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闇を愛して  作者: 冴島月ノ助
すみれの花咲くころ
14/18

転入生歓迎会

「なぁ! どうだった?」

「……え?」

「だからぁ、俺の舞どうだったか聞いてんの!」


 水色の着物を翻して、目の前に神谷くんは胡座をかいた。

 神谷くんと私は二年のクラス替えで同じ夏之組になった。残念ながら四天王はみんなクラスがバラバラになってしまったみたい(実力を分けるために仕方ないと、紗和ちゃんは言っていたが)


「蓮ー。『俺達』の舞でしょ?」

「あー、はいはい」


 律儀に秋月くんが訂正する。それを聞いて、神谷くんは眉間にしわを寄せて肩を竦めた。


「ごめんね〜? 蓮がいちいちうるさくて」

「はぁ? もう何とか言えよ〜すみれ〜」

「いや、なんか感動しちゃって……言葉も出ないっていうか」


 突然目の前で繰り広げられる舞に、本当に声も出なかった。

 ただそこで、見ているだけで必死というか。

 先日練習風景を断片的には見たけれど、そんなの比にもならないくらい。


「本当にすごかった!」


 こんな月並みな表現しか持ち合わせない自分が恥ずかしい。それでもこれが今の私の精一杯の気持ち。


「ありがとう!」


 紗和ちゃんがみんなに声をかけてくれて。集まって開いてくれた歓迎会だと聞いた。

 

(だからってあんな四天王の舞見られちゃうとか豪華すぎる! やっぱりこの学園すごい!)


「まぁ、新歓の予行練習だけどな?」


 神谷くんはそう言ったけれど。


「そんな事言って、一番張り切って練習してたの蓮だからね」

「うるせぇ! お前らマジで」


 椎名くんにばらされて、神谷くんはくしゃりと笑って彼を小突いた。それを見てみんなが笑う。

 そんな様子を見ていたら、転入をあんなに悩んでいた自分が少し笑えてきた。そしてこの学校を選んで本当に良かったと思った。  


 その後も音楽クラスの三味線を聴きながら、忍軍団の殺陣を見たり、作法クラスの用意してくれたお茶菓子を食べたりして。なんて贅沢なんだろう。


「あれ? 橘さんは?」

「あー、誘ったんだけどね。こういうのあんまり顔出したりしないから」

「そうなんだ……」


(ここまで案内してくれたのは彼女なのに。参加はしてくれないんだ)


 少し残念な気持ちが心を霞める。


(せっかく仲良くなれるチャンスだと思ったのに)


 だけど今は。


「すみれちゃーん! こっちに和菓子あるよー」

「あ、食べる食べる~」


 みんなの気持ちに感謝して、歓迎会を楽しむ事にした。 



 ***



「転入生一人案内するだけなんて、そんな依頼いちいち受けてんじゃねーよ」

「いいじゃん。紗和可愛いし」

「お前な。その女には甘い癖直した方がいいぜ?」

「そんなことより! 次の依頼来てますよ?」


 明かりのついていない暗い部屋に、パソコンの光だけが灯っている。画面を覗き込む人影が三つ。


「これは……」


 届いたメールをクリックすると、その依頼内容を見て顔を歪めた。それを横から覗き込んだ一人が、口角を上げる。


「面白そうじゃん」

「『黒影』その依頼受けさせていただきます」

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