ラブコメとは幕開けのことである。
期末試験を乗り越えいよいよ夏休み!!
夏合宿ってなんだよ!!
騒がしい仲間との夏休みが幕を開ける。
今回、ラブコメとは幕開けのことである。
は?
なんだこれ。
ペンをクルクルさせ、問題集を睨みつけ唸り声を上げる。
「なに、わからないの?どこ。」
羽波さんは俺の問題集を覗き込む。
「あぁ。そこはね、ここの公式を使って解くのよ。計算ミス気をつけてね。」
羽波さんは授業ノートを俺の前に置き、自分の勉強に戻る。
「ありがとう。助かったよ。」
羽波さんのノートを眺める。
本当にわかりやすくまとまっている。俺も同じ授業を受けているはずなんだが。
「先輩、僕やっぱ理系選んだのミスかもです!テストのたびにこんなに困るなんて……。
今回の期末試験は乗り越えられないかもです。」
向かいの加藤は頭を抱え、泣きそうな目で俺に訴えてくる。
「まあまあ龍之介くん。この期末試験が終わったら夏合宿だよ。
もうひと息頑張ろうか。分からないところがあったら言ってねぇ。」
御剣が宥めるように言う。
「夏合宿!すごく楽しみです。僕今回だけは絶対に赤点回避して見せます!」
加藤が立ち上がりガッツポーズをする。
……夏合宿?そんなのあるって聞いてないんだが。
「あのさ、俺この部入ったの冬だから夏合宿が何かわからないのだけど。」
誰に言うでもなく、俺はぼやいてみる。
「夏合宿はね、みんなで山のコテージに行って、
うん……そういえば何するのかしら。」
指を顎に当てて、羽波さんは首を傾げる。
「正直いつもとすることは変わらないねぇ。場所が変わるくらいかな。」
御剣は手元から目線を外さず、少し気まずそうにしている。
「そもそもなんで夏合宿なんて。わざわざ山なんかに行く必要あるの?虫多いし。」
ゲームをしながら畠中は無表情に言った。
「そんなの決まっているでしょう。面白そうだからよ。愚問だわ。」
羽波さんは相変わらずピシャリと言った。
……テスト期間くらいゲームやめなよ。
終業式が終わり、廊下に張り出された順位表を見に行く。
「僕今回赤点なかったです!よかったー。」
加藤が機嫌よく俺に近づいてくる。
「それはよかった。俺も今回は危なかったなー。」
ぼやきながら人の波に乗る。
廊下には上位百人の順位が貼り出されている。
俺はいつもギリギリだ。
「御剣さん今回も一位ですよ!羽波さんもいつも通りですねぇ。」
そう感心した声を出す加藤を横目に、順位表の端の方に目を走らせる。
お。百位ぴったりだ。今回は無理かと思ったぞ。
これで良い夢が見られる。
俺は満足し、部室に向かう。
扉を開けると畠中がすでに到着していた。
「早いね、畠中くん。みんなまだ順位表見てるんじゃないかな。」
声をかけると、
「順位とか俺は別に。人多くなる前に来ただけ。」
ゲームをしながら無愛想に言う。
俺は手持ち無沙汰になり、今日配られた範囲表を見て夏休みの課題を進める。
「お疲れ様でーす!あれ、先輩と畠中さんだけっすか。」
加藤が勢いよく入ってくる。
そういえば羽波さんと御剣がまだ来ていない。
「あの二人。遅いね、何かあったのかな。」
そう言うと、
「あの二人。長期休みの前になるといろんな人に呼び出されるから。
今日は間に合わないんじゃない。」
畠中が立ち上がり、帰る準備をする。
……モテる人も大変なんだな。
「俺たちも帰ろうか。」
加藤に声をかける。
一足先に教室を出る畠中に
「夏合宿、遅刻厳禁ですからね!」
加藤は畠中の背中にそう叫んだ。
あまりの大声に、思わず吹き出してしまう。
「あ!先輩、何笑ってるんですか〜。」
金髪メッシュをふわふわさせながら拗ねた顔を作る加藤に
「ごめんごめん。合宿の買い出しまだだったら、この後どう?」
そう尋ねると、
「そんなの、もちろん行きます!」
明るく笑い、俺の手を取り走り出した。
廊下から見た空は、青く青く澄んでいた。
全く。騒がしい夏休みになりそうだ……。
「ちょっと加藤くん!俺のカバン部室ーー!」
仲良しですねぇ。




