#42 エリックのセンス
貰ったら嬉しいよ?
でも、ちゃんとよくよく考えようね。
「……これ、本気じゃないよな?」(ゲイル)
「──エリック?」
ユリアが次はあなたよって顔をしてこちらを見た。
そりゃ、当然この流れだと俺が渡す番だよな。うん、分かってる。
でも、注目されるとますます渡し辛いんだけど!
うわぁ……顔が熱くなってきた。ヤバい!くぅ!
「──え……と……。その……深い意味はないんだけど……レッド・クローバーの特産で…………選んだら、こうなって……」
ほとんど聞き取れないようにボソボソと言った。
皆の頭のうえに「?」が見える気がする!
えーい!もうどうとでもなれ!
すくっと立ち上がり、ゲイルの側に行き、
「……どうぞ」
と、グイグイと押し付けるように渡した。
「痛っ、分かったから!なんなんだよ……」
ゲイルが胡散臭そうに受け取った。
出来れば一人で見て欲しい。
だいたい俺にプレゼントのセンスなんか無いんだ!だってプレゼント渡すような友達いたことないんだもん!
ゲイルが箱を開けた。
「──…………へぇ…………綺麗だな……」
それはプラチナ地に四つ葉のクローバーの形にルビーを嵌めた、プレートネックレスだった。裏にはゲイルの名前がカリグラフィ文字で掘ってある。
「──あら、ほんと綺麗。ゲイルに似合いそうね。ね、ユリア!」
ルルカが嬉しそうにニコニコして言った。
「え?ええ……」
だがユリアはなんとなく戸惑ったように、それだけ言った。
やっぱり変だった!?やらかしたか?
「──特産だから…………」
内心焦りながら言い訳のように言った。
「……ああ……そうか……そういう……。うん、そうだな、じゃあつけてくれ」
「……ボクが?」
「くれた本人だろう?」
「そう、だけど……」
なんか恥ずかしくないか?ネックレスを贈って相手につけるとか……。
俺、女子にもしたことナイ……。そもそも彼女いたことナイ……。
いや、これは特産品なんだ!“レッド・クローバールビー”ってくらい有名なんだとイーサンが言ってた気がする!
「分かった。後で……ゲイルの部屋で……」
「…………え?……いや、別に今ここでいい……」
「え?」
……皆の前でつけるより、いいと思ったんだけど……?
しばしゲイルと見つめあった。
妙な空気が流れる。
「……部屋に来たいのか?」
ゲイルが困惑したように聞いてきた。
「エリックってば部屋に押しかけるとか!大胆だね~。ライオネルが嫉いちゃうよ?」
と、セリウスが、クスクス笑いながら、ポケッとしてるエリックを揶揄うように言った。
え?……大胆?何が?
「そのまま押し倒すつもり?」
はぁ!?
ぎょえ~~~!なんか変な誤解されたぁ!?
「━━━━!?っちっ……ち、がっ!!へ、変な意味じゃっっっなっ、い!」
なんで俺が!?
バッカ!セリウスのバーカ!なんでそんな風に言うかなぁ!?
いや、相手ゲイルだし!ユリアじゃないぞ!?
「はははっ!冗談だよ、冗談!かぁわいいなぁ~!エリックは!あはははは!」
セリウスが大爆笑した!
くっ!これ絶対、顔が赤くなってる!
くっそぉ~~~~!バカセリウス!てめぇ面白がってるんじゃねぇよ!!
はっとしてユリアちゃんを見た。
ぐぅっ……ユリアちゃんが苦笑いしている!
「~~~~セリウスのバカ……!」
ボソリと呟き、真っ赤になってるであろう顔を隠し、プールサイドに逃げ出した。
「おい、エリック……」
ゲイルが呼び止めるのを無視して足早にその場を去った。
うぅぅぅ~~ユリアちゃんにまたみっともないとこ見られたぁ!!
もうやだぁ~~~!お家帰りた~い!
「……はぁ…………」
しゃがみこみ、プールの水でバチャバチャと顔を洗った。しぶきが冷たくて気持ちいい。
……ほんと恥ずい……。やっぱ俺にはプレゼントとか向いてないんだっ。
こういうのはリア充がやればいいんだ!そうだそうだ!
「赤リス」
ゲイルの声がした。
「は?ボクはリスじゃないぞ」
立ち上がり、むっと睨んだ。
「いいから来い。びしょ濡れだ」
ゲイルが手にバスタオルを持って立っていた。
呆れたように、でもけして馬鹿にするような感じはなく、バスタオルを広げパサッと被せてくれた。
「……どうも」
「頭、冷えたか?」
「ん……」
「俺は気に入ったからつけてもらおうとしたんだ。お前、過剰反応しすぎだ」
「……だって……」
「はい、はい。ほら戻るぞ」
ぐいっと肩に手を回され、部屋に連行されていく。
ドナドナが聞こえる……俺、犯人Aみたい……。
「まぁでも、ネックレスは驚いたぜ。他のやつに贈るなよ?誤解される」
「誤解?」
「…………交際の申し込みかと思われる」
「は!?そんな訳ないじゃん!だってゲイルは男だし!!」
「ドリーム国じゃ珍しくない。自由恋愛の国だ。一夫多妻や多夫一妻、同性婚もあるし、ペットと結婚するやつもいる」
マジか!!
「──それで……セリウスが…………」
「まぁ、そうだ。お前の事だから知らずにしたんだろうけど。ネックレスを贈るのは“自分のものになって欲しい”って意味もある」
「──────……………………」
うわぁ…………つまり俺はゲイルに愛の告白をしたってこと……?
しかも部屋に行くとか……そりゃセリウスも揶揄うよ……もう……恥か死しそうだ……。
「ライオネルが居なくて良かったな」
ニヤリと笑われ、わしわしと頭を拭かれた……。
恥ずか死ぬ~早くライオネル来てよ!(エリック心の叫び)




