ラブコメとは強引なヒロインのことである。
俺は約束を果たすため、屋上へ来た!!
完璧美少女は、今日も意味がわからない。
俺のモブ人生はどうなるんだ!!
今回、ラブコメとは強引なヒロインのことである。
夏のうだるような熱気の中、だだっ広く青に染まった空を見上げる……。
「なんで、こんなことに。」
そんな嘆きは目の前にいる本人には届かない。
青みがかった鮮やかな髪が、さらりと風になびかれる。
端正な顔立ちが振り返り、こちらに微笑む。
……目が笑ってないぞ。
そうだ。
今俺は完璧美少女--羽波さんと一緒に昼食をとる約束を果たしにきた。
「屋上だったら誰も来ないでしょ?」
楽しそうに笑う羽波さんに、そもそもの疑問を投げかける。
「うちの学校は、屋上立ち入り禁止なはずだけど、なんで鍵持ってるの?」
「え?美少女特権かしら?」
おいおいまじかよ。この世界美少女に優しすぎんだろ。
「まじか……」
「ふふっ。嘘よ。ちゃんと先生に許可を貰ってるわよ。たまにこうやって屋上でお昼を食べてるの。」
あぁ、なるほど。
そんな理由で鍵を預けられるほど信頼されているのか、この完璧美少女は。
……いや、普通に美少女特権だろ。
日陰に腰掛け、俺はお弁当を開ける。
「まぁ、すごいかわいいお弁当ね。なんだか意外だわ。」
羽波さんが驚いた声をあげる。
そうだろう。
「妹が毎日作ってくれるんだ。今日はクマのキャラ弁だね。」
沙織の顔を浮かべながらそう答える。
「へぇ、妹さん。器用なのね、羨ましいわ。」
自慢の妹である。
俺がひとり満足していると、視線を遮る黒い物が現れ、思わず羽波さんの手元を見る。
「え?」
明らかに五人分はありそうな、デカすぎるお弁当があった。
「そんなに驚かないで。私、このくらい食べないとすぐにお腹が空いちゃうの。
恥ずかしいから、こうやって一人でよく食べてるの。」
キャラ渋滞しすぎだろ……
「大食いなんだ。そんなに食べられるなんて、すごいね。」
本当にすごい。思ったまま口に出していた。それにしても、どこにそんな量の食べ物が入るのかは疑問だ。
「幼い頃からよく食べるわね。山田くんは少食すぎるわよ。小さいお弁当もかわいいけど、これあげるから、もっと食べなさい。」
羽波さんはそう言って、唐揚げを2つ俺のお弁当に載せた。見慣れない大きさの唐揚げを、顎の心配をしながら齧る。
「ありがとう。この唐揚げすごく美味しいね。」
「そうでしょ。お弁当といえば唐揚げよね。でも、もうだめよ。これは私のだから。」
羽波さんは口をモゴモゴさせながらそう答える。
……誰も欲しいなんて言ってねぇよ。
「そうだ、今日はいつもとはまた方向性が違ったね。」
俺はポケットから、クシャクシャになった例の紙を取り出し広げる。
『畠中くんは、ゲームよりも好きなものがある。なーんだ?』
「あぁ、それね。なんだと思う?」
羽波さんがそう問いかける。
「なんだろう?畠中くんはゲームのイメージしかないや。」
「そうでしょ。それがね、この前商店街を歩いてたら、畠中くんの衝撃的な場面を目撃したの!!」
ほう、それは気になる。女装でもしていたのか?
あぁ、それは俺の未来だった。
「と、いうと?」
羽波さんは人差し指を立て、得意げな表情で続けた。
「猫よ。畠中くんは猫がとーっても好きみたいなの。」
こいつまじかよ。
「それは意外だね、たしかに。」
畠中くんは猫派だったのか。同志よ。
「そうでしょう!あんなにとろけた顔の畠中くんは見たことがないわよ。」
嬉しそうに話す羽波さんの横顔を見ながら、ペットボトルのコーヒーを飲む。
「それで、畠中くんには文化祭の白雪姫で猫役をしてもらおうと思うの!!」
あまりの飛躍に俺は口に含んだコーヒーを吹き出した。
やっぱこいつ頭イカれてんだろ。
……そう思い、見上げた空は青春そのものだった。
「ねぇ!山田くん!汚いよー。大丈夫?」
むせる俺の肩を揺さぶるこの完璧美少女を、誰か止めてくれ……。
屋上……憧れですよねぇ。




