#53 やりたいこと
海でやりたいことその②
ミッション発動!
「あ、ユリア。お帰りなさい」
「ルルカ。どうだった?ボディボード」
「思ったより簡単だったわ。ねぇユリア、二人でボディボードで遊ばない?向こうの方は波が穏やかなの。男性陣には物足りないかもだけど、ボディボ組の私たちなら丁度いいと思うの。ね?行こう」
勢いよく誘うルルカにユリアは戸惑った。
「う、うん……あのね……私……サーフも教えてもらおうかなって思ってたんだけど……」
「あなたが?」
ルルカが目を丸くして驚いた。
「ユリアちゃんもやるの?」
丁度エリックとライオネルが戻ってきた。
「面白そうかなって」
「そう!すごく、面白いよ!ボクもはまると思ってなかったんだけど。自分でも意外だ」
嬉しそうに、はにかみながらエリックが言った。
「溺れなかったか」
ゲイルが意外そうな顔で聞いた。
「実はちょっと水飲んだ。でも、ライオネルがいてくれたから……」
「──ああ、王子様は危険察知能力が高いから安心だ」
「お褒めにあずかりどうも。で、エリック、ユリア、興が乗ってきたところで残念だが、サーフは終わりにしよう。ルルカも」
ライオネルが唐突にそう言った。
「「「え?」」」
「風が強くなってきた。これから波が荒くなるだろう。私たちは慣れているが、君たちは不安だ。続きは明日にでもすればいい。今日はもう海の中は終わりにしよう」
「……まぁ確かに明日もあるしね」
「そうね。ライオネルがそう言うなら、止めておきましょう」
「……分かった。ちょっと残念」
「休みは始まったばかりだ。そう残念がるな──ところで、セリウスは?」
ゲイルがセリウスがいないことに気づいた。
「さっきまでそこにで座ってたんだけど……」
そういえば、という顔でルルカもキョロキョロ探した。
「ヤドカリ探索に行ったのかな?」
ユリアが呟いた。
「あのね、僕がヤドカリ博士みたいに言うの止めてくれる?コレを取りに行ってたんだ」
と、どこからともなくセリウスガ現れた。
そして、手に持っていた緑と黒の縞模様の丸い果物の入った網を持ち上げた。
「あ、スイカだ」
全くもって日本のスイカそのままだ。
「そ。ついでにコレも持ってきた」
長い棍棒と、黒い細長い布をみせた。
「スイカ割りね!」
「当たり。グルグルスイカ割りしよう」
「──懐かしいな。子供の頃よくやった」
ライオネルが目を細め言った。
「だよねー。じゃあ誰がする?スイカは人数分あるみたいだけど、6個も食べられないからね」
「──やってみたい」
一番に手をあげたのはユリアだった。
「よし、じゃあユリアでいい?」
「意義なし」「もちろん」「賛成」「頑張れ」
と、皆の同意を得たのでユリアが割ることになった。
砂浜にシートを敷き、スイカを乗せた。
5メートルほど離れ、ユリアに目隠しした。
棍棒を持たせ、グルグルグルと回した。
フラフラするユリアをおいて、セリウスが皆の所に戻ってきた。
「よーし、いいよ、はじめ!」
パンっと手を叩き、はじめの合図をした。
「ユリア、こっちよ!手の鳴る方に来て!」
「右、右!違う、そっちは左だよ?」
「まっすぐだ。おい、左に進んでるぞ!」
「ユリア、ずっと左に進んでる!そっちじゃ……ああ!」
少し盛り上がっていた砂に足をとられたのか、ズベーッと滑るようにこけた!
「か、感覚がぁ……」
ユリアはまだフラフラしている。大丈夫か?
「ユリア!」
ルルカが思わず駆け寄ろうとした。
「待って、ルルカ」
セリウスが駆け出すルルカを止めた。
「駄目だルルカ。ここで手を貸したら志願したユリアの気持ちを無下にしてしまう。そうだろ?ユリア!」
ライオネルがぐっと拳を握りユリアに語りかけた。
「ああ、そうだ。立ち上がれ!ユリア。まだ任務は終わってない」
ゲイルがライオネルの後を継ぐかのようにユリアに声をかけた。
いつの間にか任務に変わってる?
何かのミッションだったのか!?
「大丈夫、頑張ってユリアちゃん!ゆっくりでいいから……」
ならば応援するしかない!
頑張れ!ユリアーーー!!
「……ごめんなさい皆……心配かけて……大丈夫……私……最後までやり遂げてみせるから……」
ゆらりとユリアが立ち上がった。
持っていた棍棒を握り直し、ふーっと息を吐き、神経を研ぎ澄ます。
「……いいわ。誘導をお願い」
「そこから右30度に方向を転換!」
「右30度!」
「いいぞ。5歩前へ、そこで立ち止まれ」
「5歩前!」
「そうだよ。その場で15度左に方向転換」
「15度左転換!」
「いいわ!そのまま10歩前へ歩いてその場で止まるの!」
「10歩前!」
「振りかぶれ!」
「振りかぶる!」
「「「「「打て!」」」」」
バシーン!!
真上に棍棒を受けたスイカは、弾けるようにキレイに割れた。
「「「「「やったー!!」」」」」」
ワァーッと歓声が上がった!
「やった!やり遂げたわ!」
バッと目隠しをとり、ユリアがガッツポーズをした。
よくやった、偉い、等口々にユリアを褒め称え、その功績に惜しみ無い拍手を送ったのであった!!
なんのこっちゃい!
皆ノリいいな!
盛り上がったスイカ割りの後始末は、遠くで空気と化していた従者がしてくれた。
流石にね……貴族がビニールシートに散らばったスイカを直に拾って食べる訳ないか。
こういうとこ、妙にリアルだよなー。
「よし、じゃあ食べるか」
「「「「「いただきます!」」」」」
青空の下、皆で食べるスイカはまた格別に美味しかった。
ほんと何故か美味しく感じるよね。
風を感じながら仲間と食べる物って、どうしてあんなに美味しいんだろ?




