういうことが分かる時がある」


 美咲が息を呑む。


「それで、黒牙の人たちのことも?」


「全部じゃない。でも、直人が俺たちを逃がそうとしていたことや、魔犬の弱っている場所は分かった」


「今日の刃物も?」


「あれには、ゴブリンが作った石刃だと表示された」


「ゴブリン……」


「たぶん、大森さんたちを襲った緑色の奴らの名前だ」


 美咲はしばらく何も言わなかった。


 突拍子もない話だ。


 少し前までなら、信じてもらえなかっただろう。


 だが今は、巨大な熊が現れ、人間の身体能力が変化し、緑色の人型生物が石の槍を使っている。


 能力があるという告白も、否定できる世界ではない。


「このことを知ってる人は?」


「父さんと母さん、彩乃。恒一さんにも、自分の状態を確認するために話してる」


 朝倉家の両親には、恒一の身体を確認できる特殊な感覚がある程度に説明している。能力の詳細まで知っている人間は、まだ限られていた。


「私には、言ってくれなかったんだね」


 美咲の声は静かだった。


 責める強さはない。


 だからこそ、悠真の胸へ深く刺さった。


「ごめん」


「どうして?」


「巻き込みたくなかった」


 用意していた言葉を口にする。


「この能力が国に知られたら、どうなるか分からない。研究に協力してほしいと言われるだけならいい。でも、自由に動けなくなるかもしれない」


「美咲が知っていたら、一緒に疑われる可能性もある。だから、知らない方が安全だと思った」


「本当に、それだけ?」


 悠真は答えられなかった。


 美咲は隣で待っている。


「……怖かった」


 やがて、悠真は本音を口にした。


「気味悪いと思われるのが」


「美咲のことも、見ようと思えば見られる。体の状態だけじゃなくて、俺に敵意があるかとか、何か隠してるかとか」


「そんな力を持ってるって知ったら、今までみたいにはいられなくなるかもしれないと思った」


 美咲は自分の両手を膝の上で重ねた。


「勝手に私を見たことはあるの?」


「ある」


 嘘をつくべきではない。


「黒牙から助け出した時。怪我がどれくらい深いか、ほかに異常がないかを確認した」


「それ以外は?」


「意識して使ったことはない」


「今、私が何を考えているかも分かる?」


「使ってないから分からない」


 悠真は美咲の方を向く。


「それに、使っても全部分かるわけじゃない。表示される情報にも限界がある」


「そっか」


 美咲は小さく頷いた。


 怒っているのか。


 傷ついているのか。


 悠真には分からない。


 能力を使えば、何かが表示されるかもしれない。


 だが、今それをするのは違うと思った。


「怒ってる?」


 結局、言葉で尋ねる。


「少しだけ」


 美咲は正直に答えた。


「能力が怖いからじゃないよ」


「じゃあ、何で?」


「悠真が一人で抱えてたことに」


 美咲は真っ直ぐに悠真を見た。


「私たち、付き合う時に一緒に生きようって言ったよね」


「うん」


「なのに、悠真は自分一人で、私に話さない方が安全だって決めた」


「それは……」


「守ろうとしてくれたことは分かってる」


 美咲は悠真の言葉を遮らず、ゆっくり続けた。


「でも、何も知らないまま隣にいる方が怖いよ」


「今日みたいに、どうして分かったのか聞いても答えてくれない。何か危険なことをしていても、私は理由が分からない」


「それじゃ、一緒に考えることもできない」


 父から言われた言葉が蘇る。


 守ることと、信じないことは違う。


「ごめん」


 今度の謝罪は、先ほどより自然に口から出た。


「俺、美咲を守ることばかり考えてた」


「守られるのが嫌なわけじゃないよ」


 美咲の表情が少しだけ柔らかくなる。


「助けに来てくれたことも、守ろうとしてくれることも嬉しい」


「でも、私も悠真を守りたい」


「恋人って、そういうものでしょ?」


「たぶん」


「そこは自信を持ってよ」


 美咲が呆れたように笑う。


 その笑顔を見て、悠真の肩から少し力が抜けた。


「能力のこと、気持ち悪くない?」


「正直、少し不思議ではあるかな」


 美咲は考えながら答える。


「何でも見られてると思ったら、恥ずかしいし」


「勝手には使わない」


「絶対?」


「必要な時以外は使わない」


「私に使う時は、先に聞いて」


「分かった」


 美咲は頷いた後、少しだけ悠真へ身体を向けた。


「じゃあ、今は使っていいよ」


「え?」


「私に《鑑定》を使ってみて」


「いいの?」


「どんなふうに見えるのか、私も知りたい」


 悠真は迷った。


 能力を明かした直後に、美咲の状態を見る。


 それが正しいのか分からない。


「嫌なら無理にとは言わないけど」


「嫌じゃない」


 悠真は美咲の目を見る。


「本当に、使っていいんだな?」


「うん」


 許可を得てから、悠真は意識を集中させた。


 見慣れた美咲の姿へ、薄い文字が重なる。


――朝倉美咲。


――種族、人間。


――身体状態、軽度疲労。


――頸部裂傷、回復中。


――魔素侵入、検出限界以下。


――精神状態、安堵。不安。羞恥。


――藤堂悠真に対する強い信頼。


――藤堂悠真に対する恋愛感情、極めて強い。


「……。」


 悠真は無言で《鑑定》を解除した。


「何で黙るの?」


「いや」


「何か変なものが出た?」


「体は大丈夫。首の傷も回復してる」


「ほかには?」


「疲れてるのと、不安があるって」


「それだけ?」


 美咲が目を細める。


「何か隠したでしょ」


「隠してない」


「嘘が分かる能力を持ってる人が、今すごく分かりやすい嘘をついてる」


「嘘じゃなくて、全部言わなかっただけで」


「それを隠してるって言うの」


 美咲が少しずつ顔を近づける。


「何て出たの?」


「……俺に対する信頼が強いって」


「それから?」


「恋愛感情が」


「恋愛感情が?」


 美咲は逃がさないつもりらしい。


「極めて強いって」


 口にした瞬間、美咲の顔が耳まで赤くなった。


 自分で聞いたにもかかわらず、予想以上に直接的な表示だったらしい。


「そんなところまで出るの?」


「俺も初めて知った」


「忘れて」


「表示されたものは消せても、記憶までは消えない」


「じゃあ、もう私には使わないで」


「さっき使っていいって言っただろ」


「こんなに恥ずかしい表示が出ると思わなかったの!」


 美咲は両手で顔を覆った。


 悠真は堪え切れずに笑う。


「笑わないでよ」


「ごめん。でも、安心した」


「何が?」


「話しても、隣にいてくれたから」


 美咲は手を下ろし、悠真を見る。


「当たり前でしょ」


「能力があっても、悠真は悠真だよ」


 そして、少しだけ意地悪そうに笑った。


「それに、悠真は自分へ《鑑定》を使えないんだよね?」


「簡単な状態なら分かるけど、他人を見る時ほど詳しくは出ない」


「じゃあ、悠真が私をどれくらい好きかは表示できないんだ」


「できないな」


「よかった」


「何が?」


「私ばっかり見られるのは不公平だから」


 美咲はそう言って、悠真の手へ自分の手を重ねた。


「だから、私は言葉で確認する」


「悠真は、私のことが好き?」


 告白したばかりなのに、改めて尋ねられると恥ずかしい。


 だが、もう秘密へ逃げるわけにはいかない。


「好きだよ」


「どれくらい?」


「能力に表示された美咲と、同じくらい」


「極めて強い?」


「ああ」


 美咲は嬉しそうに笑った。


「それなら許してあげる」


「何を?」


「今まで隠してたこと」


 悠真が何かを言う前に、美咲がそっと身を寄せた。


 肩が触れる。


 互いの顔が近づき、息がかかる距離になる。


 黒牙に攫われた時の傷が、美咲の首元にまだ薄く残っていた。


 失うかもしれなかった。


 もう二度と会えないかもしれないと思った。


 だからこそ、ここにいることが奇跡のように感じられる。


「悠真」


「うん」


「これからは、一人で決めないでね」


「ああ」


「危ないことも、秘密にしてることも、ちゃんと話して」


「約束する」


 美咲は悠真の返事を聞くと、静かに目を閉じた。


 その意味を理解するまで、少し時間がかかった。


 悠真も目を閉じ、恐る恐る顔を近づける。


 二人の唇が、ほんの一瞬だけ触れた。


 触れただけの短い口づけ。


 それでも、離れた後は互いに何を言えばいいのか分からなくなった。


 美咲は顔を赤くして俯き、悠真も夜空へ視線を逃がす。


「……今のも、何か表示された?」


 美咲が小声で尋ねた。


「使ってないよ」


「本当に?」


「本当」


「使ってたら怒るからね」


「こんな時に使えるわけないだろ」


 二人は顔を見合わせ、同時に笑った。


 魔獣がいる。


 武器を持つ人型生物も現れた。


 国が何を把握し、これから能力者をどう扱うのかも分からない。


 世界は、昨日よりもさらに危険になっている。


 それでも悠真は、少しだけ心が軽くなったように感じた。


 秘密を話せば、守る相手を危険に巻き込むと思っていた。


 だが、秘密を共有することでしか生まれない強さもある。


 一人で抱えていた能力が。


 初めて誰かと共に背負う力へと変わった。


 悠真は美咲の手を握る。


 美咲も強く握り返した。


 二人が縁側から家へ戻ろうとした、その時。


 遠く離れた南側の住宅地から。


 コン、コン、コン。


 何かが硬い物を叩くような音が、夜の静けさの中を微かに伝わってきた。


 悠真と美咲は足を止める。


 風で何かが揺れただけかもしれない。


 誰かが家の修理をしている音かもしれない。


 しかし、二人の脳裏には同じ話が浮かんでいた。


 家の扉を叩き。


 中にいる人間が出てくるのを待つ。


 緑色の襲撃者。


 二人は顔を見合わせると、手を離さないまま家の中へ駆け込んだ。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

少しでも「おもしろかった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

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皆さまの反応を参考に、今後の更新ペースや展開も調整していきたいと思っています。

誤字脱字なども気づいた点があれば、遠慮なく教えてください。


これからもよろしくお願いします。

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