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テンプレ勇者の一目惚れラブロード 〜勇者がヒロインと結婚するまで〜  作者: しぇいく
第二章 アオイさん!好き!

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人質を取る魔物

 ブゥゥゥゥゥゥゥン――――。


 耳障りな羽音が空を覆う。

 羽ばたくたびに風圧が発生し、瓦礫の砂埃が舞い上がっていた。


 「次っ!」


 アカネの巨大ハンマーが振り抜かれる。

 加速を乗せたハンマーが、人間サイズの蝿の頭部へ直撃する。


 ゴギャッ――――!!!!


 頭蓋が潰れる。


 硬い外骨格ごと内側へ陥没し、複眼が破裂。

 緑黒い体液が霧状に飛び散った。


 「右からも来るわ!」


 「あぁ!」


 俺は身体を半歩だけずらす。


 ゾーン状態の視界では、蝿の羽ばたきすら遅い。


 空気の流れ。

 脚の角度。

 羽の震え。


 全部が“次の動き”として見える。


 飛び込んできた蝿は、獲物を押さえつけるように前脚を広げながら突進してきた。


 その瞬間。


 俺は腰を落とし、レイピアを最小限の動きで突き出す。


 狙うのは頭部じゃない。


 羽の付け根。


 レイピアの切っ先が、その僅かな継ぎ目へ滑り込んだ。


 「ギィッ!?」


 ブシュッ!!


 緑黒い体液が噴き出す。

 内部の飛行筋を断ち切られた蝿は、一瞬でバランスを失った。


 羽が片方だけ暴走する。

 空中で身体が捻じれ、そのまま地面へ激突した。

 俺は落下する蝿へ追撃の一突きを放つ。


 今度は複眼の隙間から。


 柔らかい内部へレイピアが深く入り込み、蝿は痙攣しながら動かなくなった。


 「うぇ……きもちわるぃ……」


 あーたんが顔をしかめる。


 ちなみに機動力のないアンナさんは、今あーたんの背中に乗って移動している。


 俺達の速度についてこれないからだ。

 冒険者装備には移動補助の魔法が組み込まれている。


 だが一般人のアンナさんにはそれが無い。

 転送用の魔皮紙と私物のリストも渡している。



 「……にしても、数が多いな」


 まるで町全体が巣になったみたいだった。


 だが――


 「……っ」


 アンナさんの表情が変わる。


 それもそのはずだ……俺たち全員がそれを見て言葉を失いその場で止まった。



 空。



 そこに居たのは__



 「いやぁぁぁぁぁ!!」


 「助けてくれええ!」



 人だった。


 人間サイズの蝿達が、人を抱えて飛んでいる。


 いや、違う。


 運搬している。


 まるで獲物みたいに。


 しかも――


 「アオイ……さん?」


 違う。色がない。

 本物じゃない。


 だが、全員がアオイさんに似た顔だった。


 整形した人達。


 「な、なんですか、リュウトさん……これ」


 同じ顔の女達が、大量に空へ連れ去られていく。


 悪夢みたいな光景だった。


 その時。


 「離してぇぇぇぇぇ!!!!!」


 一人の女が暴れた。


 蝿の脚を必死に引き剥がし、空中でもがく。


 だが。


 ブチッ。


 「え?」


 蝿の脚が女の肩関節へ食い込む。


 筋肉が千切れる音。


 骨が抜ける音。


 次の瞬間、右腕が根元から引き千切られた。


 血が噴き出す。


 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 さらに別の蝿が脚へ噛みつく。


 外骨格の顎が肉を裂き、脛骨を噛み砕く。


 ボギッ。


 脚が逆方向へ折れ曲がった。


 女は空中で半分解体されながら落下した。


 ドチャッ――――。


 地面へ叩きつけられた瞬間。


 頭蓋が砕ける。


 顔面が潰れ、眼球が飛び出した。


 衝撃で腹部も裂け、内臓が滑り出る。


 赤黒い腸が、雨で濡れた地面みたいにべったり張り付いていた。


 「っ……!」


 アンナさんが息を呑む。


 だが、終わりじゃない。


 その女を落とした蝿が再び降下した。


 グチャグチャになった死体を脚で掴む。


 飛び出た腸を引きずりながら。


 潰れた頭から脳を零しながら。


 まるで荷物みたいに。


 また空へ運び始めた。


 「……ふざけるな」


 アカネの声だった。


 低い。


 震えている。


 「ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!!」


 ドンッ!!!


 地面が陥没する。


 アカネが空へ飛んだ。


 脚部装備の風魔法を限界まで使った跳躍。


 ほぼ砲弾だった。


 「待てアカネ!」


 だが。


 狙われた蝿は即座に反応。


 ギチギチギチッ!!!


 ブチィッ――――。


 人質の女の首が、空中で千切れ飛んだ。


 「っ!!」


 頸椎ごと。

 血が噴水みたいに吹き出し、それをアカネに投げつけた。


 「な!?」


 そのままアカネは首のない死体を抱え片手で1匹の蝿を殺し着地する。


 「…………」


 突然の死に筋肉痙攣を起こしている身体を地面に置くアカネ。


 その隙。


 周囲の蝿達が一斉に人質を殺した。


 頭を噛み砕く。


 喉を裂く。


 空中で、人が死んでいく。


 「……」


 俺たちがそれ以上攻撃をしないのを確認した後。

 蝿達は何か目的の為にその死体をまた運び始める。



 「人質、か」


 

 まさか、魔物がそんな行動を取ってくるとは思いもしなかった。


 「……っ、ぅ……」


 アンナさんが口元を押さえる。

 耐えきれなかった。

 瓦礫の横で嘔吐する。


 無理もない……冒険者である俺たちは魔物の解体などで内臓などは慣れているが、そうではない人間が見ると我慢できないだろう……


 「大丈夫ですか?」


 「……だい、じょうぶ……よ……」


 全然大丈夫そうじゃない。

 顔色が真っ青だった。


 「リュウトさん……」


 アカネが弱々しく名前を呼ぶ。


 「アイツらは俺たちを倒す目的じゃなく、あの人間達を運んでいる……だけど生死は問わないんだろう……「助けに行けば他の人も死ぬぞ」と言う俺達への警告……」


 「でも、魔物ですよ……」


 「魔物がそう言う行動を取ってこないと言う補償はない、事実、あーたんみたいに進化した魔物かもしれないしな」


 「でも!あの人達は!」


 上から聞こえる声や悲鳴。


 人間より優れてる耳を持つアカネ達には鮮明に聞こえるだろう……


 「そうだ、俺たちは人質に手を出せない……それに__」


 空とは別に周りから聞こえる羽音。


 「俺達を襲ってくる蝿はまだ居る、この地獄を早く終わらせたいのなら__」


 巨大な蝿が居る方向を見る。


 「行くぞ……奴らの親玉の所へ」


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