表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テンプレ勇者の一目惚れラブロード 〜勇者がヒロインと結婚するまで〜  作者: しぇいく
第3章 アオイさんは可愛い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
103/111

私の子供を作って

 お城の廊下を歩く。


 赤い絨毯が真っ直ぐ先まで伸び、壁には歴代の王族を描いた肖像画や、美しく磨き上げられた甲冑が等間隔に並んでいた。


 「……」


 「……」


 お互いに言葉はない。


 サクラ女王は優雅な足取りで前を歩き、俺は一定の距離を保ちながらその後ろを歩く。


 ちなみにアカネは途中で騎士の一人に案内され、別室へ向かっていった。


 もちろん、俺達だけというわけではない。


 数名の騎士が一定の距離を保ちながら護衛として同行している。


 やがて、廊下の最奥にある一枚の扉の前でサクラ女王が足を止めた。


 他の部屋より一回り大きな、白を基調とした重厚な扉。


 「さて、着きましたわ」


 サクラ女王は静かに振り返る。


 「あなた達は部屋の前で待機していてくださいな」


 「しかし、女王様」


 一人の騎士が前へ出る。


 しかしサクラ女王は穏やかな笑みを崩さない。


 「リュウト様は、そのような方ではありませんわ。それくらいの信用は、もう得ていると思いますの」


 騎士達は互いに顔を見合わせる。


 そして代表の騎士が静かに一礼した。


 「……承知いたしました」


 「ありがとうございます」


 サクラ女王は優雅に頷き、俺へ視線を向けた。


 「どうぞ、お入りくださいな」


 促され、中へ足を踏み入れる。

 室内は王族の私室らしく豪華だった。


 だが、玉座の間のような威厳を前面に押し出した部屋ではない。


 ピンクを基調とした家具。

 窓辺には色鮮やかな花々。


 可愛らしい小物や丁寧に並べられた本。

 どこか少女らしさを残した、一人の女性の部屋という印象を受ける。


 背後で重厚な扉が静かに閉じられた。

挿絵(By みてみん)

 「どうぞ、お掛けになってくださいな」


 「いえ、私は立ったままでも」


 サクラ女王は口元へ手を添え、小さく微笑む。


 「ふふっ。構いませんわ。この部屋は私の私室ですし、完全防音ですの。どうか肩の力を抜いてくださいな」


 「ですが、女王様と一庶民です」


 「こんな短期間で、しかもそのお歳で、ここまでの功績を残す方が本当に庶民なのかしら?」


 「……」


 「えぇ、そうですわ。アナタは目立ち過ぎています」


 少しだけ困ったように肩を竦める。


 「城でも色々と手を回しておりますのよ」


 「申し訳ありません」


 「でしたら、お分かりになりますわよね?まずは敬語をお辞めになって私に話してみてください?」


 正直、このテンプレートは少し抵抗があった。


 できれば渡りたくなかったが……


 「……女王様には敵わないな」


 サクラ女王は満足そうに微笑む。


 「よろしいですわ」


 “女王様、もしくは身分の高い人と親密な関係になる”


 異世界作品では、よく見かけるテンプレートだ。

 だが現実的に考えれば、勇者であっても相手は一国を治める女王。


 こんな砕けた口調で話していい相手ではない。


 日本人ならなおさら抵抗があるんじゃないか?


 例えるなら、大統領へ敬語を使わず話すようなものだ。


 ……いかん。


 ここは異世界。


 そして俺は異世界の主人公だと仮定しろ。


 異世界の主人公は、そんな身分など気にせず堂々と目上の人にタメ口だ!


 テンプレートを信じるなら、ここは乗るしかない。


 「ハハハ……それで、何ですか?」


 俺は座り、魔法で出された紅茶を飲む。


 「まず、お聞きしたいことがありますの。」


 サクラ女王は向かいのソファへゆっくりと腰掛ける。


 「リュウト様は、おいくつでいらっしゃるのかしら?」


 「異世界に来た当初は十六歳だった。あれから一年ほど経ったから、今は十七歳かな?」


 「そう……私とそれほど歳は離れておりませんのね」


 サクラ女王は穏やかに微笑んだ。


 「でしたら、この部屋では“リュウト”とお呼びしてもよろしいかしら?」


 「好きに呼んでくれて構わないよ」


 「ありがとうございます」


 そう言うと、サクラ女王は静かに立ち上がり、こちらに背を向けドレスを脱ぎ始めた。


 「っ!?」


 思わず視線を逸らす。

挿絵(By みてみん)

 「あら? 目を逸らしますの?」


 どこか意外そうな声だった。


 「てっきり、アオイちゃん以外には興味がないだけかと思いましたけど」


 恥ずかしいとか、そういう問題じゃない。女王様が言ってる通り、女の裸なんて、俺からすれば医者が手術で見る人体と大差ない。……アオイさんだけは別だけど。




 “女王の裸を見た”


 その事実が十分すぎるほど問題だ。






 「それとこれとは話が別ですよ!」


 


 サクラ女王は小さく微笑む。


 「ふふっ、では命令です、私をみなさいリュウト」


 静かにドレスを肩から下ろしていく。


 露わになった肌。


 そして__


 「【魔力操遺感病】……」


 その肌には“血管で”魔法陣が浮き出ていた。



 俺の呟いた病名にサクラ女王は驚く様子もなく、静かに頷いた。



 「流石ですわね」


 「年齢と共に高まる魔力に対して、それを操るための肉体機能が追いつかなくなる病……」


 本来、この世界の人間は歳を重ねるほど魔力量が増加していく。


 だが、この病に侵された者は、その増え続ける魔力を制御する機能が欠損。


 壊れた制御機能を補うため、脳が無理やり魔力制御を引き受ける。


 その結果、脳へ過剰な負荷が掛かり、身体の機能を一つ、また一つと失っていく。


 歩くこと。

 食べること。

 話すこと。


 やがて呼吸すら、自力ではできなくなる。


 「えぇ。その認識で間違いありませんわ」


 サクラ女王は下着も全て脱ぎ捨てる。


 「この病をご存じなのは、ごく一部の人間だけ」


 「そして今日、その一人へリュウトを加えました」


 「……それは光栄だけど、なぜ?」


 国家機密と言ってもいい。

 王族、それも一国の女王が患う病だ。


 こんな秘密を俺へ打ち明ける理由が分からない。



 「お願いがあります──勇者リュウト」




 サクラ女王は一歩、俺へ近付く。


 静かに息を吸い、覚悟を決めたように口を開いた。












 「私との子供を作って欲しいのです」
















 ……はい?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ