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102:告白


 わたしはてっきり、アンディたちがわたしの居場所を突き止められたのは、ヴァーリックが教えたからだとばかり思っていた。

 守護獣と契約者は繋がりがある。大体の居場所は探そうと思えば探せる。

 だから、てっきりそうなのだと……。


「じゃあ、どうやってわたしの居場所を……?」

「とある筋からの情報だと、聞いている。半信半疑だったんだけど……実際に君はここにいた」


 とある筋からの情報か……。なんか怪しいな……。

 それって悪魔教が自ら流した情報なのでは? わたしを回収させるために……。

 その理由はちょっとわからないけれど。


「……君を攫った理由も、解放した理由もよくわからない。屋敷の中には君以外誰もいなかった。事前に僕たちが来ることを知っていたんだろう」

「そうね……」


 わからないことだらけだ。

 いったいなにが起こっているのか。それに、どうしてヴァーリックはいなくなったのか。


 というか、ヴァーリックがいないとわたし、大変なことになるのでは……?

 溢れている魔力をヴァーリックに使ってもらわないと魔力が暴発してしまう日が近くなってしまう。

 ……もしかして、それが目的……?


「……レベッカ」

「え……?」


 いけない、ぼーっとしていた。

 慌てて取り繕うように笑うと、アンディは眉間に皺を寄せた。


「なにか……僕に隠していることがあるの?」

「え? どうして?」


 なんのことなのかととぼけてみせる。

 わざとらしくないかな……わたし、ちゃんと自然に振る舞えている?


 本当は……ちゃんとわたしの状態のことをアンディに言うべきなんだろう。

 そうしたらきっとアンディはわたしを助けようとしてくれる。それはわかっている。

 でも、どうしてかな……他の誰に知られても構わない。けれど、アンディには知られたくないって思うのは。


「……僕は前に言いたくないことは言わなくていいって言った。でも……君が今隠していることは、僕も知っていた方がいいことではないの?」

「……」


 ……もしかして、アンディは知っているんだろうか。わたしの魔力のこと。

 まあ、ジャックに口止めはしていなかったから……彼が話したという可能性もある。わたしのことは、わたし自身の問題でもあるけれど、多くの人を巻き込みかねないことでもある。

 だから、魔力のことがわかった時点で、わたしはアンディにきちんと報告するべきだった。

 だけどそれをしなかったのは……言ってしまえば、わたしはアンディの妃候補から外されると考えたから。


 普通に考えて、そんな危険人物を妃になんてできるわけがない。だから妃候補から外されるのは妥当だし、それが一番この国にとってもアンディにとってもいい判断だ。

 妃候補から外れたとしても、アンディならきっとわたしをなんとか助けてくれようとするだろう。それはわかっている。わかっているんだ。


 でも、言えなかった。……ううん、言わなかった。

 皇妃になりたいからだけじゃない。わたしは……それでアンディとの縁が切れるのが、怖かったんだ。

 妃候補でなくなれば、アンディと話すどころか、気軽に会うことだってできなくなる。それが嫌だった。


 そんな自分勝手な感情で、周りに迷惑をかけるなんて……わたしは最低だ。

 前世からなにも進歩していない。今世はもう少し賢くなったと思っていたのに。


 わたしは一度大きく息を吸った。

 ……もう隠し通せない。覚悟を決めなさい、レベッカ。


 ゆっくりと息を吐き出して、アンディを見つめる。


「……アンディの言う通り、わたしは隠していることがある。わたし……わたしは、たぶん、あと半年しか生きられない」


 アンディの目が見開かれる。

 本当に驚いた顔をするアンディなんてレアものだな、と頭の片隅で呑気に考える。一種の現実逃避と言うやつだ。

 小さく笑って、続きを話した。

 わたしの魔力のこと、それがいつ暴発するかわからないこと。そしてそれをヴァーリックがなんとか抑えようとしてくれていたこと……。


「……黙っていて、ごめんなさい」


 そう最後に締めくくって、わたしは視線を落とした。

 いつの間にか膝の上に乗せていた手には力が入っていて、ワンピースに皺が寄っていた。

 それを伸ばしながら、わたしはこれからアンディに言われるであろう言葉を頭の中で反復する。


 そうして、実際に言われたときにちゃんと対応できるように、覚悟を決めようと思った。

 でも、想像しただけで胸がずきんと痛んだ。シミュレーションだけでこんな風だ。実際にアンディの口から「妃候補から外す」と言われたら、きっと泣いてしまう。

 それでも、できるだけ涙を堪えて、わかったと頷いて、今までありがとうって笑って言える自分でいたい。


 そう決めて、顔をあげるのと同時に──アンディに抱きしめられた。


「ア、アンディ……?」


 戸惑うわたしにアンディは小さな声で「……ごめん」と言った。


「どうしてアンディが謝るの……? 黙っていたのはわたしで……」

「君がなにかに悩んでいることはわかっていたんだ。それなのに聞かずにいた……君がそんな重いものを背負っていたのに気づかないふりをしていたんだ……」

「違うわ。わたしが言わなかったの。ううん……アンディに知られたくなくて、ただ強がっていただけなの。だからアンディが謝る必要なんてない……悪いのはわたし。アンディと一緒にいたくて……ずっと黙っていたの……」


 言いながら、気づいた。

 そうだ。わたしはアンディと一緒にいたい。だから、彼の妃になりたい。

 始めは皇妃になりたいからアンディの妃になりたかった。だけど今は違う。ただ、アンディと一緒にいたい。


 なぜなら──わたしはアンディのことが好きだから。


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[一言] 全俺が泣いた °・(ノД`)・°・
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