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ラブコメとは放課後のことである。

猫役か、妖精役か――

戦いの火蓋が、いま切られる!!


頑張れ畠中!!

加藤、まさかの告白!?


どうなってしまうんだ!!!


今回、ラブコメとは放課後のことである。

『じゃんけん……ぽんっ!!』


部内に響き渡る2人の興奮した声に、俺は固唾を飲む。


「おほほほ、ほらっ、言ったわよね、神に喧嘩を売るとはどういうことか!」


そう拳を突き上げ、勝利の雄叫びをあげる羽波さんを見つめる。


おいおい、神に愛されているのかと思えば羽波さん本人が神だったんだが。


膝から崩れ落ちた畠中が、救済の眼差しを御剣に向ける。


「はは、勝負ありだね。涼くんは、猫役お願いね。」


そう宣告する御剣に、畠中は舌打ちをする。


「あわわ……。これって僕も猫役ってことですかねぇ……。にゃんにゃん……。いややばいでしょこれ。」


半狂乱の加藤をよそに、魔王は勢いよく椅子に座り足を組み、顎をくいと突き出す。


「じゃあよろしくね。子猫ちゃんたち。ぷぷっ。」


「あぁ、悪夢だ……。俺が、俺が、猫役だなんて……。」


そのまま寝転び、天井を仰いで嘆く畠中に、俺は同情した。


「俺は、白雪姫だぞ。お互い頑張ろうな……。」


そう声をかけると、畠中は安心した顔で言った。


「良かった……。俺はまだマシだ。」



……ぶっとばすぞ。



手をひとつ鳴らし、御剣は言う


「じゃあ、配役も決まったことだし。台本を作っていこうか。」


「いいえ、台本はここにあるわよ。昨日ちゃんと作ってきたの。」


そう得意げに言い、みんなの前に台本を置いてまわる。


「昨日って、じゃあもう俺が猫役になるのは決まってたんだ。」


畠中はそう不機嫌に言った。


畠中……。出来レースってやつだな。


「あぁ……。昨日の時点で僕も猫役に入れられてたなんて……。悪魔だ、京子さんは悪魔だ!」


加藤。それは言ったらダメだぞ。



「加藤くん、絶対に振り向いたらダメだぞ。」


そう言いながら、俺は加藤の肩をつかみ身を寄せる。


後ろから魔王の覇気が、こちらに近づいて来る。


俺と加藤の肩をつかみグイッと振り向かせられる。


「ヒィッ」


そう怯えた声を出す加藤に、羽波さんは天使のような顔で、


「誰が悪魔ですって?加藤くん、あなた私に悪魔って言った?」


そう問い詰める。


「ひぃ、いや、言ってません。羽波さんは、素晴らしく綺麗な方です。はい、あ、天使!天使そうです。天使と、言い間違えました!ごめんなさい!」


百度のお辞儀をし、魔王の許しを乞う。


「あぁ、それならいいのよ、まさかほんとに悪魔……だなんて、言わないわよね?」


目が笑っていない。だが、凄く綺麗な微笑みを浮かべ、加藤を見る。


「はい!もちろんです!大好きです!京子さん!」




その一言に部内は静まり返った。



「え?まじ?」


そう声をあげたのは、下衆な笑みを浮かべる王子様--御剣響也であった。


「なに、龍之介くん。京子ちゃんのこと好きだったの?」


と問いかける御剣に、


「いや、まさか!そんなわけないじゃないですか!僕が言ったのは恋愛的に、じゃなくて人間として!尊敬してるって意味の大好きですよ。やめてください。」


加藤は焦ったように弁明する。


「そうよ、加藤くんがそういう意味で言ったわけじゃないって、ちゃんとわかってるから、私も悪ふざけがすぎたわね。ごめんなさい。」


羽波さんが謝ると、


「なーんだ、つまんないの。もっとさー、この部活、恋愛っ気が必要だと思わないかい?」


不満げな顔で机に肘をつき、頬杖をついた。



……イケメンは何しても絵になるなぁと見惚れていると、


「そんなのいらないわよ。響也くんがそれを見て、面白がりたいだけでしょう。」


羽波さんは髪を耳にかけながらピシャリと言い放つ。


「だってー、もっと面白がりたいんだもんーー。

ここには、クラスでも目立つような男達が集まってるのに、みんな恋愛のレの字もない。」


と王子は足をバタバタさせながら、不服そうに言った。


「でも僕、すごく好きなんです!この部活。先輩がいて、畠中さんがいて、御剣さんがいて、京子さんがいて。僕にとって、大切な居場所だってそう思ってます。」


おい、かわいいな加藤。俺も加藤のこと好きだぜ。



……あ、部活が好きって言ったのか。


「ずっと気になってたんだけどさ、なんで山田のこと先輩って呼ぶの?」


そう言ったのは畠中だった。


「ああそれ僕も気になってたんだよね。」


御剣ものってくる。




話すしかないのか……。この話を……。


「俺が橋の下で猫を拾ったんだよ、それで、クラスメイトに引き取ってくれる人がいないかって探してたら、加藤くんが引き取ってくれるってなって。

そこからだよね?」



--そうである。


猫を拾ったのは、この猫を拾ってそうなヤンキー加藤ではなく……俺だったのだ。


「捨て猫を拾うなんて!先輩がほんとにかっこよくって、俺も先輩みたいになりたいって、だから先輩って呼んでるんです。」


「へぇ、山田いいことするじゃん」


ゲームをしながら少し口の端を上げて畠中は言った。



……うるせぇよ。


「え、私猫を貰って欲しいなんて、言われてないんだけど!」


少し頬をふくらませながら羽波さんはそう言った。


「まぁ、その時はクラスも違ったし、俺たち接点なんてなかったでしょう?」


俺は宥めるように言う


「私だって、部内で話すまで山田くんのこと知らなかったけど、なんか少し羨ましいな、加藤くん。」


そうよく分からないことを呟いた。


窓から差した夕日が、羽波さんの青みがかった髪に触れて、いつもより羽波さんの顔が赤い気がした。



……その光景に、目を逸らせなかった。


下衆な笑みを浮かべ、俺と羽波さんを交互に見て御剣は、


「これだよこれぇ」


と喜びの声を上げた。



……何がだよ。




ほんとに、今日も散々だった。


羽波さんに振り回され、昔の話までさせられ、御剣に面白がられた。


平穏に生きるって、なかなか難しい。

そう思い、部室の点検をし、消灯をした。


廊下を歩きながら、すっかり暗くなった校舎の向こうに広がる街を眺める。



俺も、この部活にハマってしまったのかもしれない……。


「ねぇ、今からご飯行きましょー!」


羽波さんが叫ぶ


「俺はゲームしたいから帰りたい。」


その畠中の言葉は却下され、羽波さんに引きずられていく……。


……やっぱりこの部活めんどくせぇわ。


前を歩く4人の背中を見つめながら、そう思った。

青春ですねぇ

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