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ガキ英雄譚ッッッッッ!!!!! ~世界が滅びる未来を知った俺たちはヒーローになる約束をした~  作者: 立神ビーグル
第三章 愛の英雄の誓い 編

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第7話 バイバイね…… 3 ―暴れる彼女を笑う奴―

 3


「ギィーーーーェーーーー!!!!」


 バケモノじみた奇声を発しながら萌音は……否、ホムラギツネは輝ヶ丘を駆けていく。

 ホムラギツネの理性は失われた。現在の彼女は野に放たれた獣だ。何処に向かうでもなく、ただ輝ヶ丘を駆けていく。

 目の前に木が現れればそれを薙ぎ倒し、家があるのなら、塀を壊し、壁を壊し、自分の行く手を阻む物を全て壊し、駆け抜ける。

 人でも動物でもそうだった。鋭い爪で切りつけ退かす。


 時折彼女は炎を吐いた。駅前公園でガキセイギとボッズーを焼いた火の玉だ。

 何かを焼こうという意図はない。ただ衝動的にホムラギツネは炎を吐く。吐かれた炎で家は焼け、木が燃える。町の中では人々の叫び声が響き、赤子が泣き、犬が吠える。

 その声に反応し、


「ギィーーーーェーーーー!!!!」


 ホムラギツネがまた吠える。


 阿鼻叫喚。輝ヶ丘自体が叫んでいると錯覚してしまいそうになる程に人々は泣き、そして叫んでいた。

 現在の輝ヶ丘において笑顔はない……否、


「ホホホホホォ~~~♪」


「フフフ……」


 現在の輝ヶ丘でも少なからず笑える者が居た。


 それは二人。


 一人は「ホホホホホォ~~~♪」と歌う様に笑う、三角帽子を被った男。


 もう一人は「フフフ……」と嗄れた声で笑う、真っ黒なローブを纏った老婆。


「フフフ……《芸術家》のボクちゃん?」


「何ですかぁ~~♪ 《魔女》さんぅ~~~♪」


 芸術家と魔女――《王に選ばれし民》の二人だ。

 二人は炎を吐き、そして吠えるホムラギツネを見下ろして笑っていた。どちらかが用意した物なのだろうか。空を飛ぶ絨毯に乗って、壊れていく輝ヶ丘を笑っている。


「あの獣は、ホムラギツネといったかしら? 大分荒れているみたいじゃない、これじゃあ自分の目的が何だったのかさえも分からなくなっているんじゃないの? まぁ、見世物として見れば面白いけれど……フフフ」


「ホホホホホォ~~~♪ そうですねぇ♪ そうですねぇ♪ 今の彼女は獣そのものぉ♪ 自分が人間だった事さえも忘れているでしょお~~~♪♪」


「あらあら、それじゃあバケモノとしては失敗作じゃないかい。バケモノは人間の悪意を利用するものなのよ。頭が働かなきゃ意味がないわ……」


 そう言って、魔女はほくそ笑み、芸術家は尚も笑う。


「ホホホホホォ~~♪ 失敗作で結構ですぅ♪ だって"実験"は失敗の先に成功があるものですからぁ~~♪ それに失敗もまた芸術ぅぅ~~♪♪」


「実験? なんだいソレは?」


 空を飛ぶ絨毯に胡座をかいて座る魔女は、フードをチラリと捲って、隣に立つ芸術家の顔を見上げた。

 チラリと見られると、芸術家も逆三角形の目で魔女を見下ろす。


「ホホホホホォ~~♪♪」


 芸術家はまた笑う。それから少し腰を屈め、魔女に顔を寄せた。


「ゴニョゴニョゴニョ」


「フフフ……成る程ねぇ」


 芸術家は何やら呟き、"何やら"を聞いた魔女もまた笑った。


「そうかい、そうかい。でも、それなら"育てる"ところから始めた方が良かったんじゃないの?」


「育てるぅ? それは貴女がやっている"アレ"の事ですかぁ~~~♪♪」


「そうよ……」


「ホホホホホホォ~~♪ それは名案♪ しかし愚案♪ 私の案は実験ですぅ♪ 育ててしまったら意味がないのですぅ~~♪♪」


「フンッ、そうかい。相変わらず何を考えているのか分からないボクちゃんだねぇ」


 魔女は再び輝ヶ丘に視線を落とした。


「……ん?」


 すると、魔女は何かに気が付いた。魔女は町の中に向かって指を差す。


「芸術家のボクちゃん、あそこを見てみなよ。どうやら邪魔物がやってきたみたいだよ」


「んぅ♪ おぅ、ホホホォ〜〜♪ 確かに、あの人ならホムラギツネさんを邪魔出来そうですねぇ~~♪♪」


「邪魔出来そうって、ソレを邪魔しなくて良いのかしら? 邪魔されてしまったら、ボクちゃんもピエロちゃんみたいに我が王から謹慎を言い渡されてしまうかもしれないよ、笑っていられるのも今の内かもしれないよ……」


「ホホホォ~~♪ そうかもぉ〜〜♪ でも、邪魔をされるなら、邪魔をされるで、それもまた実験ですぅ♪ 新たな芸術が生まれるかもぉ~~♪」


「そうかい、そうかい、芸術に実験。楽しそうで何よりだよ。でも、忘れちゃダメよ。私の占いではボクちゃんのアンラッキーカラーはピンクと出たと前に教えておいたろう? 墓穴を掘らないように気を付けなさいよ……」


「はいはい♪」


「フフフ……忠告を聞いてもいないね。ボクちゃんの勝手にしなさい。それじゃあ、私は退散するわね」


「はいはい♪」


 魔女が黒い煙となって消えていくと、一人残された芸術家は更に笑った。


「ホォ~~♪ ホッホッホッホッホッホォ〜〜〜♪」


 ……と、腹を抱えて笑い続けた。

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