第四十話
本日二話目。
三十九話の切る場所を間違えた気がするので、短いですが更新します。
「な、な、な、な」
アデレイドは思いもよらない事態に混乱して、目の前にいるジャスティンを凝視した。
今とんでもない事をしたであろうジャスティンは、特に悪びれた様子もなく、にへらっと笑う。
「アディの唇柔らかい。もう一回?」
ジャスティンは小首を傾げる。
アデレイドは慌てて自分の口を押さえた。
「な、な、な、なにを・・」
「ん?」
「今何を・・」
「ん? チューした」
「なんで!」
アデレイドは堪らずに叫んだ。
「な、なんでキスしたの!?」
「え? だって目の前にアディの唇があったから」
「あったからって・・」
アデレイドは絶句する。
全く悪びれないジャスティンを見ていると、怒りの勢いに乗れない。
「だってさ、目の前で好きな人が目を瞑ってたら、チューしたくなるでしょ?」
「・・・」
「しかもさ、僕が頬に手を添えてるのに、抵抗しないでそのまま目を瞑ってたら、それはチューしていいよって事でしょ?」
「・・・違う」
「違わないよ。そういうものなの。
僕はアディがいいって言うからチューしたの」
「・・・・・」
アデレイドは苦虫を噛み潰したような顔でジャスティンを睨みつける。
ジャスティンの言う事は詭弁だと思うのだが、自信たっぷり言い切るジャスティンを見ていると、自分が間違っていたのかという気になる。
確かに頰に手を添えられて、目を瞑っていたのは良くなかったかもしれない。
アデレイドはそこまで考えて、ハッと気付いた。
ジャスティンと目が合っている。
慌てて目を逸らすと、ジャスティンが大きく嘆息した。
「アディ〜。
アディはどうしてそうなの?
今こんな話をしてるのに、赤い顔して目を逸らすなんて、襲って下さいと言っているようなものだよ?」
ジャスティンは言いながら、手を広げてアデレイドを囲い込もうとした。
アデレイドはさっと避けて、ジャスティンの頭をべしっと叩く。
「調子に乗るんじゃないの!
年上をからかっちゃいけません!」
「え〜ん、アディがぶった〜」
ジャスティンは泣き真似をするが、アデレイドは慰める気も起きない。
(まったく、この子は。油断も隙もない)
泣き真似をするジャスティンとそっぽを向いて口を尖らせるアデレイド。
そんな微妙な空間にグレアムの声が響いた。
「・・・・何があった?」
「なんでもありません!」
強気なアデレイドの発言にグレアムは口を噤む。
この事には触れない方がいいと判断したようだ。
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