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魔女の末裔、怪盗となり月夜に舞う  作者: ぽよみ30号
許すまじ偽怪盗

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耐電性能

日曜日の夕方。


玲香と明智の二人はグラン・ジェム・ミュージアムに一般客として入った。

今夜、偽怪盗と戦うための下見をするためだ。


玲香は明智が運転する車の中でここまで来た。

このミュージアムはかなり山奥にあり、二人は途中で大きな橋を渡った。


「……探偵さん。なんで偽怪盗が出るのが『今夜』だってわかるんですか?」


玲香の質問に対して明智は「断っておくが、確実に今夜現れると考えているわけじゃないぞ」と言ってから説明を始めた。


月輪教がちりんきょうだよ」


「はい?え?がちりん、きょう……?」


それは、玲香にとっては聞き慣れない名前であった。唯一聞いたことがあるのは──


「──月輪饅頭って美味しいですよね。あの『月輪教』ですか?」


「ああ、あれも同じ組織だ」


明智はそう答え、続けた。


「私はその組織について長年調べていてね。奴らがいま建設している『塔』について、先日テレビの取材が入ったんだ」


「……え?それが、なんの関係が?」


玲香はなぜ明智が急に宗教団体と、その団体が造っている塔の話をし始めたのかわからなかった。


「あの塔は200メートル以上ある。かつ建てられたのは山間部だから、実質的な標高で考えると首都にある電波塔より遥かに高い」


明智は「ほら、ここの窓からだって見えるぞ?」と指差した。


玲香が窓を見ると、確かに山景の隙間に一本の白い塔があるのが見えた。


「目立つだろう?だからメディアも取材に来る」


「……は、はぁ」


玲香はここまで聞いてもまだ分からない。


「しかしどうだ。あんなに目立つ塔が建てられたにも関わらず、『怪盗Witch Phantom殺人を犯す!』というニュースと被れば、あの塔には誰も見向きもしない」


「えーと、つまり……その、『月輪教』って宗教が、塔を目立たせなくさせるために偽怪盗を出した……ってことですか?」


「ああ。犯行現場も塔が建設されている月輪教の本部に近い。だから地方紙の記事さえも塔はほとんど無視して、偽怪盗一色だ」


「うーん……」


玲香は納得できなかった。

論理が飛躍し、こじつけのように思えてしまう。

その宗教と偽Witch Phantomに関係があるとはあまり思えなかった。


「実際、君は知っていたか?我々が暮らす地域から決して遠くない場所に、あんな塔を建てられていたことを」


「うっ……」


玲香は言葉に詰まった。

確かに、自分が塔のことを知らなかったことは明智の推理を裏付けているように思われる。


「今日、あの塔は完成するのだ。しかし、またあの偽怪盗が現れれば塔の完成ニュースはほとんど報道されず、奴らは目立たずに終わるだろう」


「……ん?」


玲香はここで、一つの疑問が浮かんだ。


「なんで目立ちたくないんですか?月輪教って私はよく知りませんけど……あの塔もアピールして、たくさん目立って信者の人を集めた方がいいんじゃ……」


玲香の疑問はもっともなものであり、明智は「その通りだ」と答えた。


「だから、不気味なのだよ。シンボルタワーなのだから目立ちたいはずなのに、偽怪盗を使って報道から身を隠す……」


明智は「ふぅ」とため息をつき、怪盗が今夜狙いそうかと思われる白い宝石を見つめた。


「あの塔で何をしようとしているのか?それを、今夜捕らえた偽怪盗から聞き出してやろうと私は考えている」



─────────────────



二人はトイレの中に隠れ、閉館後の警備員の巡回をやり過ごした。


偽怪盗が現れるのは、これまでの法則から考えるならば深夜0時。


二人は多目的トイレの中に隠れ、最後の作戦会議をしていた。


「……あれ?何か、いま遠くで大きな音が聞こえませんでしたか?何かが崩れるような……」


「ん?私は聞こえなかったが……」


「そっか、私の空耳かなぁ?」


玲香は不思議そうな顔をしていたが、明智は話し始めた。


「時間まで、互いの武器や準備物を再確認しよう」


「はい」


明智の言葉に玲香は頷き、カバンの中から一本の棒を取り出した。


「これが私の持ってきた武器で、えっと、ここを押すと棒に電気が流れるスタンガンです」


「ほう、かなり実践的な武器だな」


玲香が明智に見せたのは、50センチほどの長さの棒形のスタンガンだった。


「電圧は?」


「クマでも気絶する威力のはずなんですが、授業中に寝てる友達を起こすのに使っても『もう、痛いなぁ』って言われて終わりなんですよね」


当然こんなものを女子高生が所持しているのは犯罪。


しかし望が丘高校の2年A組では、担任教師の柊から「中村水を起こすときのみ使用可」と許可が降りている。


中村水という規格外の生徒に対し、なんと2年A組ではスタンガンの使用が許可されているのだ。


「いや恐ろしい高校だな」


明智は信じられなかったが、彼女が嘘をついている様子はない。


「……それは、その道具が弱いのか?その友人が強いのか?」


「多分、私の友達が特別なんだと思います。ほぼ毎日使ってるからか、効かなくなっちゃったのかも……あ、でも初めて受ける人にはすごい威力だと思います!」


「なるほど……電気、か……」


明智は目を瞑り、少しのあいだ物思いに耽ったような顔をした。


「どうしたんですか?」


「いや……この前Witch Phantomと戦ったときに電流が流れる罠を仕掛けておいたのだよ」


「え!?Witch Phantom様に電気を!?酷い!!」


「ああ、だが効かなかったんだ。『いったいなぁ!!!もうっ!!!』とか言って、簡単に突破されたよ」


「えっ!?さすがWitch Phantom様!!電流なんか効かないんですね!?」


「いや、『痛い』と言っていた以上効いてはいる。だからおそらく日常的に高圧電流に晒されているか何かで、強い耐性がついているのだろう」


「えっ……!?」


玲香は明智の言葉で青ざめた。


「そ、そんな!Witch Phantom様が普段から電流を浴びているなんて……!酷い!」


玲香は心から彼女を憐れみ、怒った。

誰がそんなことをしているのか。


「私、許せません!」


絶対に許せない。

もしそんな奴を見つけたらそのスタンガンを食らわせてやる。


玲香は強くそう誓った。



──パリンッ!!


「「っ!!」」


二人は、近くで窓が割れる音を聞いた。


グラン・ジェム・ミュージアムに何者かが侵入してきたようだ。


「……おでましのようだな。準備はいいか?レイカ姫」


二人がそうこうしているうちに、時間は0時前になっていたのだ。


「あ、私は実は着替えようと思ってて……探偵さん、お先に行っててください!」


「……?ああ、わかった」


明智は玲香の言動を不審に思ったが、先に扉を開けて宝石の元へと急いだ。



☽ あとがき ☾


今回、玲香には「Witch Phantom様に日常的に電流を流している犯人を捕まえる」という新たな目標が定まりました。


しかし、彼女はその目標を永遠に達成できずに終わることになります。


「灯台下暗し」というわけですね。

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