#52 ボディボード
青い春!
夏だけど、キュンキュンの青い春だよ。
「簡単だろ?」
横に並んで波に乗りながらゲイルが言った。
「そうね」
ボディボードは思ったより簡単だった。
子供でも出来ると言われている、ビート板の進化系みたいなものだ。
ボードの上で回転したり色々技はあるみたいだが、そこまでやるつもりはユリアになかった。
水面が近いせいか、自分が波そのものになったみたいだ。
「ふふ!私が波をおこしてるみたい!」
「調子に乗ると鼻に水が入るぞ」
子供を嗜めるようにゲイルが言った。
「もう!ゲイルってば色気ないな~!」
ほんと、見た目や声や仕草はセクシーなのに、口がね~即物的すぎるよ。
「安心しろ。お前も色気ないから」
ガーン!!
「っあるよ!色気ムンムンだよ?」
「どこが?──まだルルカの方が……」
「ストップ!みなまで言うな!」
私も思った事あった。
ゲイルってルルカみたいなナイスバディの方が好みじゃないかって……。
あ、落ちこんできた……。
「──どうした?腹でも壊したか?」
「だから!どうしてそんな母親発言なの?あなたは私のお母さんですか?」
もう!すぐ子供扱いするんだから……。
でも、好かれてる、と思う。
「そういうんじゃないんだが……そうだな、お前のことは……気になる」
「え!」
「──お前を見てると、昔飼ってたウサギを思い出す。いつもついてきて、可愛がってたのに……突然死んだ。病気だったのか分からん。世話はきちんとされてたんだけどな」
「ウサギ……」
「急にいなくなるんじゃないかと……つい、気になる……」
その燃えるような赤い瞳でじっと見つめられた。
「──ゲイル……」
ドキドキしたきた……ゲイルも、私が……好き?
「お前の健康が」
ニヤリと笑い、流し目で見られた。
「そっち!?私、健康優良児ですけど!」
期待して損した!
「それは良かった」
「~~もう!!ゲイルってば子供扱いして!」
ボディボードに乗っかり、揺れながら話していたが、バチャバチャとゲイルめがけて手で水をかけた。
ゲイルは笑いながら上手く直撃を避けている。
さすが海の子だわ。
「……あのね……前から聞きたいなーって、思ってたんだけど……」
「ああ、なんだ?」
「ゲイルって……好きな人いる?」
どうしよう?聞いて良かった?ちょっと気が早いかもしれないけど……ドキドキする!
「……お前はどうなんだ?」
はぐらかされてしまった。
まぁ……そうか、そうだよね。聞かれていきなり「はい、います」って言わないか……。
でも……。
「……私は……いるよ……」
「──そうか」
誰とは聞かないんだね……。だったら言わない。まだ、言えない。
「うん。ゲイルはいないの?好きな人……」
「……普通に好きなやつはいる」
「……特別は?」
「いないな」
「そっか、応えてくれてありがと!」
……良かった。まだ誰かとステディになろうとは思ってないって事だ。
大丈夫。少なくとも私は嫌われてはいない。
このまま関係を深めれば、いいだけなはず……。
「……次はサーフボードにしてみるか?」
話題を変えるようにゲイルが提案してきた。
「あれかぁ~。ん~~……分かった、やってみる!」
私もそれに乗っかった。
焦っちゃだめだ。
これまでにないくらいゲイルの近くにいる。はじめてしっかりとした手応えが感じられるルートなのに、焦って壊してしまったら……意味がない。
「いい返事だ。行くぞ。一度陸に戻ろう」
「ラジャー、ゲイルコーチ!」
むんっと口を引き結び、敬礼をして、そう言った。
「はは!センパイの次はコーチか。悪くないな。ではいくぞ、ユリア」
ふっと笑いながら手を伸ばし、コツンとユリアの額を優しく突いた。
「はーい!」
うん、やっぱりいい感じ。どんどん距離が近くなってる。ほんとにここに来て良かったー!
そんな事を思いながら、二人で並んで陸まで泳いで行った。
いい感じに攻略中。




