#76 3日目の朝
提出物のチェックをしましょう。
学年会ズは優秀じゃなきゃね!
今日はライオネルが提示した宿題の提出物期限の3日目──
全員で、各自の提出予定のレポートを読み回し、問題がないかのチェックをし、訂正をしたものをまたチェックする……。
そんな事を繰り返し、夕飯までには全員の宿題を終わらせる予定となっている──
「…………朝か……良い天気だなぁ……」
昨夜ゲイルに押し掛けられ、キ……された気がした。
悶々として眠れない、と思っていたが、ブラックダイヤ家直伝の秘薬を飲んだら、朝までぐっすり、あら爽快!で目が覚めた。
昨日、俺は疲れていた。
それを哀れに思ったゲイルが栄養ドリンクの差し入れついでに、お休みのキ……しただけだ。
アレは挨拶で、きっと貴族の間ではよくある事なんだ。
「うん、そうに違いない……」
ふ……ゲイルのヤツ、また俺を揶揄う気だったんだろう……俺がライオネルの話をしたもんだから……生憎俺はもうそんな手には乗らない!
顔を洗い、着替え、身支度を整える。
窓辺に行き、カーテンを開け、窓を開けた。
朝の爽やかな風が吹き込んできた。
青く澄んだキラキラした空を見上げた。
あ~~爽やか~~~!
大人になったなぁ~~俺!もうキ……一つで慌てたりしないゾ!この空のようにドーンと大きな心でハハハハと余裕こいてやる!
「ふはははははは!わはははは!」
ドリンクの影響か、変なテンションのエリッキュンだった…………
「今日は、提出日ね……」
緊張のせいか、朝早くに目が覚めてしまった。
昨日一通りの事は終え、皆に見られても良いように何度も確認して完璧に仕上げた、つもりだ。
──出来る女としてはやっぱり一度でOKもらいたいな……ユリアなりに頑張ったもの、大丈夫よね。
身支度を整え、リビングに行く準備も完璧にした。
……でもまだ朝食まで時間あるんだよね~どうしようかな?
手持ちぶさたで部屋を見回した。
カーテンを開けると明るい光が射し込んだ。
窓を開け、朝の空気を室内に入れた。
あー、良い風……爽やかで…………ん?
何処からともなく“わはははは”という笑い声が聞こえた。
「え……誰……この声……」
ゲイルではない。ライオネルも違うよね?セリウスも違う気がする。
…………まさか…………
「エリック……?」
ひょいと窓から顔をだし、声のする方を覗くと、その声の主らしい部屋のカーテンがはためいているのが見えた。あそこは……
「やっぱりエリックだ……」
えー?意外なんだけど。
エリックってあんな笑い方するキャラだったけ?
……いや、今回のエリックはいつもとは違う。同じで考えてはいけないのだ。
「エリックも起きてるのか……そうだ」
鏡を見て、もう一度身だしなみを整えた。
「──よし!」
ふんっと気合いを入れ、エリックの部屋を訪れることにした。
コンコンコンとドアが鳴った。
「──!!」
思わずビクッとして窓を閉め、カーテンにくるまった。
……え?まさかゲイルじゃ……。
いや、別に大丈夫だけど?昨夜の事なんかとるに足りない事だけど?俺は大人になったし、全然ビビってない!
「──はい?」
蚊のなくような声が出た。
「──エリック、ユリアです」
「!ユリアちゃん、待って」
カーテンに隠れていたが、急いで飛び出しドアを開けた。
その瞬間、明かりとりの窓から光が降り注ぐようにユリアに当たり、まるで後光のように輝かせた。
「──おはよう……」
目を細め、呟くように言った。
さすが主人公……綺麗だなぁ……
「おはようエリック。朝食まで時間あるし、一緒に散歩しない?」
ニッコリ笑ってそう言った。
なんと、ユリアから突然のお誘いがきた!?
こんなの、逃せる訳がない!
「行く」
即答した。
「良かった。まだ皆寝てるだろうから、こっそりね」
耳元で鈴の音みたいなユリアの声がした。
「ん」
うお~かぁわいい~!
やっぱこれだよなぁ?乙女ゲーなんだから女子と絡まないとさぁ。なんでか男とばっか良い雰囲気になってんだもんな~エリックのヤツ……やぁっとまともな恋愛モードきたか!
音をたてないように、そっと静かにドアを閉めた。
二人で抜き足差し足で階段を降り、裏口から庭に出たのだった。
「──きれいな海……キラキラして……」
朝日を受け輝く海を眺めながら、ユリアが言った。
「うん……」
同じく海を眺め、同意した。
く~~なんか緊張する!
ここで「君の方が綺麗だ」とか、歯の浮くようなセリフを言えたらいいんだろうけど……無理!恋愛経験0の俺に、女子を何気に誉めるとか、ハードルが……いや!ダメだ。ここで頑張らないと、頑張れ!エリック!
ごくりと唾を飲み込んだ。
言え!言うんだエリック!
「……その…………ユリアちゃんも…………綺麗だよ……」
聞こえるか聞こえないかの小さな声しか出なかった。
「え?」
きょとんとユリアがこちらを見た。
「──っ!」
あわわわわ!もしかして声が小さすぎて聞こえなかった?いや、そんな可愛い顔で見られたら恥ずかしいわいっ!
カア──ッと顔が赤くなるのが分かった。
「ふふ、ありがと。あ~なんだか気が抜けちゃったな」
笑いながら、はあーっとユリアがため息をはいた。
「──緊張してた?」
もしかして、ユリアも緊張してたのか?
「うん、ちょっとね。エリックと二人きりって久しぶりでしょ?こっちに来てからはあまり話してないような気がして……」
「──ボクも……そう思ってた」
なんだ、同じだったんだ。そうか……。
二人で顔を見合せ、お互いホッとしたように笑い合ったのだった──。
エリックとユリア。なんだか似た者同士なんだよなぁ……




