第7話 バイバイね…… 16 ―セイギ&ユウシャ対ホムラギツネ―
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「何だアレは! まるで火柱じゃないか!!」
ユウシャは二丁拳銃からレーザービームを発射したが、ホムラギツネに消されてしまった。
これにユウシャは驚く。
ホムラギツネが再び火柱の尾を作り出したのだ。三本も尾を斬られたホムラギツネだが、切られた場所は先端から真中であって、ホムラギツネの尾は伸縮自在だ。斬られた尾であっても伸ばしてしまえば、結局は火柱の尾は作れてしまうらしい。
「クッソ!! あんなのあったら近付けねぇぞッ!!」
セイギも唇を噛んだ。
火柱の尾は縦横無尽に動き回る。右に左に、更に上からと襲ってくる。
セイギもユウシャも、左右から来れば地面を蹴って高く跳び、上から来れば掻い潜り避けるが、避けたところで尾の動きは速い。再び尾はやってくる。
これでは接近したくとも接近出来ない。
「セイギ……俺は少し下がるぞ、十秒くれッ!!」
これでは埒があかないと、ユウシャはホムラギツネへの接近をやめた。
ユウシャは右方向から来た尾を空中に飛んで避けたばかり。地面に着地すると、瓦礫の校舎を背にして立つホムラギツネが居る方向とは逆に向かって走り出す。
レーザービームは振り回される火柱の尾に命中してもダメージを与えられない。漆黒の炎に負けて消えてしまう。それならば別の攻撃で挑まねばならない。
ユウシャは火柱の尾の全体が見れる場所まで離れると、二丁拳銃の銃口を横に並べて構えた。
ユウシャには必殺技と謂える《ビッグバンブレイブ》がある。最初のバケモノであったデカギライを倒した蒼い光の弾丸だ。ユウシャはコレを発射すると決めた。生成には十秒が必要だが、レーザーよりも確実に威力のある攻撃である。
「巨大な尻尾だろうがビッグバンブレイブで破壊してやる!! セイギは隙が生まれたらバケモノに接近し、斬り伏せろ!!」
「おう!! 頼むぜ、勇気ッ!!」
と、セイギは威勢良く返し、火柱の尾を避け続ける。一秒が経ち、二秒が経ち……そして十秒が経った。
「ビッグバンブレイブッッッッッ!!!!!」
ユウシャの二丁拳銃が火を吹いた。二つの銃口からは突風と共に蒼白く輝く二本の光が放たれる。目映い光は渦を巻きながら直進し、やがては一つになり、直径一m程の蒼い球体へと変わった。これがビッグバンブレイブだ。ビッグバンブレイブはホムラギツネに直進していく。
「ギィーーーーーーェーーーーーーー!!!!」
最前のホムラギツネは体を捻って尾を振り、左方向からセイギを薙ぎ払おうとしていた。
セイギがその攻撃を空中に跳んで避けた直後、くの字に曲がった火柱の尾の中心辺りにビッグバンブレイブが命中した。
ホムラギツネは絶叫し、火柱の尾は上空に弾かれる。
ビッグバンブレイブが命中しても『巨大な尻尾だろうが破壊する』というユウシャの言葉通りにはならず、火柱の尾を消滅させるには至らなかったが、しかし、尾の先端は天を向き、ホムラギツネは明らかに痛みに顔を歪めた。尾が弾かれた衝撃で後ろも向いた。
「だぁーーーーーーーー!!!!!!」
『隙が生まれたら接近して斬り伏せろ』の通りにセイギは動く。
雄叫びをあげてセイギは走った。
ホムラギツネはどうか、首を回し、顔だけをセイギに向けた。その口は大きく開く。火の玉が吐き出される。
「ギィェ!!」
「トゥリャッ!!!」
吐き出された火の玉の数は二発だった。これにはセイギは怯まない。大剣を勢い良く振るい、火の玉を斬った。
斬られた火の玉は、大剣の刃に吸収されていく。
「ドリャーーッ!!」
続けて二発目も斬った。
「ギィーーーーーーェーーーーーーー!!!!」
「ん、三発目か? ……って何も出てこねぇじゃねぇか!!」
ホムラギツネは三発目を吐こうとしたのだろう、再び奇声を発して口を開くが、何故だか吐き出されなかった。代わりに口から出てきたものは小さな炎だけだ。
巨大テハンドに穴が空いたが為に現在の輝ヶ丘には僅かに陽の光が入ってきている。それは闇夜を照らすには至らない、曇り空の月灯りの様な微かな光だが、そんな光にさえもこの炎は負けてしまうだろう。弱過ぎる程に弱い炎だった。
三発目が吐き出されないのであれば、セイギにとっては好都合だ。
「おりゃーーーーー!!!!!」
セイギは地面を蹴って跳んだ。一気にホムラギツネとの距離を縮めるつもりだ。勿論、大剣を振り上げて。
「真田先輩、俺は今からアンタを斬る!! 悪く思わないでくれ、さっさとアンタを人間に戻して輝ヶ丘を救わなきゃならないんだ!! 火の海にされる前になぁーーーーー!!!!!」
「ルンルン♪♪」
セイギは着地に向かいながら大剣の柄を両手で持ち、力を込めてホムラギツネに斬りかかろうとした。しかし、その直前に、突如としてセイギとホムラギツネとの間に現れた者がいる。
「えっ!!」
「何をやっているんですかぁ〜〜英雄さん♪ 貴方は間違えてばかりぃ~~~♪♪」
セイギは止めずに大剣を振り下ろした。それを、現れた者が右手に持つ"筆"で止めた。
現れた者は全身に三角形ばかりを集めた者だ。歌う様に話す者だった。真田萌音をバケモノに変えた張本人でもある。
「邪魔しにきやがったのか、芸術家ッ!!!」
「おととっ♪ 貴方の声量は素晴らしいですねぇ♪ 赤い英雄さんも私と一緒に歌いませんかぁ♪♪」
芸術家はセイギが振り下ろした大剣を、筆を水平に持って受け止めた。芸術家の筆は細い筆だ。特別に頑丈そうには見えない、片手で持つにしても軽そうに見える筆である。それでも芸術家は止めた。そして、続けて芸術家は空いている左手でセイギの腹を押した。この動作も特別に強く押した感のない、軽く見える押し方だった。だが、セイギは強い衝撃を受ける。
「……ッ!!!」
その証拠に、セイギの体は宙に浮き、後方へと飛ばされてしまった。




