#96 ミッション
海は静かに全てを飲み込んでくれる。
古代の海はほんの小さなバクテリアから生命を誕生させたのだ!
ありがとう、海よ……
「海はすごいよね。多種多様な生物を育み、全てを何処までも深く飲み込んでいく……生命の源だよ」
セリウスがうっとりとそう言いながら、リゾットを皆の皿に取り分けていく。
皆、無言で目の前に置かれたリゾットを凝視している。
俺も見つめてしまった。
見てるだけでげんなりする。
青い食べ物がこうも食欲を失せさせるとは……
……リゾット?から、妙な圧力を感じる。何か、別の生命体に見えてきた……。
一際濃い青が2つ、目に見える。
その下にある深淵のような青い小魚が口に見える……。
ソレはウネウネ動きだし“ヴァァ──ヴゴォア──”と形を変えながら、こちらに迫ってきた!
「──生きてる!?」
思わずガタッと立ち上がり、その物体から距離をとった!
「エリック~照れるよ!僕の料理にそこまで生命を感じてくれるなんて……」
ガシッとセリウスに肩を押さえられ、ストンと椅子に座らされた。
「ふふ……流石エリックだ。嬉しいな……ねぇ、今夜は一緒に寝ようよ。二人で海洋生物について語り合おう……」
後ろから抱きつき、セリウスが耳元で囁いた……。
「…………セリウス……」
ギッギッギッとぎこちなく首を回し、セリウスを見た。
甘いハチミツみたいな蕩けるオレンジの瞳とバッチリ目があってしまった。
うわぁ……ヤバい……背中が恐怖でゾクゾクする……。
「……まずは召し上がれ……感想を聞かせてよ」
右手にスプーンを持たされた。
「──…………」
震える手を何とか押さえ、スプーンで一掬いした。
“ヴァァ──ヴゴォア──”
ああ、ごめんよ……父さん、兄さん……先立つ不幸をお許しください……エリックは謎の青い生命体に内側から食われ、命を落としてしまいます……
周りを見回した。
固唾をのんで、こちらに注目している!
いや、誰も食ってねぇじゃねぇか!
くそっ俺は実験台か!!うぅ~~~~!
セリウスの目が怖い!
「くっ…………い、いただきます……」
覚悟を決め、目を瞑り、パクっとスプーンを口に突っ込んだ!!
モグモグ、ゴックン!
「──………………あれ?………………」
……普通に食べられる…………?
「……美味しい……?」
「──だよね!!良かったぁ!味には自信があるんだ。ふふ、おかわりいっぱいあるから心ゆくまで食べてよ!あ、簡単なスープも作ってくるね、待ってて!」
バンッとエリックの肩を叩き、上機嫌でハウスに向かって行った。
その背がハウスの中に消えた途端、
「バカエリック!何誉めてんだよ!セリウスが張り切っただろうが!」
ゲイルに叱咤された!
「ええ、びっくりしたわ。まさかスープまで追加するなんて……」
ルルカが頬に手を当て、小首を傾げ言った。
「また青い何かかな?」
ユリアが遠い目をして呟いた。
「だから言ったろう?味の問題ではないんだ。こう……食べたら呪われそうな……この謎の物体を作り上げる感性が問題なんだ……」
ライオネルが頭に手をやり、はぁっとため息をついた。
「…………ごめん…………」
いや、確かに見た目最悪だけど、味は悪くない。そこまで毛嫌いするほどじゃ……。
チラッとリゾットを見た。
“ヴゥ──ヴゴォア──ジャグァ──”
……いや、やっぱ食べる気にならん……少量ならまだしも、こんなにあったら見ただけで具合が悪くなりそうだ。逃げ出したくなる。
「……どうしよう?」
「……取り分けられたモノは……きちんと頂こう。スープも、まだましだろうし……だが、あの大皿のものは今のうちに処分しよう」
ライオネルがしばし考えた末、答えを出した。
「処分って?」
捨てるったって何処に?目立つだろ。
「海のものを海に返すんだ」
キラッと目を光らせ、ライオネルが言った。
「なるほど。元々青いし、今は夜だ。うまく溶け込むな」
「魚の餌ね!」
「無駄にならない」
「賛成だわ!」
「決まりだな」
ライオネルがガタンと、席を立ち、命令を下す王のように右手をあげ、指示を出した!
「ルルカ、ユリア、二人はセリウスの所へ行って時間稼ぎをしてくれ。ゲイルは証拠が見つからない場所の選別と案内を頼む。エリックはカゴを2つ探してきてくれ。私はコレを運べるようにしておく」
「「「「了解」」」」
「善は急げだ。始めるぞ」
ミッションスタートだ!
またまたミッション発動!
果たして無事に生還できるのか?




