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『世界が大変だけど、念のため備えていたら家族と生き残れました ~通信障害から始まる終末サバイバル~』  作者: バックドロップ
第三章 黒牙

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第51話 家族への報告



 朝日がカーテンの隙間から差し込む。


 黒牙との戦いを終えてから数日。


 久しぶりに気持ち良い穏やかな朝だった。


 台所からは味噌汁の香りが漂い、居間には朝食の準備をする人たちの笑い声が聞こえる。


「悠真、朝ご飯できたわよ。」


 真由美の声に呼ばれ、悠真は居間へ向かった。


 既に誠、彩乃、朝倉一家、三浦恵と翔太も席についている。


 自衛隊が巡回を始めたことで、以前よりは少しだけ安心して朝を迎えられるようになっていた。


 しかし、悠真は朝食どころではない。


 昨夜、美咲と交わした約束。


 もう皆んなに隠すつもりはない。


 むしろ、一番最初に家族へ伝えたかった。


 悠真は美咲を見る。


 目が合う。


 二人とも照れくさそうに笑った。


「どうした?」


 誠が首を傾げる。


「何か言いたそうだな。」


 悠真は立ち上がった。


「みんなに報告があります。」


 部屋が静かになる。


 美咲も立ち上がり、悠真の隣へ並んだ。


 二人は顔を見合わせ、手を繋いで小さく頷く。


「俺たち――」


 悠真は深呼吸をしてから言った。


「昨日から付き合うことになりました。」


 一瞬。


 部屋の空気が止まる。


「…………。」


 誰も喋らない。


 数秒後。


 誠がぽつりと呟いた。


「……え?」


 英樹も目を丸くする。


「え?」


 真由美も。


「え?」


 由紀も。


「え?」


 四人は互いの顔を見合わせ――。


「「「「いや、まだ付き合ってなかったのか!?」」」」


 見事に声が揃った。


「えっ?」


 今度は悠真と美咲が驚く番だった。


 誠が吹き出す。


「いやいや!」


「とっくに恋人同士だと思ってたぞ!」


 英樹も大笑いする。


「俺なんか高校の頃からそうだと思ってた!」


 真由美は苦笑しながら肩をすくめる。


「言葉にしてなかっただけだったのね。」


 由紀も笑いを堪えられない。


「安心したわぁ。」


「ようやく本人たちも気付いたのね。」


 悠真と美咲は顔を真っ赤にする。


「いや……その……。」


「えっと……。」


 二人とも言葉にならない。


「もー!」


 彩乃が笑いながら立ち上がる。


「お兄ちゃんも美咲ちゃんも!」


「お互い大好きなの、見てれば丸分かりだったじゃん!」


「逆に何で今まで付き合ってなかったの?」


「二人とも奥手すぎなんだよ!」


 翔太も不思議そうに首を傾げる。


「え?」


「お兄ちゃんたち、前から恋人じゃなかったの?」


 その一言で、また部屋中が笑いに包まれた。


 恒一は満面の笑みで立ち上がる。


 悠真の肩を物凄い勢いよく叩いた。


「よし!」


「悠真なら大賛成だ、何も心配ない!」


「俺は大歓迎だ!」


「美咲を幸せにしてやれよ!」


「はい!」


 悠真も真っ直ぐ頷く。


 その返事に、恒一は満足そうに笑った。


 すると、その様子を見ていた由紀が、にやりと口角を上げた。


「……ところで恒一。」


「ん?」


「あんたも空手ばっかりやってないで、彼女とか大切な人はいないの?」


「ぶっ!」


 恒一が思わず味噌汁を吹きそうになる。


「な、何で俺!?」


 英樹が笑う。


「そういや聞いたことないな。」


 彩乃も面白そうに身を乗り出す。


「恒一さんって絶対モテるのにね。」


 その時だった。


 恵がくすっと笑った。


「確かに。」


「優しいし、頼りになりますから。」


 恒一は照れくさそうに頭をかく。


「いやいや、そんなことないですよ。」


 翔太が無邪気に言う。


「恒一兄ちゃん、お父さんみたいでかっこいい!」


 恵は「こら、翔太」と少し困ったように笑う。


 恒一も思わず笑顔になる。


 その光景を見た由紀は、小さく微笑んだ。


(……案外、お似合いかもしれないわね。)


 そんなことを思ったのは、まだ誰も知らない。


 笑い声が絶えない居間。


 外の世界はまだ危険に満ちている。


 それでも、この家には確かな日常が戻り始めていた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

少しでも「おもしろかった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

感想・レビュー・ブックマーク・評価などで応援していただけると、とても励みになります。


皆さまの反応を参考に、今後の更新ペースや展開も調整していきたいと思っています。

誤字脱字なども気づいた点があれば、遠慮なく教えてください。


これからもよろしくお願いします。

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