#97 暗闇
夜の森は真っ暗だ……木々たちが月明かりも星明かりも遮ってしまうから……。
暗闇に何か光るのトラウマなんだよなー。ネズミじゃないよね?(エリッキュン)
「こっちだ。ここを左に行けばすぐだ」
闇の先から声が聞こえた。
ユラユラと光るランタンが、ゲイルの顔をぼんやりと浮かび上がらせている……。
「待ってよ……」
暗い……森の中はかなり暗いのだ。
鬱蒼とした木々が、まるで光を飲み込むように覆い被さってくる。
……ゲイルはなんであんなにさっさと歩けるんだろう?
ふと目を離した隙に、ゲイルの姿が消えた?
瞬間、真っ暗になった気がして立ち止まってしまった。
何処からか、ホーホーというフクロウの声がする。森の奥からギャーギャーと大きな鳥のような鳴き声がやけに耳に響いてくる。
ガサガサと何かの生き物が蠢く気配を感じた。
持っているカゴの中からも“ヴゥ──ヴゴォア──ジャグァ──”と聞こえてきそうだ……。
「……………ゲイル………何処……?」
自分の心臓が速く鼓動するのを感じた。
うう……なんか怖いんだけど……。
「エリック、大丈夫だ」
ぽんっとライオネルの手が肩に置かれ、ぐっと握ってきた。
「ライオネル……!」
そうだ。危険察知能力の高い王子がついてたんだった!
あー良かったぁ~森の雰囲気に呑まれるとこだった。
「おい、何やってる、こっちだ。ここを降りるぞ。気を付けろ」
岩影の向こうからひょっとゲイルが現れた。
なんだ、消えたんじゃなくて岩で見えなくなってただけだった。
「今行く」
ゲイルの跡を追うように岩影の向こうへ行った。
「うわ……」
いきなり視界が開けた。
そこは急な坂になっていたのだ。
そして、
ザパーン……ザパーン……
黒くうねるように波が岩肌にぶつかり、水しぶきをあげていた。
……夜の海って……なんか怖い……
「エリック、足元に気を付けろ。滑るぞ」
そう言って下からゲイルが手を差し出した。
「エリック、カゴをこっちへ」
そう言ってライオネルがカゴを持ってくれた。
いや、俺はお嬢様かい!
何なん?二人してレディ扱いしすぎじゃない?
カゴ抱えてジャンプすりゃいけるっつーの!
「──ん」
って、色々思うところはあれど、めんどくさいのでライオネルにカゴを渡し、ゲイルの手をとろうとした。
差し出された手をぎゅっと掴んだ途端、
「──跳べ」
そう言って、ぐいっと引っ張られた!
「わっ……」
ボスンッ!
「!!」
急に引っ張るから……って……。
ゲイルの腕の中に飛び込んでしまった!
「──っごめん……」
慌てて離れようとした。
……それにしても……改めてみると……うわっすごい胸筋だ。固くて圧が……細マッチョってやつだな……腹筋も硬い……シックスパックだし……羨ましい……さすがイケメン……
「……いつまでひっついてる?」
呆れたようなライオネルの声が聞こえた。
「へっ!?」
「……良いとこだったのに……」
──俺ってば、思わず筋肉撫でてた!?
いや、あんまり理想的なマッスルで……って……うわぁーーーー!変態だ!赤毛の小動物な上に変態が加わってしまう!
「失礼しましたぁ!」
バッと離れた。
「別に好きなだけ撫でていいぜ?まぁ何か起こっても自業自得だけどな」
ニヤリと笑われた……。
「──遠慮しときます……」
何やってんの……エリック……いや、今のは俺か……。
「ほら、ふざけてないで海に返すぞ」
ライオネルからカゴを渡された。
「そうだな、時間があまりない。ライオネルは向こうの岩影に、エリックはあそこの窪んだ所に撒いてくれ。潮の流れが沖へ向かう場所だ」
「「了解」」
早速二手に別れ、俺は指定された窪んだ場所に行った。
カゴを開け、中から青い物体Xの入っている箱を取り出し、蓋を開けた。
“ヴゥ……ヴァォァ"……グャグァ……”
なんとソレは嬉しそうにユラユラと揺れていた!
──X……お前、嬉しいのか!そうか……故郷に帰れるんだな……
「……ヨシヨシ……今、海に帰してやるから……」
──短い間だったけど、楽しかったよ、X……。もう二度と来るんじゃないぞ……
静かにXを海に注いでいった……
「バイバイ……元気で……」
沖へ沖へと流れて行くXを、エリックは清々しい気分で見送ったのであった──!
友情が芽生えたエリックとX!
二度と会いたくないけどな!




