第7話 バイバイね…… 15 ―アイシンには仲間がいる―
15
戦いに集中しすぎていたからだろう。アイシンは気付いていなかった。早朝から聞こえ続けていた『ドーンッ!』という銅鑼の様な音が数分前から聞こえなくなっていた事に――
「デェリヤァッ!!!」
上空から現れたガキセイギは雄叫びをあげてアイシンの胴体に巻かれた尾を斬った。
彼の背中にはボッズーがいる。
ボッズーはセイギの翼となってアイシンの周りを飛び回る。飛び回りながら、セイギは大剣を振るっていく。アイシンの胴体に巻かれていた尾の次は左腕に巻かれた尾を斬り、続けて右腕の尾も斬った。
「ギィャーーーーー!!」
「ボッズー、愛を頼んだ!!」
「任せろボッズー!!」
先端から真中にかけて尾を斬られたホムラギツネは絶叫する。
その姿を見下ろし、セイギはボッズーと分離する。地上に向かって降りていく。
ボッズーは任せろの言葉の通りにアイシンに向かって飛んだ。ホムラギツネの捕縛から逃れた代わりに、アイシンは落ちていっている。「アァァーーーーー!!!!!」と叫びながら。
落ちていくアイシンの下方では銃声がした。
ガキユウシャの二丁拳銃が火を吹いたのだ。
彼はセイギよりも先に地上に降りていた。
――何発撃ち出したかも分からぬくらいにジャスティススラッシャーを撃ち、巨大テハンドに穴を空けて、セイギとユウシャとボッズーが輝ヶ丘に帰還したのは僅か数分前だった。
巨大テハンドに空いた穴は三人が通れるだけの小さな穴だったが、穴が空くとすぐに三人はホムラギツネの叫び声を耳にした。
この声を聞いて、三人共がすぐに事態を把握した。
戦いの場所を見付け出したのはボッズーだった。彼は《ミルミルミルネモード》に変形して新たなバケモノの居場所を探った。
それから三人は飛んだ。セイギもユウシャも翼を持たないから、ボッズーと手を繋いで皆で飛んだ。
ホムラギツネに襲われるアイシンを見付けると、セイギが"救出役は自分が担う"と決め、ボッズーはセイギの背中に移り、ユウシャは先に地上に降りた。
降りるとすぐに、ユウシャはホムラギツネに向かって銃を発砲する。そこに、アイシンを助けたセイギが加わる。
「ユウシャ、行くぜッ!!!」
「言われなくても始めている! 輝ヶ丘を焼け野原にはしないッ!!!」
士気高く、二人はホムラギツネに向かって走っていく。
「行け行けボッズー!!! ……おっと、大丈夫だったかぁ、愛??」
ホムラギツネに向かっていく二人を見守りながら、ボッズーはアイシンを掴まえた。
地面に落ちる寸前で、なんとか背中に掴まり、ボッズーはそのまま校庭の隅へとアイシンを連れていく。
「ボッズー、来てくれたんだね!!」
「うん、遅れてすまなかったね、愛……いや、今の愛は、愛は愛でもガキアイシンかボッズー!!」
ボッズーは校庭の隅にアイシンを降ろしながら、アイシンが英雄の力を得られた事を自分の事の様に喜び、そしてアイシンを褒めた。
「ほら、俺が言った通りだったろ? 愛はやっぱり《愛の心》を持っていたんだボッズー! 愛はスゴいんだボッズー! 《愛の英雄》なんだボッズー!!」
ボッズーはニコニコと笑ったが、ここは戦場だ、すぐに笑顔は仕舞った。アイシンの正面に回り込み、ボッズーは真剣な顔になる。
「ガキアイシン、今回の敵は強いみたいだなボッズー。頭も切れるヤツだ、少し体を休めたらキミもまた戦いに参加してくれボッズー!」
「当たり前だよ……私、大好きな先輩を取り戻したいから」
「そうか、やっぱりバケモノの正体は愛の先輩だったかボズ」
アイシンが頷くと、ボッズーは顔を顰めた。
新たなバケモノの正体が誰なのかは、柏木の話を聞いている内にボッズーもセイギもユウシャも気付いていた。
しかし、三人共がまだ真田萌音がバケモノになってしまった理由を知らない。
真田萌音は自らの意思で悪の道に走った極悪人と思うボッズーは、セイギとユウシャと戦闘を開始したホムラギツネを睨んだ。




