複眼に刻め
「__行くぞ」
地面を蹴る。
瞬間。
脚部装備へ組み込まれた風魔法が起動した。
ただの加速じゃない。
踏み込みの瞬間に後方へ圧縮空気を噴射し、“地面を蹴る力そのもの”を増幅している。
人間の脚力だけじゃない。
風で身体を押し飛ばす。
バゴォンッ!!!
石畳が砕け散り砂埃が巻き上がる。
まだだ!
俺は【プラスフィジカルアビリティ】ともう一つ【限界突破】の魔皮紙も使い導き出した答え。
【半界突破】
筋肉への制限を、自分の意思で調整。
血流加速。
神経伝達の強化。
視覚処理速度の上昇。
【限界突破】のデメリットを最小限にする方法を編み出した。
魔皮紙なしでも発動できるし、勇者のこの身体で使えば半界突破状態でもそこら辺の名の知れた冒険者の限界突破並に力を出せる!
ただ、消費カロリーが異常になるのは抑えられなかった。
長時間は持たない。
だから、必要最低限で発動させる!
当然――護衛が反応した。
「邪魔」
そのまま勢いを殺さず目の前に来た人間サイズの蝿の頭を腕力だけでもぎ取り投げ捨てる。
そのまま俺は親玉へ突っ込む。
「――――」
デカい。
近づくほど分かる。
複眼一つが、人間の身体ほどある。
その表面へ無数の小さなレンズ構造。
光を反射し、気持ち悪いほどこちらを映していた。
「そうだ!俺を目に焼き付けろ!」
俺はレイピアを複眼に突きつける。
ズガガガガ!!!
レイピアが複眼表面を斬り裂く。
硬いはずだが半界突破している俺は力ずくで斬り開いていく__
「!!!!」
複眼のレンズ構造がまとめて砕け、粘ついた液体が爆発みたいに飛び散る。
そのまま勢いを殺さず通り過ぎ空高く俺は上がった。
相手は虫なので痛みを感じているか分からない……
だが__
「俺を見たな」
親玉のブルゼは間違いなく“上を向いていた”
つまり__
「これで俺を脅威と認識したな、後は任せたぞ」
そのまま俺はヘイトを稼ぎながら持久戦を始めた。




