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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第三章 愛の英雄の誓い 編

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第7話 バイバイね…… 19 ―アイシンの能力に限りはあるのか―

 19


「時間を巻き戻すぅ♪ いったい何を言い出すんですかぁ、小鳥さん??」


 三角形ばかりの芸術家の顔が僅かに歪んだ。

 笑顔ではない、不愉快そうに三角形の眉と眉の間に浅く皺が寄ったのだ。

「小鳥さんは英雄さんのお仲間ではありますが、冷静な方の筈♪ 変な事を言うもんではございませんよぉ〜〜♪」と口角を上げて歌いはするが、気持ち良さそうではない。


 そんな芸術家の質問にボッズーは応じない。

 ボッズーがアイシンの肩に乗ったのは、芸術家が『時間を巻き戻しでもしない限りは――』と言った直後だった。

 ボッズーが話したい相手はアイシンの方だ。芸術家ではないのだ。


「アイシン、変身してから腕時計は何回叩いただボズ?」


「腕時計を?」


「そうボズ、アイシンの腕時計からはピンク色の光が出てくるよな、ソレを何回出したのか知りたいんだボズよ!!」


 ボッズーに聞かれると、アイシンは「あっ……鎧の事?」と返すが、ボッズーはコクリともせずに「何回なんだ」と繰り返した。


「えっと、十二回……それか十三回くらいかな?」


「そっか、それじゃあ十三回だとして、それなら残りは八十七回か……これじゃあギリギリかもしれないなボズ」


「ギリギリ? 何それ? どういう意味?」


「そうです♪ どういう意味♪ 何の話ですぅ♪」


 アイシンが聞くと、耳を澄ましていた芸術家も聞いてきた。

 芸術家とボッズー達との距離は数メートルは離れているが、更に近付きたく思ったのか、芸術家はベンチから立ち上がった。

 対してボッズーは、アイシンの肩から背中へと移動する。芸術家が何か動きを見せれば、即座にアイシンを避難させられるようにする為だ。

 移動しながらボッズーは話を続けた――


「ピンク色の光は《キュアリバ》って名前なんだボズ。このキュアリバが戦闘においては、戦いを助ける鎧になるのは既に知っているみたいだなボッズー。コレはアイシン以外の英雄にも分け与える事が出来るんだ、セイギに鎧を与えてセイギの戦いを助ける事も出来るんだボッズー。でもな、鎧になる効果はキュアリバの能力の一つでしかないボズ、キュアリバの一番強い能力は他にあるんだよボッズー!!」


「他に? 鎧以外に使い方があるの?!」


 アイシンが聞き返すと、芸術家の方は数歩進んだだけで立ち止まった。ボッズーが何を言おうとしているのかを察したのだろうか、筆を持たない左手で頭を抱え始める。

 俯いたその顔には笑顔が帰ってきた。高笑いを上げていた時とは違う、口角だけが上がったニヤリとした笑みだ。芸術家は口元をニヤリと歪め、「面白い……」と呟く。


「ソレは戦闘にはあまり役に立たないんだけど、《愛の英雄》に相応わしい能力ではあるんだボッズー。例えば、怪我人の傷を治すとか。壊れた建物を直すとか。そんなのが出来るボズ――」


「人や物を回復させられるってこと……そういえば、変身した時に近くに居た山下のお婆ちゃんの怪我が治ったけど、それももしかしてキュアリバだったの?」


「そうだ、腕時計から出てくるキュアリバとは違うものではあるけど、それもそうだボズ。桃色のタマゴから出てくるキュアリバだボズ。そして、キュアリバは実際には回復させているんじゃないんだボズよ、これは時間を巻き戻しているんだボッズー!!」


 ボッズーはまた鼻息を吹いた。

 背中で鼻息を吹かれたアイシンは仮面の中で目を見開く。

 生暖かい息が背中を撫でたからではない、"時間を巻き戻す"という言葉に驚いたからだ。


「時間を……マジで?」


「マジもマジ、大真面目だボッズー!!」


 ボッズーが頷くと、頭を抱えたままで俯く芸術家は「やはりそうか……」と呟いた。


 二人の会話を黙って聞いていたセイギとユウシャは顔を見合わせる。

 何故だろう、ホムラギツネは体を震わせ始めていた。


「タイムスリップとは違って、アイシンが対象と選んだ物や人の時間だけを戻せる。だから傷も治るし、破壊された建物も元の状態に戻るんだボズね、そして腕時計から出せるキュアリバの回数は全部で百回だボッズー。鎧として使う時と同じで、時間を巻き戻す時も、キュアリバを重ねれば重ねる程に効果は大きく出来るボズ。対象の大きさや巻き戻せる時間が変わってくるんだボズ! いま残っているのは八十七回だな、赤と青の石のスイッチが入ってからはまだそんなに経っていないみたいだし、時間的には全然オーケー! ただ、対象が輝ヶ丘全体になるから、そっちはギリギリ……でも間に合う数だボッズー!!」


「それじゃあ、それをすれば――」


「輝ヶ丘は救えるだボズよ! アイシンが救世主になるんだボッズー!!」


 ボッズーはアイシンの背中を叩いた。その手は次に芸術家に向かう。


「どうだ、お前の悪事は失敗だボッズー!!!」


 ボッズーは芸術家を指差した。芸術家は頭を抱えて俯き続けている。ボッズーからすれば芸術家の格好は作戦の失敗に気付いて項垂れていると見えた。だからボッズーは散々嘲笑ってきたお返しにと啖呵を切った。

 しかし、直後、芸術家は「ホホホォ〜〜〜♪♪♪」と高笑いをあげた。


「何を笑っているんだボッズー! 負け惜しみかボッズー!!」


 ボッズーが怒鳴った直後だ。



「ギィーーーーーーェーーーーーーー!!!!」   



 静かだったホムラギツネが突然に大声で泣き始めたのは。


 芸術家が現れてからのホムラギツネは、盤上の展開を芸術家に渡したかの様に大人しくなっていた。

 火柱の尾を使わなければ、火の玉も吐かない。

 僅かな時間だけ暴れはしても、すぐに大人しくなり、数分前からは肩で息をして、体を震わせてもいた。

 それが慟哭が如く吠えた後、再び狂暴になった。


 ブォンとなり、空気が震える――


「あぁッ!!」


「うわッ!!」


 火柱の尾が振られた。近くに居たセイギとユウシャは薙ぎ払われて宙に浮く。


 最前までの火柱の尾は一纏めにされてはいても地面に垂れていた。明らかに力が無かった。しかし、再び振り回された火柱の尾はアイシンに向けていた時と同等に精気があると見えた。否、それ以上だった。

 スピードも増した。セイギとユウシャはボッズーの話を聞きながらもホムラギツネにも注意を向けていた、いつ動き出しても良い様に武器を構え続けていた。だが、彼らがホムラギツネが動き出した気配に気付いた直後には二人は宙を舞っていたのだ。


 セイギとユウシャの二人だけの姿を見れば、地球の重力は失われてしまったのではと誰もが錯覚してしまうのではなかろうか。

 失われてはいないのだから二人は落ちていくが。

 ドサリと落ちた場所は二人揃って瓦礫の山の頂上だった。

 受け身も取らずに落ちた二人は気を失ってしまう。


 ホムラギツネからすれば二人にトドメを刺す絶好のチャンスであろう。けれど、ホムラギツネは追撃をしなかった。

 ただ、その場で火柱の尾を振り回し続ける。慟哭が如く吠え続けながら、尾を振り続ける。まるで何かに抗うかの様に。


 ホムラギツネの姿は見方に寄っては悶絶だった。暴れているのではなく苦しんでいるとも見える――アイシンの目にはそう映った。


「先輩……どうしたの、もしかして苦しんでるの」


 アイシンは萌音に駆け寄りたい気持ちになるが、ボッズーに止められた。


「やめろ、アイシン」


「でも、何か変だよ……」


「変じゃないボズ、暴れてるだけだボズよ」


 ボッズーはアイシンを引き留める為に、背中を掴む力を強めたが、アイシンが止まればそれを緩める。「それよりも――」と続けはするが。


「邪魔される前に今すぐキュアリバを使うんだボズ、輝ヶ丘を救うにはキュアリバしかないんだからな! 今からどうやって使うのかを教えるから、しっかりと聞いていてほしいボッズー!!」


「キュアリバってぇ♪ 百回までしか使えないんですかぁ? 使い切ってしまったら一生使えないのですかぁ?」


 気持ちがホムラギツネへと向いてしまっているアイシンの集中を自分の方へと向けようと、ボッズーの甲高い声は更に高くなった。が、そんなボッズーとは正反対の低い声が邪魔する様に問い掛けてくる。

 それをボッズーは無視するが。


「対象は輝ヶ丘全体だ、今すぐに空に行こう。そこで話をするだボズ!!」


「アレ? 無視するんですかぁ? 私、質問をしているんですけどぉ♪ 答えて下さいよぉ♪」


 芸術家は頭を抱えるのをやめていた。いまは腕を組んでいる。ニヤリとした笑顔も隠れてはいない。

 ボッズーが空へと向かおうと翼をピクリと動かしても、質問を続けてくる。


「ですからぁ♪ 百回使ってしまったら、後はもう使えないんですかぁ? それとも暫くすればまた使えるのですかぁ? それは数分後、それとも数時間後、数日後かな? ねぇ答えて♪♪ 答えていただけないのなら、答えていただけるまで質問を続けますよぉ♪ 百回使ってしまったら、後はもう使えないんですかぁ? 百回使ってしまったら、後はもう使えないんですかぁ? 百回使ってしまったら、後はもう使えないんですかぁ? 百回使ってしまったら、後はもう使えないんですかぁ? 百回使ってしまったら、後はもう使えないんですかぁ?」


「黙れボズ!!」


 無視をすると決めていても流石に限界だった。ボッズーは芸術家を制した。


「いまはお前と喋ってる時間は無いボッズー!! まぁ、一生喋りたくは無いけどなボズ!!」


「ホホゥ♪」


 芸術家は口笛を吹いた様な笑い声を発すると、再びベンチへと腰を下ろしていく。

 足を組んで「そろそろお茶の時間にしたいです♪ 喋り疲れましたぁ♪」と呟くも、煽り続ける、質問を続けた。


「そんなに邪険に扱わなくても良いでしょう? 私は質問をしているだけじゃないですかぁ♪ 私は気になって仕方がないのですよ♪ ねぇ、キュアリバは百回使ってしまったら、後はもう使えないんですかぁ? ねぇ、桃色の英雄さん、貴女も気になりますよねぇ?」


「煩い!! 喋り掛けるなボズ!!」


「おっと恐ろしい♪ でも、私は喋り続けますよぉ♪ だって、百回使って終わりなら、桃色の英雄さんが愛する真田萌音さんはぁ、死んでしまうのですからぁ〜〜〜♪♪♪」

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