13車中泊(15)
ふたりで割った薪を焚き火台に乗せ、火を点ける。今回は着火剤を使い、カナコにも簡単に着火できるよう教えてくれた。
あたりはすっかり日が落ち、だいぶ暗くなっている。鳥の声も聞こえなくなった。
それぞれチェアを焚き火のそばに置き、座って火を見つめる。
燃え上がったオレンジ色の炎はまだ安定せず、大きくなったり小さくなったりしながら揺らめいていた。
「いい感じに点いたな。炭の用意もしよう」
凪沙のつぶやきを聞いて、カナコの頭にいろいろな疑問が浮かぶ。
「私、全然わからないんだけど、炭ということは、この焚き火でお肉は焼かないの? というか、ホームセンターでガス缶も買ってたよね? ガスは使わないの??」
「全部使うよ。炭火は時間がかかるから、先に火を点けておくんだ」
「ふ、ふうん……?」
わかったような、わからないような……。
とりあえずカナコは、席を立った彼についていく。
大きなLEDランプのそばで、凪沙が収納ボックスから何やら取りだした。
「ここに炭を入れて、その上で肉を焼く。ふたりならこの大きさで十分だ」
「ほ、ほう……」
「あ、焚き火でお湯も沸かしておこう」
「う、うん……」
「ぷっ、くくっ」
凪沙はケトルを手にしながら、我慢できないというふうに吹き出して笑った。
「えっ、何?」
「ははっ、全部意味わからんって顔してる……! 可愛いなぁ……」
凪沙は楽しげに笑って、そう言った。
(……可愛いって言った? 聞き間違いじゃないよね?)
凪沙の隣にしゃがんでいたカナコはうつむいてグローブを外し、頬を触った。案の定、頬から耳まで熱くなっている。
(いやいやいや、勘違いはやめよう。ほら、猫とか犬とか、鳥とかチョウチョとかとんぼとか、チンアナゴだって可愛いわけなんだから、そういう感覚よ、そういう……)
息を吐いて顔を上げると、すぐそばで凪沙と目が合ってしまった。
「っ!」
心臓が飛び出しそうになったが、どうにか耐える。
「どうした? 寒い?」
「う、ううん! 全然!」
慌てて笑顔を見せると、凪沙は自分のグローブをはずし、カナコの手を取った。大きな手が優しくカナコの手を包む。
「冷たいじゃん。あんまり近づくと危ないけど、しばらく焚き火に当たってたほうがいいよ」
「あ、ありがとう」
今日、彼に何度も触れられたはずなのに、その温かさがいつまでもカナコの手に感触を残していた。




