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テンプレ勇者の一目惚れラブロード 〜勇者がヒロインと結婚するまで〜  作者: しぇいく
第二章 アオイさん!好き!

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巨大蝿の女王

 ブゥゥゥゥゥゥゥン――――。


 低く重い羽音。


 近づくほど、その音は“耳”じゃなく骨に響いてきた。


 「…………デカすぎるだろ」


 俺は崩れた建物の陰から、巨大蝿を見上げる。

 遠くからでもデカかった。

 だが、近くで見ると比較にならない。


 まず脚。


 六本ある脚は、一本一本が大木みたいに太い。

 節ごとに黒い外骨格が重なり、隙間からは湿った肉が見えている。


 脚先は鋭い鉤爪状になっており、地面へ深く突き刺さっていた。


 石畳が陥没し、周囲へ蜘蛛の巣みたいな亀裂が走っている。


 そして腹部。


 異様だった。

 半透明に近い灰色の腹が、脈打っている。


 ドクン。

 ドクン。


 内側で何かが蠢いていた。


 そのたびに腹部下の裂け目から粘液が溢れ落ちる。


 ベチャ……。


 粘液は地面へ落ちると糸を引き、腐った臭いを周囲へ撒き散らした。


 「ぅえ……」


 あーたんが嫌そうな声を出す。


 生ゴミ。

 腐肉。

 血。


 それを真夏に数日放置したみたいな臭気だった。


 しかも――


 「……元凶だな」


 腹部の裂け目から出てくるのは粘液と“蝿”


 粘液まみれのまま。

 羽を震わせ。


 生まれた直後だというのに、すぐ飛ぶ。


 そして周囲に散っていく。


 アイツらは直接親玉の蝿の体内で生成されているわけか……


 「……」


 さらに、その周囲。


 今度は普通サイズの蝿。

 人間サイズの蝿の死体や、集められた肉片へ群がっていた。


 腐肉を食い。


 吐き戻し。


 繁殖している。


 腐った肉へ卵を産み、驚異的スピードで幼虫から成虫になっている。


 「……気持ち悪すぎるわね」


 アンナさんが顔をしかめる。

 だが、その目はしっかり巨大蝿を観察していた。


 「護衛、多いですね」


 アカネの言う通りだった。


 巨大蝿の周囲には、人間サイズの蝿が常に巡回している。


 近づく個体。

 離れる個体。


 役割分担しているみたいに動きが整理されていた。


 「本能だけで動いてる感じじゃないな……」


 知性。

 少なくとも群れとしての行動原理がある。

 だから厄介だ。


 「周囲は?」


 俺は小声で聞く。


 アンナさんが目を閉じた。


 「……人間は居ないわ」


 「……」


 空へ運ばれていた“アオイさんの顔をした人達”はここに居ない。


 なら、別の場所へ集められているのか。

 巣が複数ある?

 それとも、ここは繁殖区域だけ?


 考えるべき事は多い。


 だが。


 「今は後回しだな」


 まずはコイツ。


 親玉を殺す。


 それが最優先。


 「みや、弱点は?」


 「待ってねっ」


 みやが魔眼を発動させ目に蛇の紋章が浮かび上がるがすぐに戻った。


 「…………弱点……なぃみたぃ」


 「は?」


 「分からなぃっ、けどぃまの所はなぃ……もっと色々な角度から見れれば見つかるかもだけどっ……」


 「……マジかよ」


 思わず眉をひそめる。


 みやの《解析》で弱点が出ない。


 それはつまり――単純に硬いとか、そういうレベルじゃない。


 構造そのものが未知。


 「リュウトさん……」


 アカネが巨大ハンマーを握り直す。


 緊張しているのが分かった。


 アンナさんは巨大蝿を見つめたまま呟く。


 「周囲の蝿達、完全にバラバラで動いてるわけじゃない。あの親玉から薄く魔力が流れてる」


 「それによって指示……あるいはエネルギータンクとして成り立ってるってことか」


 「多分……」


 「だったら話は早いな」


 やはり、親玉を潰せば、統率が崩れる可能性が高い。


 問題は――どうやって潰すか。


 「外骨格は硬そうですね……」


 アカネが言う。

 実際、その通りだった。


 人間サイズの蝿ですら硬い。


 なのにコイツは比較にならない。

 しかもデカいだけじゃない。


 脚の関節部分には分厚い毛が密集していた。



 昆虫は関節が弱点になりやすい。



 だからそこを守るように進化している可能性がある。

 現実の虫でも、感覚毛や防御用の微細構造を持つ個体はいる。



 次に見たのは半透明の羽。


 だが、光の反射がおかしい。


 薄い膜じゃない。


 何重にも繊維が重なっているな……


 あれだけ巨大な身体を飛ばすなら、単なる昆虫の羽じゃ耐えられない。


 強度を上げるため、構造そのものが変化している。



 「………狙い所は関節、そして腹部……関節の毛がどれだけ機能しているか分からないし、腹部から生産される蝿は止めたほうがいいだろう」

 

 頭の中で考える。

 コイツを倒すロードマップを……


 「アカネ」


 「はい」


 「俺が注意を引いてる間に周りの蝿をあーたんと倒しながら腹部を狙ってくれ」


 「分かりました」


 「はーい!」


 「みや」


 「ぅんっ」


 「小さい蝿を1匹もパーティーメンバーに寄らせるな、後、弱点が見えたらすぐに教えろ」


 「りょぅかぃっ」


 「アンナさん」


 「何よ?私は何もできないわよ?」


 「いや、アンナさんには俺達を見て援護をしてほしい」


 「援護?」


 「はい、俺たちはたぶんこの戦いで傷を癒す時間もそこに割く魔力もないと予想してます、だからそれを補ってほしい」


 「やったことないわよ?私」


 「大丈夫です、アンナさんなら出来る」


 「何を根拠に言ってるのやら……出来ることはやってみるけど、知らないわよ?」


 「えぇ、大丈夫です」


 「……」



 「さて」


 

 俺は何事もなく、堂々と姿を晒した。




 ブブブブブブと一斉に羽音を出して威嚇する蝿達。



 「__!!」



 そして親玉も俺に気付いた。




 「クリスタルドラゴンに続き、第二ステージのラスボス戦と行こうか」



 


 


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