#39 紅茶の香り
匂いフェチ。
香水は好きじゃないけど、いい匂いって脳ミソに刻まれるんだよね。
そう、それは甘くて危険な香り……。
窓から覗くと、行く先にすんごいお洒落で立派な別荘がどどーんとそびえ立っていた。
「……あれが泊まるところ?」
「ああ、そうだよ。いいヴィラだよね~。僕も何年ぶりだろ……」
セリウスが懐かしそうに言った。
うわぁ……すごい別荘だ。
写真でしか見たことないけど、南国の高級リゾ
ートホテルとかに出てきそう。
「皆様いらっしゃいませ。ようこそお越しくださいました。私管理人のバトラーと申します。本来でしたらホストとしてゲイル様がお迎えするところなのですが、申し訳ございません。間もなくこちらに到着されるとの事です。それまでごゆっくりお寛ぎください」
別荘に着くと早速出迎えてくれ、中を案内された。
「……すご……」
思わず呟いた。
中に入るなり、大きな窓から海が見えた。
ほぼ全面窓だ。
そして海側にプールがあった。テラス窓からプールサイドに直接繋がっている。
中は超高級ホテルのスイートってこんな感じ?的な豪華さだった。調度品といい、空間自体に高級感が溢れている。
「皆様、こちらにお飲み物をご用意させていただきました。どうぞ、お召し上がりくださいませ」
言われてソファーに座った。
超ふかふか!しかも何?この座り心地の良さ!
なんだか何もかもが高級すぎて、変な緊張感で全然寛げないデス……。
「あ、これ美味しい。ねぇバトラー、これってあれ?新しいバニライト?」
「さすがセリウス様です。よくお分かりですね。こちらは今年の春先に収穫されたばかりの茶葉です。まだ何処にも出回ってもおりません」
「ふふ、昨年父にねだって取り寄せてもらってさ。煎れてもらってたんだ。前より香りが強いね」
「ええ、昨年の物より今年は豊作でして……」
などと二人の話が弾んでいた。セリウスとバトラーはどうやら昔馴染みのようだ。
チラッとユリアを見た。
話したいけど、嬉しそうにルルカと仲良さげにバニライトとかいう紅茶を飲んでいて、なかなか話しかけ辛い。
…………場違い感が凄いんデスケド……いや、エリックはそんな事ないんだろうな……。
……悟ハ、コンナ高級宿、泊マッタ事、ナイ。
なんだかカタコトの異邦人になった気がする。早くライオネル来ないかな……。
仕方ないので黙ってバニライトを飲んだ。
「あ……」
これ、この匂い……ゲイルから香った匂いと似てる……すごくいい匂いだ……。
俄に表が騒がしくなった。
馬の嘶きが聞こえ、訪問を告げる声がした。
あ!ライオネルが来た?
バトラーが徐に退出し、新しい来訪者を迎えに行った。
何やら話し声が聞こえたかと思うとカチャリとドアが開き、バトラーとゲイルが入ってきた。
──ゲイルか……なんか……紅茶のいい匂いでゲイル思い出してたなんて、こっぱずかしくなってきた……
そう思った途端に、カァッと頬に熱がこもった。
──ぎぇっ!何で!?赤くなるなよ、俺!
パッと両手で頬をかくし、見られてないか確かめようとゲイルを見た。
バチッとゲイルと目があってしまった……。
一瞬驚いたように目が見開かれたが、すぐにニヤリと笑われた……。
……くうっ……きっとまた揶揄われるっ……!
「皆早かったな。昼は過ぎるかと思ってた」
挨拶代わりに片手をあげながら、部屋に入ってきた。
「ルルカ達が待ちきれなくてね。急かすから早く着いちゃったよ。お招きありがとう」
セリウスがスッと胸に手をあて、貴族の礼をした。
「ゲイル、お招きありがとう。さっき着いたばかりなのよ」
「お招きありがとうございます。とても素敵な所ね」
ユリアとルルカはカーテシーで挨拶した。
ゲイルがコクリと頷いた。
「……オ招キアリガトウゴザイマス。凄イ家ダネ……」
胸に手を当て、セリウスの真似をしようとしたら、何故か緊張して、カクンカクンとロボットみたいな挨拶になってしまった!?
「ぶはっ!何だそれ?頭でも打ったのか?」
ゲイルにまたもや笑われた。
カーッと顔が赤くなるのが分かった。
くそ!エリック!お前はシャイ過ぎなんだよ!
ムッと唇を引き結びプイッとそっぽを向いた。
ユリアちゃんも味覚、触覚、嗅覚を感じられるんだよ!超リアル~




