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闇を愛して  作者: 冴島月ノ助
すみれの花咲くころ
12/18

忍の者【それぞれの其の後】

「さっきのは、やりすぎ」

「は?」


 何の事を言っているのか分からないという表情で、涼は隼斗を見た。


(無意識が一番怖ぇよ)


 いつまでもワーワー騒ぐ村橋に嫌気がさした涼が、面倒臭くなって問答無用で黙らせたのだった。

 それが力技ならまだしも、何とも艶めかしいやり方だった事に、隼斗は文句の一つも言いたかったのだが。本人にその気はさらさらなかったようだ。


「まぁ、いいや」

「なんだよ?」

「とりあえずお見事」

「お、おう」


 納得のいかないはぐらされ方をしたが、隼斗が差し出した拳に涼も拳を合わせた。


「手裏剣の腕は相変わらずだな」


 隼斗の言葉に、涼は口角を上げて応えた。


「あー……椋、腹減った」

兵糧丸ひょうろうがんあるけど」

「お前もっと女らしいもん持ってろよ」

「そういう事は作法の乙女に頼め」

「俺アイツ等苦手。うるせーし」

「そう? いつも美味しいもんくれるし、みんな可愛いよ?」

「お前は女に甘ぇーんだよ」


 そう吐き捨てた瞬間どこからか黄色い声が上がり、隼斗は眉間にシワを寄せた。


「そんな怖い顔してると美味しいもん貰えないよ」


 歓声のした方を見ながら涼が言う。

 愛想はないが、そんな姿をクールと捉えた作法クラスの女子から、涼は何故か人気があるのだ。

 視線に気付いた作法女子の熱が上がり、隼斗は眉間のシワを一層濃くすると盛大に舌打ちをした。



 ***



「カズ? 大丈夫か? カズ!?」


 固まったまま動かなくなってしまった村橋を西園寺が揺らす。それでも反応がないまま、村橋は膝から崩れ落ちた。


「おい、しっかりしろ! まさか毒でも盛られたか?」


 西園寺が茶化すように聞いた。


「あぁ……そうか。それだ。毒だ。毒にやられた……」


 それを聞いた村橋がやっと納得したように呟く。


「え? マジ?」


 あまりに真剣な顔で再び黙り込んでしまった村橋を、西園寺は慌てて支えた。


「身体に痺れあるか? 手足とか!」

「心臓」

「え!? 心臓!?」

「破裂しそう……ヤバい」

「は!?」


 その日、村橋は最恐最悪な女に恋をした。



 ***



 三日後。


「気になるの?」

「あぁ……」


 迅は再び手裏剣の練習をしていたという的を見に来ていた。


「で、毎日通って何か分かった?」


 付き合いで――というより、勝手に付いて来ている大地が、相変わらず的から外れてばかりの手裏剣跡をつまらなそうに見ながら聞いた。


「なぁ、大地は的のどこに手裏剣投げる?」

「あ? 真ん中に決まってんじゃん」

「だよな」


 迅の見つめるその先には、的の一番外枠の僅か一ミリにたった一つ付けられた手裏剣傷。


「気ぃ済んだ? そろそろ戻らね?」

「あぁ」


(いや……まさかな)


 迅は頭に浮かんだ一つの仮定を掻き消した。

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