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テンプレ勇者の一目惚れラブロード 〜勇者がヒロインと結婚するまで〜  作者: しぇいく
第二章 アオイさん!好き!

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限界の、その先へ

 《コロシアム》


 「さて、と……」


 俺は店で大量に買い込んだ魔皮紙を抱え、ミクラル王に適当な理由をつけて、ニューイヤーフェスティバルで使われていたコロシアムへ来ていた。


 隣には、当然のようにあーたん。


 「ごしゅじんさま〜、なにするのー?」


 「あぁ、ちょっとな。ところで、俺と初めて会った時のこと覚えてるか?」


 「うん〜! あーたん、ぼこぼこにされた〜!」


 「そうだな」


 苦笑しながら、俺はコロシアムの中央へ歩いていく。


 「ってわけで、ここで俺と戦ってもらう」


 「えぇ!? なんで!?」


 「安心しろ。俺から攻撃はしない。ただ、ちょっと魔皮紙を試したいだけだ」


 「そ、それなら……」


 「ただし」


 俺は魔皮紙を指先で挟みながら言った。


 「これはお前の訓練でもある。だから全力で来い」


 「はーい!」


 返事と同時だった。


 あーたんの姿がぶれる。


 「うおっ!?」


 反射的に顔を逸らす。


 鼻先を足が通り抜け、風圧が頬を叩いた。


 「勝ったら、ごしゅじんさまのごしゅじんさまはあーたんね!」


 「何言ってるか分からないが把握した!」


 軽口を返しながら、俺は一枚の魔皮紙に魔力を流す。


 【プラスフィジカルアビリティ】


 ミクラルの冒険者がよく使う強化魔皮紙。


 極限まで集中力を引き上げ、“没頭状態”を強制的に作り出す魔法だ。


 言うなれば――ゾーン。


 「__」


 世界が、変わる。


 さっきまで速かったあーたんの動きが、急に鮮明に見え始めた。


 足運び。


 肩の動き。


 重心移動。


 全部が分かる。


 「ほいっ! ほいっ!」


 飛び込んでくる攻撃を軽く避け続けながら、その感覚を身体へ叩き込む。


 だが――


 「っ……目が疲れるな」


 思わず顔をしかめた。


 こういう“強制的に能力を引き上げる”タイプの魔皮紙には、必ずデメリットがある。


 視界への負担。


 集中力の消耗。

 「よっと」


 俺はタイミングを合わせ、飛び込んできたあーたんを縄で拘束する。


 「うわっ、ぷ!?」


 そのままバランスを崩し、あーたんが地面を転がった。


 「すまんすまん、ちょっと整理したくてな。休憩だ」


 「むぅ〜! たたかいのさいちゅうなのに〜!」


 「ごもっとも」


 苦笑する。


 本番なら、敵は待ってくれない。


 だからこそ、今ここで把握しておく必要がある。


 「効果時間……時間感覚のズレ……思考力の低下……」


 口に出しながら整理する。


 身体を動かすことに集中しすぎて、逆に脳が鈍る感覚がある。


 やはり、デメリットと向き合わないと使い物にならない。


 それに――


 「この状態でも、黒騎士の攻撃は見えなかった」


 あの速度。


 あの圧。


 ゾーンに入った程度じゃ届かない。


 だから――もう一つ。


 俺は次の魔皮紙を取り出した。


 「【限界突破】……」


 グリード王国の冒険者なら、一人一枚は持っている切り札。


 おそらくミクラルでも同じだろう。


 その効果は単純。


 身体のリミッターを外し、“限界”そのものを超える。


 魔法なしで岩を砕き。


 魔法なしで化け物じみた速度を出し。


 脳すら強制的に活性化させる。


 ……当然。


 代償もある。


 限界を超えた筋肉は壊れ。


 耐えきれない骨は砕ける。


 脳への負荷は凄まじく、使い切ればその後はまともに動けなくなる。


 まさに諸刃の剣。


 “死ぬくらいなら使う”ための魔法だ。


 「使うしかないよなぁ……」


 正直、こういう力には頼りたくなかった。


 テンプレ通りなら、みやと戦った時みたいに、土壇場で覚醒すると思っていた。


 だが現実は違う。


 黒騎士との戦いで俺はゾーンには入った。


 ……それだけだった。


 勝てなかった。


 届かなかった。


 「…………」


 もし負ければ。


 もし死ねば。


 アオイさんに、もう会えない。


 その瞬間、胸の奥が焼けるように熱くなった。


 ――あぁ。


 結局、足りなかったんだ。


 俺はまだ、“死ぬ気”になれていなかった。


 「アオイさん……」


 あの人は、いつも俺に気づかせてくれる。


 俺が何をしたいのか。


 何のために戦うのか。


 何のために、この世界で生きるのか。


 だから――


 「絶対に、もう負けない」


 俺は静かに呟き。


 【限界突破】の魔皮紙へ、魔力を流し込んだ。

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