#85 リビングにて
よい香りの紅茶と甘いお菓子って、ほっとするよね。
コーヒーもいいなぁ。
リビングではユリアとルルカがお茶を飲んでいた。
4人が来たことにユリアが気づいた。
「あ、紅茶を淹れたのよ。皆も…………飲む……」
だが、4人のただならぬ雰囲気に、言葉を飲み込んでしまう。無言で佇むメンバーに、声をかける事すら躊躇ってしまった……。
──な、何があったの?凄く、怖い雰囲気なんだけど……喧嘩したのかな?エリック……目元が赤いし少し腫れぼったいよ……泣いたの?……誰かが、エリックを……泣かせた?……信じられない!
「えーと……ありがとう、ユリア。お茶淹れてもらえる?」
セリウスが片目を瞑り、ちょっと首を傾げつつ、手を顔の前で合わせ拝むように頼んだ。
「あ、うん、分かった。ルルカも手伝ってくれる?」
「え、ええ、もちろん」
その雰囲気に当てられ、動けずにいたルルカがハッとして立ち上がり、二人でそそくさとキッチンに向かった。
「──まぁ……皆、まずは座ろうか。立ってたらお茶も飲めないしね。エリックはこっちへおいで」
そう言って率先して座り、エリックに向かい、ポンポンと自分の隣に座るようソファーを叩いた。
促されるように、エリックはポスンとセリウスの隣に座った。
ふぅーっと息をはき、ライオネルがエリックの前に座った。
足と手を組み、視界を遮断するかのように無表情で目を瞑った。
ライオネルの隣に、無言でゲイルがドスッと座った。
こちらも足を組み、苛立ったようにゆらゆら足先を揺らしながら、両手を背もたれに凭れさせ、フイッと横を向いてしまった。
「……二人とも、大人気ないな……」
ポソリとエリックにだけ聞こえるような小声でセリウスが呟いた。
シーンと誰も何も話そうとしないまま、時間が過ぎていった……。
ふわっと良い香りが漂ってきた。
キッチンからユリアとルルカが、盆にティーセットとお菓子を乗せて現れた。
「…………お茶、淹れました……ロイヤルミルクティーにしたの……」
「シュークリームもあったから……」
ユリアとルルカの小さな声が、その静寂を壊してくれた。
「ありがとう!!助かるよ、二人とも!」
それはセリウスの心からの叫びだった。
黙ってお茶の用意をしてくれた二人は、まさに天使のようだ!改めて二人を見直したセリウスであった。
「ん、美味しい……皆も飲んで」
一口飲んだセリウスが、皆に飲むように勧めた。
それでも、なかなか飲もうとしない皆に、
「……二人が淹れてくれたんだ。ちゃんと飲みなよ。礼儀に反するよ」
鋭い一言をはいた。
ふと目を開け、ライオネルが目の前のほんのり甘く薫る紅茶を見つめ、カップを手に取り、一口飲んだ。
「──美味しいよ。ありがとう、二人とも」
ライオネルが少し微笑みそう言った。
それを皮切りに、皆が飲み始めた。
「ああ、バニライトのミルクティか……」
ゲイルも気を削がれたのか、良い香りのする紅茶を美味しそうに飲んだ。
エリックもそっとカップを持ち上げ、こくこくと飲み、落ち着いたのか、ホッと息をはいた。
「────申し」
「美味しいよね、エリック!」
と、セリウスがガシッとエリックの肩を持ち、ギリリッと圧力を加え、バンッと背中を叩いた。
“訳ありません“と言おうとしたらしい事を、素早くキャッチしたセリウスが、目でエリックに語った!
“余計なこと言うなよ?”と。
「────美味しい……ありがとう」
さすがに意図を理解したのか、それだけ言ってまた飲み始めた。
「どういたしまして。おかわり、いる?」
ユリアもホッとしたようにそう言った。
「頂戴」「ああ貰おうか」「俺も入れてくれ」
と、次々に声がかかり、少し緩んだ緊張感に、ユリア達は心の底から安堵したのだった……。
「……………………」
美味しいな……ユリアちゃんが淹れたんだよな?さすが主人公だ。こういうとこまでスペック高い。それに比べて……俺、へましたなぁ……!
どうすんだよ?この雰囲気……逃げ出したい……まぁ、二人のおかげでちょっとマシになったけど。はぁ……
おかわり欲しいなーとユリアを見たら、バチッと目があった。
瞬間、悲しそうな顔をされた。
──え?何だ?……もしかして残念なやつ認定された?そりゃ首根っこ捕まれて保健所に連れていかれる野良猫みたいだったけど……いや、同情されたのか?……どっちも嫌だな……。
思わず目を逸らしてしまった。
「……エリックもおかわりどう?」
エリックが悲しそうに目を伏せてしまった。
やっぱり喧嘩したんだ……捨てられた雨の中の子犬みたい……。ごめんねエリック!助けてあげられなくて……
エリックが涙で潤んだ瞳で、もう一度ユリアを見た。
「──うん……貰えるかな?」
そう言って、そっとカップを差し出した。
場を和ませてくれる二人は、流石だよね。女の子っていいな(セリウス)




