#86 推しが泣いた
只今エリック内の小心者悟ルンは、恐ろしさのあまり小さくなってます……
※現実では……
「くぅ~~エリックってば、可愛いいぃぃ!」
涙目で見つめるエリックが、すっごく可愛いいい!スチル欲しい!
「ほんとに~誰がエリックを泣かせたの?」
少し前にログハウスで従者が一人もいなくなり、不安がっているルルカを慰めていた。
何とか気持ちを落ち着かせ、リビングに行ってお茶を飲んでいたら、とんでもなく険悪な4人が現れたのだ。
誰をクリックしても『怒っているようだ』としか出てこないし。
ルルカとキッチンに逃げ込んで作戦を立てた。
現実のスマホで『リラックスできる飲み物~』を検索してヒットしたのがミルクティだったのだ。
ミルクティには、味の濃いシュークリーム等が合うって書いてたので、それも用意した。
「ほんと、美形が怒ったら超怖いよ……」
攻を奏したのか、入ってきた時のツンドラみたいな雰囲気は消し去れた。
いったい何があったのか……。
「ユリアがなぁ~女の子だから、部屋に突入出来ないのが、もどかしいよね~」
ポチポチと、あちこちクリックしてみるが、何も出てこない。
その時、カチャカチャっと玄関のドアが開く音がした。
あ、アイツ帰ってきたのかな?やっぱり何処か出掛けてた?
コンコンコンとドアが鳴った。
「俺だ。入って良いか?」
「へ?あれ?」
違った。昌ルンの声だ。
パッと時計を見たら、夕方の5時だった。
……帰ってくるの、早くない?
いつもは飲みに行ったりして、夜中近くになって怒られてるのに……。何かあったのかな?
「ちょっと、待って」
……このゲーム、リセット出来ないけど……セーブは出来るから……
とりあえず、セーブをして、ゴーグルを外し、ドアに向かった……。
******
ユリアとルルカが給仕が終わったところで、気をきかせ、部屋へと戻っていった。
お茶を飲み、シュークリームを口にして、大分皆も冷静になっていた。
「えーと……まず……皆ちょっとずつ勘違いしてる気するんだよね……」
すーはーと一息入れてから、セリウスが話し出した。
皆の目がセリウスに向かった。
「……僕の見解を言っても良いかな?」
「誤解だと言うのか?だが……」
ライオネルが反発して話し出そうとした。
「ん、ライオネル、先に僕の話しを聞いてもらっていい?」
「………………分かった」
「ありがとう。あのさ、まず、エリックは皆が何故怒ったのか分かってる?」
薄く笑いながらエリックに問いただした。
「……セリウスに一緒に寝てくれって頼んだから……」
ボソリと言った。
「………………うん、間違ってないんだけど……そういう事じゃないんだよ?」
おしいが不正解!とばかりにピクッと眉が動いた。
「??」
エリックは思い当たりませんって顔をしていた。
「あのね……あ~もう!ライオネルとゲイルは自分達が選ばれなかったのがショックだっただけ!分かる?」
面倒になったのか、一気にぶっちゃけるように言った。
「──え?」
「ほらぁ、分かってないじゃん!だから、二人は何で自分じゃなく僕を選んだのかって拗ねてるんだよ!」
「………………ええ?でも……」
「それが正解なんだよ!まず第一の原因であるそこを勘違いするから、ややこしい事になるんだ。全く……で?エリックはどう思ったのさ?」
「…………ボクが……始めからソファーに行くって、自分から言わなかったのが悪かったのかと……」
「…………何故だ?」
ライオネルが聞いてきた。
「ライオネル、まずは聞いてってば……」
割って入ってきたライオネルを牽制するように言った。
「ちゃんと“質問”るだろう」
「でた、屁理屈……はぁ……で?エリック、続きは?」
「……その……ここは……王政で……公爵家のゲイルの島で……ライオネルは王子様で……伯爵家が偉そうに侯爵家のセリウスがいいとか言っちゃって……皆はボクと同じ寝具で寝るような立場じゃなかったんだって……思い出して……それで…………怒ってるんだと」
「──エリック……!」
グッと拳を握ったライオネルの背後から、おどろおどろしいオーラが溢れてきた。
横で黙って聞いていたゲイルからも、禍々しい真っ暗な闇が広がっていくようだった。
「ライオネル!ゲイル!頼むから……」
慌ててセリウスが止めに入った。
その時──
突然エリックが、ガバッとテーブルに両手をつき、頭を下げたのだった。
現実とは時間の流れが違うよ!




