#75 追い込み
全員集合。
宿題頑張るぞ!
色々な事が追い込みです……
各々の仕事を終え、全員が別荘に集合したのは夕飯の時間の少し前だった。
静かに夕食を終え、全員が風呂から上がったところでミーティングが行われた。
「3日で終わらせよう」
ずらりと皆から集められた資料を前に、ライオネルが宣言した。
「……え?」
3日?いやいやいや、これ資料の精査だけでも大変じゃない?1週間はかかりそうなんですけど。
「今日はカウントしない。明日から3日間で仕上げ、提出できるまでの物を作る。確かに大変だが、人手もある。有効に活用し、皆頑張ってくれたまえ」
ニッコリ笑って宣った。
ライオネルの無茶振りきた──!
「──それって…………」
そりゃ多忙な王子様の処理能力は凄いかもしんないよ?でも俺は、そこまで仕事した経験ないし、余裕を持って物事に取り組んで……
「わかったわ。燃えてきたー!」
「いいんじゃないか」
「OK!早めに終わらせたいよね」
「畏まりました」
え、ウソ、皆、あっさり承諾した!?
時間欲しいのって俺だけなん?皆……優秀過ぎるだろ……。
「──頑張るよ……」
うわぁ……エリックだったら即OKしたのかもしれない。でも中身俺だしな…………スマン、エリック…………。
黒子のように各人に従者たちがつけられた。彼らは集められた資料や本を整理しつつ、手足となり働く事となったようだ。
かくして地獄のような勉強漬けの3日間が幕を開けたのだった──。
*****
「ふう……疲れたぁ……」
部屋に戻り、ごろんとベッドに横になった。
時計を見ると、真夜中を過ぎていた。
受験生である俺だが、こんなに一日中勉強漬けな日々をこの世界で送るはめになるとは思いもしなかった。
この二日間、資料をまとめ、論文を書き、提出物を揃えるのにほとんどを費やしている。
「──まぁ……でも良かったかな……」
ぼそりと呟いた。
初日はぐだぐだ色んな事が頭を巡り、なかなか集中出来なかった。
だが、皆の真剣な様子に影響され、いつの間にか目の前の宿題に打ち込むようになった。
そうして、勉強に没頭していたおかげで、例のキ……を忘れられた。
なんとなくギクシャクしてたのが、以前と同じように変な意識をせずにライオネルと話せるようになっていた。
だいたい、あれは事故だったのだ。
意図的にしたわけじゃないので、やはりノーカンで良かったのだと時間が経つにつれ納得していけたのだった。
「──ま、ただぶつかっただけだしな。大したことじゃ無かったんだよな~」
うんうん、俺も大人になったよなぁ~
目をつむり、一人ベッドの上で頷いていると、コンコンコンと、ドアがなった。
今頃誰だ?真夜中過ぎてんだけど……
「──はい?」
「起きてるか?入るぞ」
低い、甘い声……ゲイルか。
「──何?ボクもう寝るんだけど……」
「まだ起きてるだろ」
そう言ってカチャッとドアを開け、勝手に入ってきた!
「──…………ゲイルって……ほんと……」
強引過ぎないか!?
俺、寝るって言ったよな!
つまんない用事だったら追い出してやるからな!
「──何?どうしたの?」
そういやゲイルと話すのも二日ぶりか。
この二日間、ほとんど皆とも挨拶ぐらいしかしてないもんな……。
「これ」
椅子に座り、そう言って何やら綺麗な瓶に入った液体を取り出し、テーブルに置いた。ついで、小さなコップも置いた。
「──何?」
俺も椅子に座り、その瓶を手に取り眺めた。
「ブラックダイヤ家秘伝の栄養ドリンクだ。飲んでみろ」
「──栄養ドリンク?へぇ…………」
いや、てか、今飲んだらダメじゃない?寝る前に元気になっても仕方なくね?
「これはよく眠れる。寝てる間に心身共に回復してくれる秘薬なんだぞ」
「そうなんだ……え?わざわざ持ってきてくれたの?」
「──ああ。お前、変に疲れた顔してたから」
「…………ありがとう……」
ちょっと驚いた。
ゲイルって見てないようで、見ているよな。強引だけど、優しいっていうか……。
「…………お前さ……ライオネルと何かあったのか?」
「──へっ!?」
急にライオネルの名前が出て来て、ドキッ!とした。
は?何でここでライオネル!?
「──あったんだな。何があった?」
確信したかのようにそう言った。
「っ関係ない!あ、いや、別に何もない!」
ひょえ~!頭ボンヤリしてるとこに直球きたから誤魔化せなかった!
「いや、どう見てもあったろ。お前、変にライオネルを意識してたし、妙な雰囲気だった。俺に言えないことか?」
「──っだから、何かあったからって、ゲイルに言う必要ある!?関係ないだろ!」
そうだそうだ!どうしていちいちコイツに報告しないといけないんだ!?全然、全くそんな必要ないよな?
「……あるさ。ここは俺の家だ。ホストとしてゲストの動向は把握しておくべきだろう」
「──それは……」
え?それって関係ある?……関係あるのか? なくない?
ああ、ダメだ。眠いのと疲れたので頭が上手く働かない……。
「…………ほんとに、大したことじゃ……」
「言ってみろ」
その生活指導の先生のような威圧感に、何だか報告しないといけない気になってしまった。
「──図書館に行った時に……馬車が揺れて…………ライオネルとぶつかって………………それだけ!!」
うわっ途中で覚醒してきた!
やっぱ言わなくていいよな!?こんなん超個人的なことじゃんっ!それにもう落ち着いたんだし!
「は?そんな訳ないだろうが」
ガシッと肩を持たれ、グッと引き寄せられ、睨め付けるように赤い瞳で睨まれた。
こっわ~~~~!!
怖い、怖い!野生の王様来た!
この目を向けられると、俺はライオンに睨まれた小動物になった気がするのだ。
怖くて逆らえない──っ!
「…………ぶつかったのが……口で……キスしたみたいになって……ちょっと、しばらく意識してたっていうか……大したことじゃないだろ……?」
迫力に押され、告白した。
「…………たったそれだけ?」
「!!そう、それだけっ!」
だから何でもないって言ったのに!
この恋愛慣れした攻略対象者達にとって、俺以外にはほんの些細な事なのだ!
そう、エリックだったらスルーしてる程の、どうでもいい程度の事だって分かってる。
中身がチェリーな俺だから……。
くっそーーーー!腹立ってきた!
「もう出ていけよ、バカ!」
腹立ち紛れに暴言を吐いてしまった!
「──あ?」
ギロリと赤い瞳の奥に、炎が灯った気がした。
「………………ごめん……」
こわっ!やらかした!?
「…………良いだろう。出ていく」
カタンっと席をたち、スタスタとドアに向かった。
え?何もない?殴られるんじゃないかと思ったのに……。
「──おい」
「──へ?」
「来い」
呼ばれてドアの方に向かった。
ゲイルの真正面に立ち、見上げた。
じっと、先ほどとは違う不思議な者を見る目で俺を見た。
「──?」
「──ちゃんとソレ、飲んどけよ」
徐にゲイルの手が頬にかかった。
「……分かっ」
フワッとグレーの髪が目の前を覆った。
思わず目を瞑った。
唇に柔らかな感触と熱い息がかかった。
「━━!?」
──え!?
「お休み」
スッと離れ、パタンと部屋を出ていった。
━━━━━━━━━━!?!?!?!?
……何…………今の…………?
「……………………えぇ……?」
呆然とゲイルの出て行ったドアを見つめるエリックだった………………。
何があった!?
ゲイルにキ……された!?
いやいやいや、違うよね!?
てか、意味わからん!!!!(エリッキュン)




