二番目の恋
今日の復旧作業の手伝いを終えて夜。
流石に死んだ人が多い中、街は祭りムードではないので静かにみんな過ごしていてひんやりとした夜だ。
アカネもあーたんも疲れて就寝。
アンナさんも今日は避難所で寝るということでこの部屋も静かになった頃。
ずっと外で月を見上げる少女が1人。
「どうした?なんて事は言わないぞ?あからさまだからな……話があるんだろ?」
「……」
アカネに聞けばここ3日ずっとこの調子だったそうだ。
「言わなきゃ分からないぞ」
「………ぃったらぉわる気がするからっ……」
「そうか」
「……」
「また1人、呪いを解いて欲しい奴が居る」
「アンナの事でしょっ、わかってる……」
「話が早くて助かる」
「ぅんっ……」
「……」
「……」
静かに過ぎていく時間。
はぁ……苦手なんだよな、こう言うの……
とりあえず、俺から話題を切り出して話しやすい雰囲気を作るか。
「話変わるけど、見たか?アオイさんを」
「ぅん……」
「可愛かっただろ?」
「ぅん……」
「美しかっただろ?」
「ぅ、ぅん……」
「だよな!?あの金色に輝く髪!透き通る青い瞳!整いすぎてる顔立ち!長いまつ毛!白く綺麗な肌!すらっと伸びた手足!無駄のない引き締まった身体!それでいて女性らしい綺麗なライン!歩くだけで絵になる立ち姿!凛としてるのに優しい表情!声も綺麗だし仕草も上品だし笑顔なんて反則だろ!あんな人が居るなんて信じられるか!?」
おっと、アオイさんの事になると逆に誰も寄せ付けないしゃべりになってしまった__って!?
「……」
気がつけば、みやの目からは涙が出ていた。
「どうしたんだ?」
「話……かわってなぃっ……」
「え?」
「話!変わってなぃ!」
いつもより大きな声で言われ驚く。
「アオイさんの事、か?」
「きぃてなぃ!ぁんなに可愛いなんて!美しいなんて!」
タガが外れたみやはそこから泣きながら俺に訴える。
「どぅしたらぃぃの!ぁんなに可愛ぃ人を好きになってる人を振り向かせるなんて!」
「……」
「ぁんなに美しぃ人に勝つなんて!」
「……」
「ぁんなに……胸のぉぉきぃ人だなんてっ!」
…………そうか、アカネやアンナさんと違って、みやは生のアオイさんを見るのは初めてだった。
俺が絵や像で表現できないと言う意味が理解できたのだろう。
それほど、アオイさんは完璧なのだ。
「こんな気持ちになるならっ、惚れなければ良かった!ぁの時死んでいれば良かった!どぅして惚れ薬なんて私にぅったの!どぅして苦しめるのっ!」
悲しみの次に来たのは怒り。
みやは涙を流しながら俺に魔法陣を向けてきた。
「どう言うつもりだ?」
「リュウトを殺して私もしぬっ!」
おうふ……ヤンデレみたいなこと言うじゃないか。
これはあれだな包丁突きつけられてるみたいなもんか……
「お前の言い分は分かった、どうせ殺すなら殺す前に俺の話も冥土の土産に持っていってくれ」
「……」
「まずは一言だ……“お前だけだと思うな”」
「……はぃ?」
「見ただろ?アオイさんを……あの人は男、女、そして魔王であるみやでさえ“美しい”と思える存在だ」
「……」
「そんなアオイさんが、俺に振り向くと思うか?」
「……?」
「世界中、知能を持つものがアオイさんを見たら全員思うんだ……「あの人を自分のものにしたい」と」
「それとこれとどぅ言ぅ関係がっ」
「同じなんだよ、今“俺を追うお前”と“アオイさんを追う俺”は」
「っ」
「最近、一緒に食事をして分かったよ、彼女は俺に1ミリも恋心を抱いたりしていない、こんなに思ってるのに、こんなに愛してるのに、俺は一歩も恋愛に進めない!それどころか会って話すのも!この目で見るのも!何ヶ月!何年に一度!」
先ほどのみやと逆。
俺の思いが感情と共に口から溢れる。
「今もどこかでアオイさんの近くに男がいる!女がいる!そいつらはアオイさんを好きになり俺より先に恋愛アプローチをしている!それは100か?1000か?万か!?億か!?俺はその中で勝ち取らなければいけない!アオイさんに選んでもらえるように!」
「……」
「どうしてこんなに胸が苦しいんだ、いつもアオイさんを考え幸福になるのと同時に来るのは心配と焦りと哀しみ!恋愛を今までしてなかった俺はこんな苦しみを知らなかった!俺は__」
「__っ!」
みやの腕を掴む。
「こんな風に想いを伝えたくても近くにアオイさんは居ないんだ!」
涙。
あぁ……涙?
俺が?
そうか……どうしようもないくらい俺はアオイさんが好きなんだ。
そしてこの気持ちは、みやも同じ。
気が付けば魔法陣は解かれていた。
「その気持ち、いや……この気持ちを抑えるには信じるしかないんだ、一歩一歩、自分が進んでいることを……」
「私は……私は……」
「これを」
そして取り出したのはクリスタルドラゴンの鱗で作られた“指輪”
「!?」
「これは、俺がアオイさんと結婚する時にプロポーズのために作った指輪だ、お前に託す」
「どぅぃぅことっ」
「俺は今から最低なことを言うが、俺とお前の気持ちは一緒だと思うから俺がアオイさんにして欲しいことをお前に言う」
「ぅ、ぅん」
「俺がアオイさんを諦めた時、俺はお前を選ぶ」
「…………たしかに、さぃてーっな言葉」
「そうだ、だけど……つまり、この言葉の本当の意味は……」
「んーっ?」
「今は2番目に恋愛的に好きって事だ」
その瞬間、俺の頬に鋭いビンタが飛んできた。
「……」
「……」
「ほんとぅに、さぃてーな人……だけど、わかった」
そして、みやは指輪をはめる。
「リュウトの恋愛が失敗するのをねがぃながら、私はリュウトを恋愛するっ……ぃつか一番になれると信じて」
「フッ……俺はアオイさん一筋だ」
「私はそんなリュウトをおもぅよ、苦しぃ想ぃをしても、ぃま、アオイがぃなかったら一番なのは私だからっ」
「そうだな」
「私の色、解る?」
その質問が今飛んでくるのは、確かに一番俺のことを観察して理解してくれているらしい。
「お前の髪、月明かりに照らされて白く、星みたいに綺麗だ」
「ぁりがとっ」
第二章 完




