#64 ナンパ野郎
悪さはいかんぜよ。
「ライオネル、セリウスありがとう」
ユリアが二人に礼を言った。
「どういたしまして。あの二人、ニックとケビンだっけ?リースではわりと有名みたいだよ。ま、評判のよろしくない方の噂でだけどね」
「──知り合いなの?」
ルルカが意外だという顔で聞いた。
「まさか、人伝に聞いただけだよ。僕は女性関係で揉めたことないんだけど、中には、トラブルを起こす輩がいるわけで……まぁそういった被害にあった女性から、時々名前が上がってた」
やはりあの二人はプレイボーイのようだった。
「彼らも金髪と青い髪だろう?私とセリウスに似てると言われたことがあったんだ」
ライオネルも知っていたようだ。
「そうだったのね!どうりで……それで余計に変な感じがしたのか……」
そう、彼らから偽物臭がした。
作り物の笑顔と台詞が余計に胡散臭かったのだ。
「実物は髪の色の系統だけしか似てなかった訳ね。月とすっぽんだもの……」
うんうんと、ユリアが納得したように頷いた。
「いくら自由恋愛といっても傷つけるような悪さをするのはいただけない。女性の敵は僕の敵だから」
「セリウスのそういうところは頼りになるのよね……」
ルルカがちろりとセリウスを流し目で見ながら呟いた。
「……他の面でも頼ってくれていいんだけど?」
セリウスがにっこりと、花が咲くようにキレイに微笑んだ。
意味深な顔で、ふふふふふと笑いあった……。
「参った」
ケビンがぼそりと呟いた。
「ああ、世の中狭いぜ……」
この街を取り仕切る市長の息子のこのおれ、ニック・パーソンと、マンリスポーツ一流ブランドのコスミコーポレーションの息子ケビン・コスミを、リースの人間で知らない人はいない。
親の七光りに加えてこのルックスだ。誘いを断られる事などなかった。
そう、今回は運が悪かったのだ!
あの二人、後から来たあの二人組!
あれは、ゲイル様の友人の隣国の二人じゃないだろうか!?
昔ずいぶんからかわれたのだ。
偽物だとか、物真似とか、モドキだとか……ひどい言われようだった。
「思い出したんだけど……まさかとは思うけど……あの、後から来た二人ってさ……」
ケビンも思い当たる節があったようだ。
「ああ、そんな気がするよな……うわーなんかやだなー。よし、仕切り直そうぜ!」
振られたのはプライドが許さない。何処かで適当な誰かを引っかけて、遊んで憂さを晴らしたい。
表通りは、またさっきの4人に会うかもしれないので、裏通りで獲物を探す事にした。
表通りほどの人はいないが、隠れた名店も多いので、それなりに人がいるはずだ。
裏通りの狭い道に入り、人を眺めながらぶらぶら歩いた。
…………なんかなーあんな輩を見ちゃうと、皆平凡に見えるよな……いや、あのレベルはめったにお目にかかれない…………はず…………
……え?あれ、誰?
思わず立ち止まった。
少し先の角に見たこともないくらい鮮やかな真っ赤な燃えるような髪をしたヤツがいた。
「──ケビン、あれ、何?」
後ろ姿だが、いかにも美形のオーラがたちこめている。
「なんか、とんでもオーラが漂ってる気がするけど……でも、男だよな……もったいない……」
「……声かけてみるか?」
「いや、だから男だよ?」
ケビンが呆れ気味に言った。
「まぁそうだけど。ああいうのを連れてると、さっきのやつらに気後れしないと思わないか?」
うん、負けてない気がする。
「……それは、確かにそんな気はする」
ケビンも同意した。
「だよな!よし、声かけようぜ!」
さっきの奴らが例外なだけだ。
男でも女でも落とす自信がある二人は、さっそく声をかけにその男に近寄り、ポンと肩を叩いた。
「え?」
振り向いたその顔は──
「──うわ…………」
思わず声が出た。
──なんじゃこりゃ!?本日5人目のとんでも美形なんですけど!!
透き通る海のように青く鮮やかな青い目がクールだ。整った小さな顔は繊細で、思わず見とれてしまった。
「あの、何か?」
声が可愛い!
クールな見た目とのギャップにズキュン!ってなる。
何これ?今日はいったいどうなってるんだ!?
「あ……いや、あの…………」
ニックはドギマギして、うまく話せなかった。
「──なんだ?お前ら」
ヒヤリとするような低い響く声が横からかかった。
──この、声…………
ギ、ギ、ギと音がでそうなぎこちなさで二人は声の方を見た。
「「━━━━ゲイル様!!」」
思わず叫んだ。
うわぁ~~~!!今日はとこっとんついてない!
くそぉっ!何て厄日なんだ!
怖い!この人、怖いんだよ!!
無言で睨まれ、身動きできずにプルプル震えるニックとケビンだった……。
この二人、モブではなかった!




