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第10章 世界の書き換え方

夜の森。


赤い光と、歪んだ空間。


その中心で――


二人は向かい合っていた。


ルクスと、レオン。


同じ“世界に触れる力”を持つ者同士。


「……来い」


レオンが低く呟く。


その瞬間。


世界が、動いた。


――ドクンッ!!


空間が圧縮される。


空気が重くなる。


見えない何かが、ルクスを押し潰そうとする。


「“重力”の定義を書き換えた」


レオンの声が響く。


「この場では、お前は動けない」


地面が軋む。


普通なら、立っていることすら不可能な圧。


だが――


「そうか?」


ルクスは、軽く首を傾げた。


次の瞬間。


「書き換え」


圧が、消えた。


「なっ……!?」


レオンの目が見開かれる。


「“俺に影響する”って部分だけ、消した」


ルクスは淡々と答える。


「細かくいじる方が、効率いいぞ」


その言葉に、レオンの表情が歪む。


「……舐めるな!!」


怒号と同時に。


今度は周囲の木々が、異様な形に変形した。


枝が伸び、槍のように鋭くなる。


一斉に、ルクスへと襲いかかる。


「“植物は成長する”を、強制加速した」


無数の槍。


逃げ場はない。


だが。


「書き換え」


バキンッ。


すべての枝が、途中で砕けた。


「成長する前に、“脆い”って定義にした」


「くっ……!」


レオンが歯を食いしばる。


攻撃が、通らない。


すべて、打ち消される。


(なぜだ……!?)


同じ力のはずなのに。


なぜ、ここまで差がある。


「簡単な話だ」


ルクスが、静かに言った。


「お前は“全部変えようとしてる”」


だから、粗い。


無駄が多い。


「俺は“必要なところだけ変える”」


一点に絞る。


最小の改変で、最大の効果を出す。


それが――


「本当の“書き換え”だ」


レオンの顔が、歪む。


理解したくない現実。


だが、それでも。


「……なら!」


叫ぶ。


「全部消せばいい!!」


その瞬間。


赤い紋様が、暴走した。


空間が、崩れ始める。


地面が消え、空が歪む。


存在そのものが、不安定になる。


「なっ……!?」


エリシアが声を上げる。


「世界が……崩れてる……!?」


フィアも息を呑む。


「そんな……!」


レオンは笑っていた。


狂ったように。


「これで終わりだ!!」


すべてをリセットする。


“最適な世界”に作り直すために。


「巻き込まれても文句は言うなよ?」


その言葉に。


空気が、静まった。


ルクスは――


一歩、前に出た。


「……それが、お前の答えか」


低い声。


だが、はっきりと。


レオンが叫ぶ。


「そうだ!!これが正しい!!」


「違う」


即答だった。


「それは――逃げだ」


「何……?」


「思い通りにならないから、全部壊す」


静かに続ける。


「それは“最適化”じゃない。“放棄”だ」


レオンの瞳が揺れる。


「黙れ……!」


「俺は違う」


ルクスは、空を見上げた。


崩れかけた世界。


歪んだ空間。


そのすべてを見て――


「この世界を、残す」


その一言に、力が宿る。


「全部は変えない」


必要なところだけ。


守るべきものだけ。


「――書き換える」


その瞬間。


空気が、変わった。


ルクスの周囲に、静かな波が広がる。


暴走していた空間が――


少しずつ、戻っていく。


「なっ……!?そんな……!」


レオンが叫ぶ。


「干渉できないはずだ!!」


暴走状態。


制御不能の領域。


それを――


「整えるだけだ」


ルクスは静かに言う。


「元に戻す」


それだけ。


だが、それができるのは――


「全部理解してるからだ」


“世界の定義”を。


その構造を。


意味を。


レオンの顔から、血の気が引く。


「……化け物」


その言葉に。


ルクスは、少しだけ苦笑した。


「そうかもな」


そして――


最後の一歩を踏み出す。


「終わりだ」


「やめろ!!」


レオンが手を伸ばす。


だが、届かない。


ルクスは静かに手をかざす。


(対象:レオン・ヴァルディス)


(状態:過剰改変)


(修正――)


「書き換え」


その瞬間。


赤い光が、消えた。


すべての歪みが、消える。


静寂。


森は、元の姿を取り戻していた。


レオンは、その場に膝をつく。


「……なんでだ……」


力が、消えていく。


「俺の方が……正しかったはずなのに……」


その呟きに。


ルクスは、静かに答えた。


「正しさは、一つじゃない」


だから。


「押し付けた時点で、負けなんだよ」


風が、優しく吹いた。


戦いは――終わった。


少し離れた場所で。


エリシアは、ただ立ち尽くしていた。


「……すごい……」


言葉が、それしか出てこない。


フィアも、小さく頷く。


「うん……」


ルクスの背中を見つめる。


あの時、理解できなかった力。


今なら、少しだけ分かる。


「世界を……守ったんだ」


エリシアの瞳に、涙が浮かぶ。


誇らしさと、そして――


少しの悔しさ。


「……やっぱり」


小さく呟く。


「あなたは、すごい人だよ……ルクス」


その声は、届かない。


けれど――


確かに、そこにあった。



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